第16話 意外な特技

 3人で新しい家に住む事になって数日。


 今日は、サンサ1人で留守番。

 

 ユーイチは商会に、ナナは食堂と仕事に行っている。

 獣族であるサンサはあまり目立って出歩かないし、仕事もなかなか見つからなかった。

 小さなナナが手伝いとはいえ、働きに出ているので申し訳ない気持ちになる。


 2人とも事情を分かってくれ、家の事をしてくれたらいいと優しく言ってくれた。

 しかし、料理の腕が壊滅的だった事もあり、やる事と言えば掃除くらいでほとんど居候と同じである。


 「やっぱりあたし…迷惑かけるだけでここから出て行くべきかなぁ。」


 まだ自分はここに居ていいのかすら不安なのに、役に立ててない状況はますます不安にさせる。


 何か出来る事はないかと考えていると、そうだと思い付く。

 買い出し用に預かった銀貨を持ちフードを被り街にでる。

 



 サンサが向かったのは、とあるお店。いくつか必要な物と、ナナにはこれかなと選んで購入した。

 

 色々な街を転々としていたので、自分のは自分で直したり作ったりもしていた。

 仕事としても長く続いたひとつであったので、基本的な技術は修得済みである。

 

 彼女が思い付いたのは裁縫である。ユーイチもナナも買って揃えてはいたが、あまり丈夫な服はなかなかなく洗濯などですぐ傷んでくる。

 

 洗濯しながらほつれた服や、穴の開いた服を見て気にはなっていた。

 また、ナナは可愛いのにもっと可愛らしい服をとも思っていた。


 ユーイチのシャツなど引っ張り出してきて、ほつれやとれかけたボタンを直す。


 獣族の爪は尖っていて、裁縫には不向きかと思ったが手際がよく数分で完了である。


 次はナナの服。


 ナナは大事に着ているみたいで直すのもなかったので、新たに作る事に。


 黒髪に合いそうなな淡い水色の生地を買ってきていた。

 これでワンピースを作る事にした。


 せっかく作るので、時間をかけて丁寧に作る。


 誰かの為に、その人の事を想いながら作るのは、とても楽しかった。


 可愛らしい水色のワンピースが出来た。


 (喜んでくれるかな…役に立てたら…あたしも自信持っていいよね)




 「ただいまっ!サンサおねーちゃんっ!」


「2人ともただいま!」


 それぞれ帰ってきたので、夕食にする。


 夕食後、サンサが話があると引き止めた。


 「あ、あの…あたし何の役にも立てなくて…居てもいいのかなって…。」


(そんな事思ってたのか…)


 「そんな事ないっ。おねーちゃんが居てくれてナナは嬉しいっ。」


「ナナの言う通りだよ。役に立つとか立たないとか、家族ならきにするんじゃない。私はとっくに家族のつもりだったんだが、言葉が足りなかったかな。悪かった。」


 「違います!あたしが余計に考えちゃうから…それに、何かしたいのは本当で…これを。」


 綺麗に畳まれたユーイチの服と、水色の服を渡された。

 

 「あたし、裁縫は得意でユーイチさんの服を直してみたんです。あとはナナちゃんにワンピースを作ってみました。」


 「「すごいっ」」


 「可愛いっ。お店の服より全然綺麗っ。」


「ああ!買った時より良く見える。すごい特技だ。」


 「うぅ…ありがとうございます。そんなに喜んでくれるなんて。」

 

 偏見や差別で報われない事も多かったんだと思う。

 

「もう、気にしないでいい。サンサは凄いじゃないか、自信を持っていい。それに家族ならもっと頼っていいし、話し方も普通にしてくれないか?」


 「うんっ!おねーちゃんはもうナナのおねーちゃんっ。泣かないで笑ってっ!」


 「うぅ…ありがとう。ユーイチ、ナナ。これから家族としてよろしくね…」



「「もちろんっ」」


 

 

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