第27話 出発
「では、行ってきます」
挨拶を終えて、馬車でバーチを出発する。
ナナと2人まずはウキヨ経由でイータマという街を目指す。
あの日ベアさんから獣族の集落までの地図やルートを教えて貰った。
それからは旅の準備に追われた。
家は1年ほど前払いし、戻らなければ解約になる。その間の清掃の依頼もした。
仕事は辞めるつもりではいたが、オーナーの計らいで籍は置いといてくれる事になった。
しかも、各街の支店で新商品やアイディアを提供してくれれば報酬を払ってくれる。
オーナーには感謝しかない。
ナナは辞める事になったが、いつでも待ってると言ってもらえた。
お世話になった人や友人に挨拶を済ませ、準備もしっかりした。
2人とも旅には不慣れなのでオーナーの指導の元
、野営に必要な物や食料、装備を用意した。
ナナは調理と護身用にナイフ、私はショートソード。コスプレ感が否めないが、剣が使えない私にはギリギリの装備らしい。
ウキヨまでは一度行っているので、不安はあまりない。
ナナはサンサに会いに行く目的と、初の旅という事でテンション高めである。
「おとーさんっ。あれはっ? こっちはっ?_ 」
しっかりしてるとはいえ、低学年ほどの少女なので遠足気分で心配になる。
ウキヨに着いたらいい聞かせないとな。
それでも満身創痍で旅を続けさせたい訳ではないので、ナナに答えながら旅路を楽しむ。
途中野営をはさみ、相変わらずの虫には参ったがナナは野宿が楽しいらしく1人元気だった。
そして久しぶりのウキヨに着いた。
今度は3人でくると思っていたので、少しだけ気分が落ちる。
もしサンサが帰って来れたなら、3人でゆっくり見て周ろうとナナと約束した。
今日はウキヨに一泊するので、支店の挨拶と2人で散策する事に。
支店に着くと、責任者のラービさんが相変わらず忙しそうにしていた。
「ユーイチさん!また一緒に仕事ができるんですか?」
期待いっぱいでグイグイ来る彼女だったが、事情を説明すると必ず戻って来たら一緒に仕事しましょうと抱きしめられた。
いきなりでドギマギしてしまったが、歳も近いせいか私の不安を察してくれたのかも知れない。
そんな彼女にお礼のつもりで新作レシピを教えたが、慌てて仕事に戻って行った。
仕事を増やしたようでお礼にならなかったかも知れないが、喜んでいたので良しとしよう。
支店を後にし、ナナと街ブラする。
大きい街なので、見る物全部新鮮でナナは楽しそうである。
「おとーさんっ、次あれ食べたいっ」
「あれも食べるっ」
「あんまり食べすぎないようにね。明日からは私も知らない旅路だから。」
「うんっ!おねーちゃんに会うため頑張るっ。だからたくさん食べて元気つけるのっ」
彼女なりに大変さは理解してるようで、改めて言う必要はなさそうだ。
ウキヨの屋台料理を堪能し、その日は早めに休んだ。
明日からは、イータマに向けて出発だ。
何が起こるかもわからない世界なので気は抜けない。
ナナも私も無事に目的地に着けるように願うばかりだった。
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