#70 ハグして貰えないなら自分からハグすれば良いんだよ!

 長い事更新休んでて、ごめんなさい!

 続ける気持ちはあるんだかんね!

 _______________



 その後も4人でワイワイお喋りしていると、鈴木くんから連絡が入った。



「鈴木くんが待ち合わせの公園に着いたらしいから、俺迎えに行って来るわ。みんな留守番しててね」


 そう言って立ち上がり、石垣には「お前も行くぞ」と部屋から連れ出した。


 台所のワラシにも「鈴木くん、迎えに行って来るわ」と一言伝えて、石垣と二人で外へ。



 で、早速石垣をたしなめる。


「あれだけ八田さんを怒らすなって言ってたのに、なんで怒らせるんだよ」


「テレてるんじゃないの?」


「だからなんでそうなるんだよ。滅茶苦茶怒ってたぞ。俺でもあんなに怒った八田さん見たこと無いし」


 歩きながらお説教していると、待ち合わせの公園に到着し鈴木くんも合流した。


 鈴木くんは部活が終わって直接来たというのに、コンビニで買ったと思われるアイスが沢山入った袋を手に持っていた。


「石垣、こういう所だぞ? お前今日手ぶらだろ? 鈴木くん見てみろよ。ちゃんと差し入れ用意してるだろ? お前手ぶらだったくせに一人でバクバク食べるからみんな怒ってたんだぞ?」


「マジか。じゃあ俺もアイス買って来る」


「いや、お前までアイス買ったら鈴木くんと被ってて折角の鈴木くんの気遣いが台無しになるから止めとけって」


「じゃあ何ならいいんだよ」


「飲み物だったらすぐ無くなるし、炭酸好きな子多いから、コーラのペットボトルとかがいいんじゃね?」


「おっけ、買って来る」


「鈴木くん、疲れてるトコ悪いけど、少しだけコンビニ寄るね」


「おっけおっけ、大丈夫」




 家に戻ると丁度お昼ご飯の準備が出来たところで、鈴木くんの差し入れアイスを冷凍庫に押し込み、石垣のコーラも冷蔵庫に入れてから、みんなで食事をすることに。



 鈴木くんが来たので全部で7人となり、流石に食事するには俺の部屋は狭いので、1階で食べることにした。


 それでも、7人で使える様な大きなテーブルなど無いので、男子3人は台所の食卓で、女子4人はリビングのローテーブルに別れる事にした。

 因みに、弟のシュージと母さんは男子3人と一緒に台所の食卓だ。



 キッチン組とリビング組と少し離れながらも、みんなで声を合わせて「頂きます!」をしてから食事を開始。



「全部で9人分のドリア作ったの?凄い手間だったんじゃない?」


「オーブンで焼くのは順番になるから時間掛ったけど、手間はあんまり掛かってないよ。 それに今回はフミコちゃんにほとんど任せちゃったし」


「なるほど」


 休みの日なのに色々やらせてしまっている母さんに申し訳無いなと思い聞いてみたのだが、ワラシが頑張ってくれていたようだ。

 今では、母さんの中でのワラシ株は超安定銘柄と言っても良いだろう。


 俺がワラシの作ったドリアをしみじみと味わっている間、石垣と鈴木くんはゲームの話題で盛り上がってて、後で対戦しようと言っている。


 とりあえず、鈴木くんには悪いが、石垣の相手をしてくれそうなので、少し気が楽になった。


 女子の方はリビングでキャッキャ楽しそうにお喋りしながら食べている様で、俺たちが食べ終わってもまだ時間が掛かりそうだったから「先に2階に上がってるね」と伝えて、男子3人は俺の部屋に戻った。



