#69 女の子にホメられるのが苦手なケンピ
10時半を過ぎると母さんが「フミコちゃん、今日はドリア作るから手伝ってくれる?」とワラシを呼びに来た。
「いぇす、マァム」
母さんは、もう完全にワラシを我が家の嫁扱いしてて、ワラシもそれを受け入れ、今では素のままで接している。
母さんは本当は娘が欲しかったんだろうな。それなのに男が二人産まれちゃったから、ワラシを娘の様に扱いたくなるのも仕方が無いだろう。
ワラシが手伝うために部屋を出て行き、石垣は相変わらず一人でゲーム。俺とバッキーがエロトークに花を咲かせていると、八田さんと花岡さんも俺たちの所にすり寄って来て、4人でお喋りを始めた。
「ずっと不思議だったんだけど、花岡さんって凄くモテるのに彼氏居ないよね? 作らないの?」
「うーん、そうだね。欲しいとは思うんだけどね、周りの男子って下心が透けて見えるっていうか、なんか子供っぽくてヤなんだよね」
俺がチラリと石垣へ視線を向けると、花岡さんもチラリと石垣へ視線を向けて、くすくすと笑っていた。
「わかる!私も言い寄って来るの変な人ばっかりなの!チャラチャラしてたりグイグイ馴れ馴れしかったり」
「八田さんのは酷かったね、サッカー部の自称俺レベル先輩。 一人じゃ告白出来ないからってサッカー部の人たち引き連れて全くトキめかない告白してたんだよ。 それで八田さんが光の速さでお断りしたら逆ギレして、どこまでも格好悪い人だったね」
「その時にケンピくんが助けてくれたんだよ~、フミコちゃんがケンピくんのこと「心がイケメン」って言うのが身に沁みたね~」
「うそ!ケンピくんが助けてくれたの? リアル白馬の王子様じゃん! 私そういうの大好物!ケンピくん、私の時も助けに来てヨ!」
「いやいや、俺みたいなブサイクが白馬の王子様って超ウケルんですけど」
「確かにケンピくんは白馬の王子様系男子だね。私もケンピくんに沢山助けて貰ってるし」
「いや、バッキーは因縁浅からぬ間柄だったし、その反動で良い人に見えてるだけだろ。俺はバッキーには特別なこと何もしてないぞ? あ、バッキーっていうあだ名の名付け親ではあるな」
「もう、そういうところだよ! ケンピくんって他の男子だと中々出来ないようなことを当たり前の様にやったり言ってくれたりするんだよね。だからフミコちゃんがケンピくんのこと「心がイケメン」って言うんだよ」
「なるほどね~、だからシズカちゃんも千葉さんもケンピくんにいつもべったりなんだね。ケンピくんって、実はウチの学校の裏で一番モテる男子だったりするもんね」
「ちょっと待て、なんだその裏で一番モテる男子って、自分で言ったりしたらすげぇ頭悪そうだぞ。ブサイク自覚しすぎてる俺は絶対自分じゃ言わないけど」
「あーこの間、体育大会の後の部活でケンピくんのことが話題になったの。バレー部女子でね。 それで私が「ケンピくんって男らしいし、走ってる姿カッコいいし、何気に良いよね」って言ったら、シズカちゃんや千葉さんの名前が出て来て、実はケンピくん狙ってる女子って何人も居て、しかもみんな可愛い子ばかりだよねって話になって、それで「ケンピくんって彼女居るよ。本人はあまり言いふらさないで欲しいみたいだから相手の子のことは言えないけど」って言ったら、やっぱりモテるじゃん!彼女居るのに可愛い子はべらせて、ハーレムじゃん!って。それで女子バレー部の中では、ケンピくんはウチの学校で実は一番モテてて、でも目立たない様してるから、裏で一番モテる男子ってことになったの」
「説明なげーな」
「わ、私は別にケンピくんのこと狙ってる訳じゃないからね!一緒に居ると気楽だし?楽しいし?他の男子には興味無いし?」
「シズカちゃん、それ、ケンピくんと一緒に居たい、ケンピくんの傍に居たい、ケンピくんのこと大好きって言ってるのと同じだからね?」
「バッキー止めるんだ。こういう時の八田さんはポンコツだから、可笑しなこと言い出してワラシの逆鱗に触れてしまうぞ」
その時、ノックも無く扉がガラッと開いた。
「呼ばれた気がした」
サチコを彷彿とさせる様なワラシの登場だ。
「シズカちゃん、今度私のケンピくんに手を出したら電気アンマ喰らわせるから。バッキーと花岡さんもだからね」
ワラシはそう言い残すと、扉を閉めて再び母さんの手伝いに戻った。
ワラシが居なくなると「ケンピくんとは友達ポジションが一番良いんだよ。 フミコちゃんのガードが鉄壁過ぎるから、手を出そうとか考えない方がいいよ」とバッキーが腹グロらしいアドバイスを花岡さんに耳打ちしていた。
そして八田さんは、お口チャックのジェスチャーをして、大人しく黙っていた。
やはり、ワラシの逆鱗に触れることを恐れている様だ。
「そもそも、なんで俺の話になってるんだよ。花岡さんに彼氏が居ないって話だったろ」
「だから、まともな男子が周りに居なくて、まともなのはケンピくんだけじゃん!って話でしょ?」
ワラシに言われるのなら平気だが、他の女子、特に花岡さんの様に最近仲良くなったばかりの子に、こうもホメられたり恰好良いだの男らしいだのモテるだの白馬の王子様だの言われると、どんな顔してどんな反応すれば分からなくなるので、正直マジで止めて欲しい。
まぁ、こういう時に爽やかに流せないところが、根っからのブサイク根性なんだろうけど。
「もうマジで止めて。 ブサイクホメてもブサイクなのは変わらないし」
「っていうか、4人でグループチャット作ってるんでしょ? 私も入れてよ!」
流石美少女ナンバーワンの花岡さん、すげぇな。
普通、グループって誘われるまで待つ物だと思ってたけど、花岡さんくらいの美少女で人気者だと、平気で自分からグイグイ行けちゃうんだな。しかも清々しいくらいどストレートに来るし、入りたいって言われると逆にちょっと嬉しいくらいだ。
だが、俺一人の意見で決めるわけにもいかない。
「いいよいいよ~!早速招待するね!」
八田さん、みんなの了承得ずに一人で勝手に招待しちゃってる。
まぁいいか。俺も別に反対する気は無いし。
「八田さん、俺は全然OKだけど、一応ワラシにも言った方がいいぞ」
「シズカちゃんはこのグループのリーダーみたいなものだからね。別に大丈夫じゃない?」
「バッキーがそういうなら大丈夫かな」
「因みにそのリーダーってどういう基準で決まってるの?」
妙なところに花岡さんが喰いついた。
「見た目だけは優等生っぽいところ?」
「ムッツリスケベなのに初心なフリしてるところ?」
「あと我儘だし」
「声大きくて煩いし」
「おっぱいの話題になるとすぐいじけるし」
「そのクセ、お姉さんぶったりするし」
「二人とも容赦ない!」
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