#28 八田さんは仲良くなりたい
この日は、家庭科で調理実習があった為、給食はパンと牛乳だけになっていた。
直ぐに食べ終えて片付けると、ワラシと一緒に職員室前に掲示されているボランティア関連の情報の確認をしに行った。 最初、俺だけ行って申込用紙を二人分貰って来るつもりだったが、ワラシも付いてくると言うのでそのまま二人で。
二人で居ると周りからの目とか心配だったので、そのことをワラシに確認したら「多分大丈夫だよ」とオドオドしたりせずに結構普通にしている。
まぁ確かに、俺もワラシも学校じゃ元々目立たない部類だしな。二人で歩いてたくらいじゃ誰も注目しないだろうし、まさか俺みたいなブサイクにカノジョ居るとか、一緒に歩いてる女子と付き合ってるとか誰も思わないだろう。
掲示されているボランティアの情報を確認すると、目的の物を見つけた。
日時は、7月の終わり頃。
場所は、地元にある市の交流センター。
募集人員は20名となっていた。
定員がいっぱいになって募集を締め切った物は、ボランティア情報に掲示されてる一覧表にて斜線で消されるのだけど、目的の物は斜線が付いていなくて、まだ大丈夫だった。
ならば埋まる前に直ぐに申し込もうと、職員室に入り申込用紙を貰って、俺もワラシもその場で記入して直ぐに提出した。
目的のボランティアの応募も無事に済むとまだ休憩時間が30分くらい残っていたけど、今から図書室に行っても時間が中途半端になるから教室に戻ることにした。
教室に戻ると、一人で読書していた八田さんが俺たちに気付いて話しかけて来た。
「二人っていつもお昼になると教室から居なくなるけど、どこかで二人で会ってるの?」
「うん。教室だと周りの目があるからね」
「へぇ~、お昼休憩に恋人と二人っきりかぁ。そういうのいいね。憧れるなぁ」
俺が八田さんの質問に答えていると、珍しくワラシから八田さんに話しかけた。
「八田さん、ケンピくんは私のだからね。 恋人作るなら応援するけどケンピくんはダメだからね」
ワラシの発言に、「また糞ビッチ3号とか言い出すのか!?」と一瞬焦ってワラシの顔を見ると、ぐふふふって嬉しそうな顔してた。
なんだ、ワラシなりの冗談か。
八田さんも冗談だと分かってるのか「そっかー、ケンピくんはダメなのかぁ。残念!」と返していた。
そして
「そうだ! 二人は放課後もいつも一緒なんでしょ? 今日の放課後、私も付いて行ってもいい?」
「え?なんで?」
「二人の話もっと色々聞きたいし。 それに井上さんとももっと仲良くなりたいし」
「恥ずかしいからヤダよ」
「私も恥ずかしいからイヤ」
「えー!折角仲良くなれそうなのに!」
う~ん
八田さんは、決して悪い人じゃなくて、俺やワラシにも分け隔てなく接してくれる人で、俺にとってもワラシにとっても仲良くしてくれるのはとても有難いことだと思う。
それに客観的に見ると、八田さんの様なクラス委員で美人で人気者からのお誘いを無碍に断るなんて、お前ら何様?って見えるだろう。
折角八田さんの方から仲良くしてくれようとしてるのなら、断るのも良くないのかな。
「ワラシ、たまに石垣や真中と一緒に遊ぶのと同じようなもんだし、いいんじゃないか?」
「うん、分かった。じゃぁウチに来る?」
「え!井上さんち!?行ってみたい!」
「じゃぁHR終わったら一緒に行くか」
「うふふ、ありがとうね。今から楽しみ」
「先に言っとくけど、サチコには要注意な」
「え?サチコって誰?」
この場に居ないが、石垣も誘ってあげないと悪いかなと思い「石垣も誘っていい?」と八田さんに確認すると「ダメ」と即答だった。
どうやら、思ってた以上に八田さんの石垣へのイメージは悪くなっているようだ。
そして、放課後。
いつもはワラシとズラして教室を出るが、今日は八田さんも一緒だから3人で一緒に帰ろうと八田さんを先頭に教室を出ると、廊下で「ケンピくん!」と女子に声を掛けられた。
千葉アキだ。
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