#66 体育大会③




 発情してしまったワラシだったが、選抜リレーの予選まであまり時間が無いので、八田さんを呼んでワラシをトイレに連れて行っておっぱいぶよんぶよん対策のテーピングをするようにお願いした。


 10分ほどで戻って来ると、ワラシの興奮も大分収まっている様だったので、花岡さんと鈴木くんを呼んで4人で柔軟を始める。


 柔軟を終えると、花岡さんがクラスのみんなに向かって「行ってくるね~!みんな応援よろしくね!」と声を掛け、クラスのみんなからは「頑張って!」と声援で送り出された。



 先ほどのハードル走の時と同じ集合場所へ行くと、クラス対抗選抜リレーに出場する選手が大勢集まっていた。 ひとクラス4人だから、ハードル走の時より4倍多い。


 俺たち4人は緊張した面持ちで無言で待っていると、実行委員が競技の説明を始める。


 それが終わると、第一走者と第三走者、第二走者と第四走者に別れ、学年別に並ぶように指示が出る。



 花岡さんが「円陣組もう!」と呼びかけたので4人で肩を組んで円陣を作る。



「花岡さん、何か言って」


「うーん・・・・勝って祝勝会やろー!」


「おー!」







 予選の結果は、2年では1位。


 花岡さんの素晴らしいスタートと、みんなの危なげないバトン渡しで余裕の1位だった。

 逆に他のクラスは、バトンでモタつくクラスがほとんどで、却って6組のスムーズなレース運びが際立っていた様に思う。




 選抜リレーの予選が午前最後の種目だったので、終わるとそのままお昼休憩に。

 この日は給食はお休みで、各自お弁当。


 イスは運動場に出しっぱなしで、食事は教室の中でなら席とか自由に食べてよいとなったので、ワラシと八田さんの3人で集まって床に座って食べる。 因みに、弁当だとバッキーがぼっち飯か心配だったので後で聞いたら、実行委員は別の教室に集まって午前の結果の確認とかの打ち合わせしながら食べてたそうで、それ聞いて一安心。



「八田さん、障害物競走あるけど調子どう?」


「ばっちりだよ! ケンピくんのハードル走見て、私も1位になるイメージが頭に出来上がってる」


「へー」


「シズカちゃん今日はフル勃起で行ってね」


「おっけー!」


 若干不安を感じたけど、気合は充分の様だ。






 で、障害物競走が終わり出場選手が退場するのを俺とワラシは退場門で待つ。


 なんでクラスの応援席で待たずに態々退場門まで迎えに来たかと言うと、八田さんがから。


 退場してきた八田さんは、上半身白い粉塗れでエグエグ泣いていた。

 特に顔と髪の毛が酷い。コントみたいに真っ白。

 全校生徒の前で、美少女台無し。



 障害物競走の最後にあった白い粉の入った四角いトレーから手を使わずに飴を探すヤツで、八田さんは白い粉に顔を沈めながら口から「ぶーっ!」て息を思いっきり吹いたらしくて、大量の白い粉巻き上げて粉塗れに。

 見ていた全校生徒たちの爆笑を誘った優等生で美少女で人気者の八田さん。ポンコツ過ぎる。



「大丈夫か?八田さん」


「ううう、あ、飴が、飴が、見つからないの、ひっく。粉、邪魔だったから、吹き飛ばそうとしたら、ううう」うわぁーん


 心配して声掛けたら、人目も憚らずに更に大泣き。

 バカだなコイツって思ったけど流石に言える空気じゃなかったから、とりあえず持ってきてたタオルで俺とワラシの二人掛かりで頭や顔の粉を拭き取ってあげる。


 多少マシになったので水場まで連れて行って、着ていた長袖の体操服を脱がせて顔を洗わせた。 顔は綺麗になったので、俺が着ていた長袖の体操服を脱いで「俺のが綺麗だから代わりに着る?」と渡すと「ありがと」と言いながら着てくれて、ようやく落ち着いてくれた。


 クラスの応援席に戻る為に3人でトボトボ歩いていると、「シズカちゃんはフル勃起するタイミングがおかしい」と、ワラシが慰めっぽい口調で容赦ないツッコミを入れていた。


 クラスに戻っても八田さんのテンションがダダ下がりのままなので、後ろの方の俺とワラシの席の所にイスを持ってきてあげて、選抜リレーの決勝まで3人で大人しく待つことにした。








 選抜リレー決勝の時間が近づいたので、予選の時と同じように花岡さんと鈴木くんに声を掛けて4人で柔軟を始める。


 充分に体が解れると、花岡さんが「シズカちゃんの分も頑張って来るからね!」と八田さんに声を掛ける。 俺たち3人も「応援よろしく!」と八田さんを元気づけるように声を掛けてから集合場所に向かった。



 集合場所で整列する前に、予選の時と同じように4人で肩を組んで円陣に。


「今度はケンピくんから何かお願い」


「予選と同じようにすれば必ず勝てるからね」


「おー!」


「よし!八田さんの仇取るぞ!」


「おおー!!!」





 トラックに入場すると、第一第三走者のグループと第二第四走者のグループが別れる。


 トラックは1周200メートルで、一人100メートル走り4人で2周400メートルをリレーする。

 全競技最後の種目で、全校生徒が注目するメインイベントだ。



 第一走者と第二走者がそれぞれコースの位置に着く。


 位置についた鈴木くんが「ケンピ!絶対1番でバトン回すから、思いっきり行ってくれ!」と声を掛けてくれたので「鈴木くんも頼むぞ」と応える。



 そんなやりとりをしていると、スターターの先生の「位置について、用意」という声が聞こえたので、第一走者の花岡さんに視線を向ける。


 パァン!



 花岡さんは相変わらず素晴らしいスタート。

 本気で走る美少女の花岡さんは、女の子なのに恰好いい。


 ぎりぎり競り合いながらも1番で鈴木くんにバトンを渡す。

 1番のままバトンを受け取り走る鈴木くんに「行けー!」と叫ぶように応援。


 すぐさま第四走者も位置に着く様に指示があったのでコースに移動してから、第三走者のワラシに視線を向けると、鈴木くんからのバトンを受けようとして一瞬空振り。


 ほんの一瞬だけど、「あ!」って思ったら一人抜かれて2番に。


 それでもワラシは普段絶対見せない様な必死の形相で走る。


 2番を維持したままストレートに入ったワラシに向かって「ワラシ!来い!」と叫ぶ。


 今度は練習通りにワラシからのバトンをスムーズに受け取り、そこからフルターボの全力ダッシュ。



 このまま2位で終わったら、ワラシと鈴木くんは責任を感じてしまう。

 祝勝会が残念会になる。

 八田さんの仇も取れない。


 そんなことを考えながら、死ぬ気で走る。


 コーナーの終わりには前を走る3年生に追いつき、ストレートに入ると同時に抜き去る。


 そこから更に加速。

 正面から全身に空気の抵抗を感じるが、抗う様に声を出さずに心の中で「うおぉぉぉぉ!」と吠えながら走り抜けてゴール。



 減速しながら振り向くと、アナウンスで「1位は2年6組です!」と聞こた。



 がに股ガッツポーズで「よっしゃぁぁぁぁぁ!!!」と全身でブサイクな雄たけびを上げると、ワラシがスタタタタと駆け寄って来たので、持っていたバトンを真上に放り投げてから「けんぴく~ん!」と涙目でダイブしてきたワラシを正面からガッチリ抱き上げて「勝ったぞー!」と叫び、ジャイアントスイングみたいにワラシをグルグル振り回した。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る