第20話 ウキヨの街
新しい仕事に就いてから数週間。
顧客との調整、従業員との連絡や指導並びに管理…
今までの仕事と変化は大きかったが、元世界では似たような事もしていたので、むしろ慣れたもんだった。
メインは雇い主もとい
今取り掛かってるのは、馬車の改良だ。
サスもどきを形にするべく直接鍛冶師と意見交換して、車輪に緩衝材をつけてみたり、車軸を金属に変えたり、四輪それぞれ独立してみたり…思い付く事をひたすら試す日々。
現場に入る事で、目覚ましい進展が出た事で
これが形になれば、商会としても大きな利益が出るらしくボーナスまで確約済みだ。
サンサ作の服も人気があるようで、初めはいくつか作っては販売していたのだが、現在は注文販売になり予約は半年ほど埋まっている。
無理しないようには伝えてはいるが、本人は楽しくて仕方ないらしく偶に徹夜しているほど。
みんな働き者な上に、私やサンサのプチバブルがあり生活は順調そのものである。
ある日、
「お疲れ様。ユーイチよくやってくれてるね。」
「いえいえ、元は事件のあと行き場のない私を雇ってくれたからで感謝しています。」
「なら、その時の自分にも感謝しておかなくてはな。ははは。それで仕事の話なんだが__ 」
話とはバーチの街から西にある街に行って欲しいという事。
西に数日向かうとウキヨという大きな町があり、
支店があるので仕事を頼みたいそうだ。
仕事の内容は、支店長らと新しい料理のメニューを考えて売り出す事。
なんでも珍しい食材が大量に手に入ったらしいが、普及と商会の宣伝のためにアドバイスが必要との事だ。
「問題は長期の出張になるが、ユーイチにしか頼めないんだよ。もっと時間があれば手紙のやり取りでも良かったが、不良在庫にする訳にはいかないし料理となると直接指揮をとらないとな。強制ではないが、頼まれてくれ。」
「はい、家の事もあり相談して決めたいですが…私を買って頂いて断る訳にはいきません。家族には説明してわかってもらいます。」
仕事を引き受けた私は、ナナ達に話をした。
2人とも寂しがって心配くれたが、最後は納得して頑張ってと送り出してくれた。
出張期間は1か月前後なので、ありがたい申し入れだった。
「じゃあ、いってきます!」
「「いってらっしゃいっ」」
2人に見送られ、街を出る。
1人になるのがこんなに寂しいと思うなんて、私達はちゃんと家族になれてるんだなと思った。
そんな気持ちとは裏腹に、違う街に行けるというワクワクした気持ちでもあった。
ウキヨの街までは5日ほどかかった。
思えばこんなに長く移動したのは初めてで、景色の新鮮さや野営の辛さを改めて感じた。
街道は思っていたのとは違い、綺麗に整備されていた。
道中モンスターや盗賊に襲われるなんて展開もなく、ただただ暇であった。
代わり映えしない景色に飽きたあたりで、バーチの街の倍はありそうな立派な城壁のウキヨの街に到着したのである。
豪華で頑丈そうな門を抜けると、その光景に目を奪われる。
大通りは綺麗な石畳
建物は彩り鮮やかで控えめ
人の数は賑わっていてバーチの街の倍くらい
服を見ても綺麗にしているのがほとんど
ラキーバやバーチが田舎と感じるほどだった。
呆けてる場合じゃないので、早速支店へと向かう。
「こんにちはー。バーチから来ましたユーイチです。」
すると奥から同世代であろう女性が出てくる。
「あらあらぁ、お待ちしておりました。
簡単な挨拶を済ませ、店の案内や仕事の話をして宿に向かった。
久しぶりの宿生活になるが、料金は経費だったし宿も綺麗で満足。
(明日から仕事だ。出来るだけ早く済ませて家に帰りたいな。寂し…)
少しホームシックになるおっさんであった。
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