#41 女の子のお買い物



 お昼までワラシの部屋で雑談しながら宿題を進めて、お昼になると俺だけ一旦家に帰り昼ご飯を食べてから、自転車で再びワラシの家に戻った。

 八田さんは、ワラシの家でご馳走になっていた。


 ワラシは、八田さんがコーディネートしたらしく、オシャレして髪型も変えていた。 頭の上にお団子のヤツ。 八田さんが言うには「髪がもう少し長かったらもっと綺麗に出来たけど、無理矢理お団子にしてみた」と。


 背の小さいワラシに似合ってて、可愛かった。ゆるキャンのしまりんみたい。

 服装は緩めのワンピースで、八田さんと違ってスカートの丈は長め。

 いつもよりも少し大人っぽく感じる。



「八田さんがコーディネートしたの?」


「そうだよー、可愛いでしょ?」


「うん可愛い。服も髪型もいつもと違って、なんか大人っぽいね」


「でしょー? ケンピくんも気に入ってくれたみたいだね。良かったねフミコちゃん」


 モジモジと照れてるワラシ。

 いつもなら照れてる時の癖で自分の髪をいじるが、今は髪がお団子になってていじれない為か、俺の着てるシャツの端を掴んでモジモジ照れてる。



「ワラシ、可愛くして貰えてよかったな」


「うん、シズカちゃんのこと侮ってた」


「侮ってたって、私の事どんな風に思ってたの!? 私、今までフミコちゃんに結構尽くしてるよね!」


「ぐふふふ」


「クラス委員で優等生の八田さんを侮るとか、ワラシも中々侮りがたいな」


「ケンピくんだけだ、私の心の友は」


「シズカちゃんがジャイアニズムに侵食されつつある。実は中身ジャイ子?」





 お喋りが止まらずいい加減キリが無いので、出発。



 ワラシの家からショッピングモールまで自転車だと、俺一人なら15分もかからないけど、女の子と一緒だしお喋りしながらだから30分近くかかる。


 真夏で日差しも強い昼間だったから、着いた時には3人とも汗だく。

 とりあえず涼もうってことで、ファーストフードに入って冷たいシェイク飲みながら休憩。


 ショッピングモールは流石夏休みで、平日の昼間でも中高生とかがいっぱい居て、どこも混雑していた。



 休憩しながらこの後どうするのか八田さんに確認すると、ユニクロとかGUとか周って、八田さんが選んでワラシに色々試着させたいらしい。 ワラシは着せ替え人形。



 アニメやラノベとかで女性の買い物、特に洋服選びとかに付き合うと、男は大変な思いをするエピソードが多いが、あれは本当のことだった。


 前にもワラシの文房具選びに付き合ったことがあって、その時にもその片鱗を垣間見たけど、八田さんの服選びは正しくアニメとかでみる感じと一緒。 アレもコレもと手を出して、一度試着させると今度は色がどーのこーのと色違いを選びだして、さっきのが良かったとかコッチも試してみようとか。 それでもワラシの方は、オシャレに関しては八田さんを全面的に信用しているようで素直に聞いてたけど、俺には全部同じように見えてるし、八田さんの言う微妙な違いとか判らないからチンプンカンプンで、俺は八田さんが選んで渡してきた服を預かってウロウロする八田さんの後にただついて行くだけで、どうしてもダラける。


 因みに、ワラシんちでお昼食べてる時に、洋服を見に行くと聞いたお母さんが、折角だから買っておいでとお金を出してくれたらしく、この日はスカートとか夏用のワンピースとか何着か購入していた。


 結局2時間以上服選びをしていて3人とも疲れちゃったので、お手洗い休憩をすることにして、その後は近くにアイスの専門店があったから、アイス買って近くのベンチに座って食べながら休憩した。



「八田さんって、よく買い物とか来るの?」


「そんなにしょっちゅうじゃないよ。 来る時もお母さんと一緒とかだし」


「じゃぁ、一人でとか友達とかとはそんなに来たこと無いの?」


「そうだねー、女の子と来た事あるけど、知らない人とかに声掛けられてちょっと嫌な思いしたから、それからはお母さんとかとばかりだね。一人でとか絶対に無理だし」


「なるほど。苦労してるんだね。 俺とかワラシは、そういうのとは無縁だしなぁ」


「今日はケンピくんが居るからねー。久しぶりだよ、こうやってお買い物ゆっくり楽しめるのは。うふふふ」



 普段学校ではリーダーシップあって、俺とかワラシとかの世話焼いてくれたり、社交的で責任感もあって同級生なのに頼りになる友達って感じで、掛け値なしで良い人だと言える人なのに、告白事件の時とかも感じたけどなんかそういう暗い部分の話を聞くと、理不尽さを感じてやり切れない気持ちになる。


 八田さんは何も悪いことしてなくて、ただ生まれつきで美人。

 でもそのせいで要らぬ苦労をしたり、行動を制限されたり、必要以上に他人に気配りする必要があったり、悪意を向けられたり。




 そこまで考えて、今更気が付いた。


 俺がブサイクによって受けてきた迫害と、よく似てるな。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る