第8話 スーツ

「な、なぎさどうしたん?」


登校すると同時に目が合い驚かれた。


「おはよ。」


「おはよう、ってその服どうしたん?」


「え、スーツ。」


「そんなん見たら分かるやろ、理由や理由。」


私はスカートタイプのスーツに身を包み、黒のパンプスで登校していた。


理由は父が来て、三者面談をするからである。


地元から車で3時間かかるため、父もスーツでしっかり出張スタイルで来ると言っていた。


「どう?似合う?」


「…普通やな。」


「え~?」


私はジャケットを脱いで、ブルゾンちえみスタイルになった。


「ブルゾンやんけ!」


「でしょ?私も鏡見てそう思った。」


慣れないパンプスのせいで、ふくらはぎはパンパンですでに疲れている。


椅子に座り、ふくらはぎのマッサージをしているとかなたくんはこっちを見ていた。


「なに?」


「いや、女は大変やなと思ったんや。」


「それな。もっと女を敬え。」


「お前は彼氏がおるやろ。」


「彼氏とは今色々あって色々なんだよ。」


「またかいな。」


「倦怠期なのかもね。」


「大変やな。」


「父親が来ることの方が大変だよ。彼氏追い出してきたし。」


「親父さん、公認なん?」


「そうだよ。でもさすがにリアルなのは見たくないでしょ。」


「箱入りやもんな。」


「そうよ。」


「携帯、鳴ってんで。」


かなたくんに言われ、携帯を確認すると父からの電話だった。


迎えに行くことになり、私は父と合流した。


駅から学校に行く道で、かなたくんと他のお友達とすれ違った。


挨拶しようとしたものの、父の姿に委縮した彼らは目を合わせることもしてくれなかった。


金髪スーツにピアス、その隣を歩く私。


三者面談は無事に終わり、今後の進路のことなどをしっかりと話し合うことができた。


帰りは父に送ってもらい、私は一息ついた。


『かなたくん:お疲れ~』


ラインの通知が来た。


『私:おつ~。』


『かなたくん:親父さんすごいな。』


『私:普通だよ。』


『かなたくん:普通じゃない。』


『私:わらう。』


『かなたくん:進路どうするん?』


『私:次に会った時に話すわ。』


『かなたくん:待ってるわ。』


私は、彼氏を呼んで今後の進路について伝えた。


彼氏はかなり落ち込み、距離を置きたいと言われた。


自棄になった私はストゼロを決めた。


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