#30 八田さんと二人で歩く帰り道



「男の子とこうして二人っきりで歩くの、初めて。ちょっと緊張しちゃうかも」



 八田さんまでドキっとすること言い出したから、俺は調子に乗って勘違いとかしませんよ。俺にはワラシが居ますからねっていう意思表示で話題を変えるように話しかけた。




「ワラシと仲良くしてくれてありがとうね。 ワラシって思い込み強い所あって簡単にココロ開こうとしないから、八田さん相当気を使ってくれてたでしょ?」


「う~ん、そんなことは無いと思うけど。でも家庭科の時にケンピくんと話してるフミコちゃんがすっごい楽しそうに面白い話してて、それ見て仲良くなりたいって思ったのは本当だよ」


「そっか。ワラシとこれからも仲良くしてあげてね」


「うん。 でもフミコちゃんだけじゃなくてケンピくんともこれからは仲良くしたいんだからね。よろしくね」


「え?俺は男子だし、そこまで仲良くする必要ないんじゃ?」


 普通の男子なら、八田さんみたいな美少女に仲良くしたいって言われたら喜んで鼻の下伸ばすだろうけど、1年の時の苦い経験があったり、ブサイク拗らせて卑屈な俺はこういう時勝手に遠慮する言葉が出てきてしまう。特に可愛い子相手だとそれが顕著だ。


「ケンピくん何言ってるの? 私が最初に仲良くなりたいって思ったのは、ケンピくんの方なんだよ?」


「むむ。 俺みたいなブサイクにそんなこと思うなんて、何か企んでるのか? コイツならチョロくて下僕に出来るな、とか」


「もう!そんな訳ないじゃん! 少なくとも私は千葉さんとは違うからね!」


「そっか。ごめん。言い過ぎた」


「いいよ。別に本気で怒ってるわけじゃないし。 それとケンピくん、すぐ自分のことブサイクって言うけど、それ止めた方がいいよ。少なくとも私はそういうの好きじゃない。きっとフミコちゃんだって嫌だと思ってると思うよ」


「・・・・ブサイクが俺のチャームポイントだから」


「だからそういうトコ! 今日フミコちゃんにどうしてケンピくんのこと好きになったの?って聞いたら「ケンピくんほど中身イケメンの男の子はいない」って断言してたんだよ。 私ソレ聞いて凄く納得したよ。 先週の家庭科で話し合いしてた時、ケンピくんみんなに気を使って話し合い進めてくれたり他の二人が大人しいから盛り上げようとしてくれたりして、私も今までほとんど話したこと無かったのに凄い話しやすかったし、普段だってフミコちゃんとか石垣くんのこと気遣ってるの見てて分かるし、ケンピくんって面白いだけじゃなくて優しくて男らしくてフミコちゃんが言う通り行動とか中身はイケメンなんだよ」


「いや、そんなこと無いよ。ホメすぎだよ」


「兎に角!私はケンピくんとも仲良くしたいの!」


「そんなにムキにならんでも」


「もう!男の子に「仲良くしたい」って言うの、すっごく恥ずかしいんだからね!」


「分かったからそんなに興奮しないで。 俺だって本音は「八田さんって顔で差別したりしないし、凄く良いひとだな」って思ってたし、仲良くしてくれるのも有難いって思ってるから」


「なら最初から素直にそう言ってよ、もう。 最初サラっと言ったのにケンピくんが卑屈なことばっか言うから、私ムキになって恥ずかしいこといっぱい言っちゃったじゃん」


「すまん。 普段からモテなさすぎて卑屈になってる男子は面倒なんだよ。 それに他の女子と仲良くするのもワラシに悪いし」


「ケンピくんって、フミコちゃんのことホント大事なんだね。見てて凄く羨ましい」


「そ、そんなことないぞ」


 流石にそう言われると、物凄く恥ずかしい。




 八田さんのお家に着くと「じゃぁまたね~、おやすみ~」と言って別れた。



 八田さん、思ってた以上に良い人で、クラス委員任されたり人気者な理由が凄く納得出来て、ただ美人ってだけじゃないことがよく分かった。 


 そりゃモテて当然だよ。

 ワラシと付き合ってなくて、あれだけ好意的なこと言われれば俺も八田さんのこと好きになってたかもしれん。



 八田さんの家からの帰り道、一人でそんなこと考えつつ、二人っきりだったことをワラシが不安になってるかも?と心配になったので、ワラシに「今無事に八田さん送り届けた。ワラシが心配するようなことは何もないからな?俺はワラシ一筋だから!」とメッセージを送り、送った後、猛烈に恥ずかしくなった。


 多分、さっきの熱血だった八田さんの影響で、俺までのぼせていたんだろう。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る