第4話 相談

いつものように教室にいると、かなたくんが来た。


「おは~。」


「おはようさん。」


慣れたもんで、普通に私の隣に座り、荷物を降ろしてお茶を飲んだ。


しかし、かなたくんの顔色は悪く、目の下にくまができている。


「どうしたの?具合悪いなら帰った方がいいんじゃない?」


「ちゃうねん。」


「強がらないでもいいのに…。」


「いや、ほんまにちゃうねん。」


「じゃあ何?」


スマホをいじりながら、真面目な顔でこちらによって来た。


「彼女と喧嘩してんねん。」


無理やり画面を見せつけてくるため断れずにラインを見たら、それはそれは大喧嘩。


「なんでこんな喧嘩してんの?」


「遠距離だからや。」


「ああ、そっか。」


「寂しいんだと。俺はゲームしたいねん。それでもちゃんと彼女の時間も割いてんねんで?」


「うん。」


「電話だって毎日しとるし、ラインもしとる。何が不満なんや…。」


遠距離は難しいよなあ…と苦い思い出を懐かしみながら、かなたくんに合う言葉を探した。


「向こうは部活でこっちの都合も考えんと、色々言うてきよんねん。」


「何部なの?」


「吹部や。なぎさも分かるやろ?」


「ああ…。強豪校なの?」


「知らん、けどかなり練習はガチやな。」


強豪じゃないのに練習は強豪校並みのところはあるよなあ…と言いかけたが、関係ないため我慢した。


「もう正直、疲れてんねん。」


スマホを閉じて、机に突っ伏すかなたくんに私は声をかけた。


「気持ちは分かったけど、結果はどうしたいの?」


かなたくんは少しびくっとしたが、そのまま答えた。


「別れたい。でもあいつはメンヘラやねん。なぎさもメンヘラやから分かるやろ?」


「分かるかもね。相手はどういう種類のメンヘラなの?」


「別れさせてくれないんよ。何度も別れ話になったことがあんのに、絶対に別れてくれないんや。」


なるほど、執着タイプ。一抹の期待に命かけてるタイプだなあと感じた。


「物理的な距離が離れてるんなら、もう後は精神的な距離を離すしかないんじゃない?優しくするから期待して、それで別れたくないってなるんだよ。」


「惰性でいると、ほんとに離れられないよ。」


かなたくんは体を起こして、スマホを持った。


「せやな。俺、優しくしすぎたかもな。」


そう言うとラインをし始めた。


私は心の中で、お互いにいい結果を迎えられるようにと願った。

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