 石垣と鈴木くんが格闘ゲームを始めたので、俺はテーブルなどのみんなが使ったグラスやゴミなんかを片づけて、キッチンに行って新しいグラスを準備したりしていた。


 女子グループは相変わらず女子トークに盛り上がっていたが、いち早く食べ終えたワラシが「私も手伝う」と俺の所にやってきた。



「お昼の準備とかいっぱい働いてくれたから、ワラシはみんなの所でゆっくりしててよ」


「でもケンピくんの傍のがいい」


 可愛い奴め。


 ワラシの言葉にキュンとした俺は、いつもと同じ自然な動作でワラシを優しく抱きしめた。

 そしてワラシもいつもと同じように俺の腕の中で、俺の胸にそっと顔をくっ付けて応える。


「じゃあ、部屋にグラス運ぶから、ワラシはジュースを持ってきてくれるか」


「うん、わかった」ぐふふ



「あー!二人で隠れて抱き合ってる!」


 八田さんに目ざとく見つかり、騒ぎ出した。


「ちょっとシズカちゃん!今日はみんなでお邪魔しちゃってるんだから、こういう時は気付いても見ないふりするの!邪魔しちゃダメ!」


 そんな八田さんを、バッキーがたしなめる。


「いいなぁ~!いいなぁ~!」


「チッ」


 先ほどは、ワラシにビビって口をつぐんでいたクセに、いざ俺とワラシがイチャイチャしている現場を見てしまうと、ブーブー言い出す八田さん。それに舌打ちするワラシと八田さんを窘めるバッキー。


 ここまではよくあるいつも通りの俺たちの日常のやり取りだ。


 だがこの日はもう一人居た。

 恐らく今この場に居る中でもっともフリーダムな女が。



「ハグして貰えないなら自分からハグすれば良いんだよ!」


 まるで名案でも思い付いたかのように声を上げた花岡さんはダッシュで俺たちの方へ駆け寄ると、そのまま突撃するように俺とワラシに抱き着いた。

 バレー部エースで長身の花岡さんの迫力に俺もワラシも圧倒されてしまい、初動が遅れた。


「グヘヘヘヘェ」


 目を細め口元を緩ませてヨダレを垂らしながら満面のイヤらしい笑みの花岡さんのダラシナイ顔で、俺はようやく正気を取り戻した。


「オイ離れろ花岡ミク!ワラシは渡さんぞ!」


 俺の怒りの叫びにワラシも正気を取り戻して、片手は俺に抱き着きながら無言でもう片方の手で花岡さんを押しているが、ビクともしない。


「ハァハァ、ケンピくんの男らしいにおひが・・・」


「コラ!ヨダレが垂れてる!あっち行け!」


 美少女の花岡さんのヨダレを俺が本気で嫌がると、花岡さんは一瞬だけ素の顔に戻ったと思ったら、俺に抱き着いたまま顔だけ動かした。


「うわ!コイツ、俺のTシャツでヨダレ拭きやがったぞぉぉぉぉ!」


 悲鳴のような俺の叫びを聞いたバッキーがなんとか花岡さんを羽交い絞めにして引き剥がしてくれて、二人はもつれる様に床に倒れこんだ。


 ソコにワラシが素早い動きで花岡さんの両足を掴み、無言で自分の右足を花岡さんの股間にダダダダダっと押し当て電気アンマを始めた。


 なんとか解放された俺は、バッキーに羽交い絞めにされワラシの電気アンマからガードすることも逃げることも出来ずに「ぬお♡」とか「刺激が♡」と変な声を漏らしている花岡さんの様子を眺めながら、花岡さんのヨダレで濡れたTシャツの肩の匂いを嗅いでみた。



 花岡さんのヨダレは、さっき食べたドリアの匂いがした。

 美少女だからって、ヨダレは良い匂いがするわけじゃないんだな。

 ワラシとキスしてても、コーラの匂いとかするもんな。


 そんなことを感慨深く考えていると、花岡さんの暴挙に乗り遅れて空気と化していた八田さんが、背後から俺にそっと抱き着いてきた。


「八田さん、どさくさに紛れてナニしてんの?」


「・・・・・ちょっとだけだから」


「よし、ワラシに即報告! ワラシ~!八田さんが抱き着いてきて困ってるんですけどぉ~!」


 俺の報告を聞いたワラシとバッキーは花岡さんを解放するとすぐさま八田さんへターゲットを移し、先ほどの花岡さんと同じようにバッキーが八田さんを後ろから羽交い絞めにしてワラシが両足を持って電気アンマを始めた。


 八田さんへの電気アンマは、八田さんがマジ泣きするまで続けられ、八田さんが解放されるころには俺以外の女子4人ともゼェハァゼェハァと汗びっしょりで激しく呼吸を繰り返していた。



 花岡さんのせいでよく分からない女子のノリの大騒ぎしていたが、印象的だったのは、終始無言で電気アンマを続ける無表情のワラシ。電気アンマされてちょっと嬉しそうな顔して感じてた疑惑の花岡さん。相変わらず泣き顔がブサイクだった八田さん。そして落ち着いてから「私だけハグ出来なかったじゃん!やったモン勝ちかよ!」と普段よりも荒い口調で悔しさを滲ませて叫ぶバッキーだった。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る