第14話 異世界て家を借りてみよう(後編)

 「うわぁ〜っ!大きいっ!」


 2階建て4DKで、月銀貨250枚の庭付き。


 流石銀貨250枚の家だけある。予算オーバー借りる事はないが、内見するだけならタダ。

 異世界の家もベアさんの小屋、宿くらいしか知らないので興味がある。


 ちなみに今の宿が3食付きで月銀貨170枚くらい。


 中は中々綺麗で、マイホーム感は満点。ただ2人には、少し広すぎるし現実味に欠ける感じだ。

 小さな庭もあり、ガーデニングをしてもいい。


 イメージにある異世界とは違って、風呂もあり貴族様御用達というわけでもないらしい。

 五右衛門風呂に近くて、水を運んだり沸かしたりは少し大変そうだ。

 けれど、今は宿で身体を拭くか、近所にある大衆浴場みたいなとこに行くしかないので、家にあるのは嬉しいポイントである。


 驚いたのは台所で、少し厚みのある板状の石みたい物があり、魔力石を嵌めると熱くなると聞いた。

 水道とかないのに、IHがあるような不思議な世界だ。

 電気もガスも見ないのに、魔法的要素があるから変に便利だったりする。

 お宅訪問気分で楽しんだ2人は次の家に向かう。


 さて、2軒目のお宅は…


 なんという事でしょう__変なテンションで突撃である。

 お値段は月に銀貨100枚の平家。


 建物は古めだが、趣のある雰囲気でなかなかお洒落に見える。

 2LKで狭いかなとは思ったが、台所続きのリビングは広く、ここだけでも宿の倍はある。

 風呂も小さいながらあり、暖炉もあった。全体的に汚れてはいたが、2人で掃除して綺麗に整えて行くのもいいと思う。予算も手が出る範囲。

 立地も良く、近くに市場や教会があるのもポイントが高い。

 ここならナナがお使いに行ったり、何かあったら教会に逃げたり出来る。

 屋根裏部屋もあるらしく、男の子にはたまらない。

 おっさんであるが、いつまでも少年の心は永遠だ。

 屋根裏に上がる専用の梯子が壊れていて見れなかったのは残念である。

 

 


 最後のお宅へ…


 2階建てで、月銀貨90枚の3LDK,


 ここは間取りも良く広め、お値段も安いので狙っていた物件だ。


 印象としては普通で、家族が出来て住んでも問題ない広さと造りであった。

 リビングに入って固まってしまった。

 

「う〜ん…」

 「……っ」


 これがなきゃ即決だった。2人して言葉に困る。

 リビングの壁にあったのは、黒ずんでいたが明らかに跡があった。

 デカデカとぶち撒けられた様な血の後である。木の壁に染み込み、拭いた跡はあったがそれだとわかる。

 しばしの沈黙の後、色々見る事なく2人は静かに家を出た。

「掃除とか大変そうだけど、2番目の家にしようと思う。ナナはどう思う?」


 「うんっ。私も掃除好きだし、あそこ嫌いじゃないっ。」


「じゃあ決まりだ。楽しみだなぁ。」


 「だねっ」



 色々揃えたり、自分達の空間を作っていくのは歳関係なく楽しみだ。

 あー屋根裏の梯子も直してもらわないとな。


 ナナとあーだこーだ話ながら鍵を返し帰路につく。


 こういう会話が楽しいのもナナが居てくれてるからで、不純な動機で腰を上げた自分が少し情けない。


 ナナの部屋は好きな物を揃えてあげよう。そう思って宿まで沢山話をして宿に戻って行った。


 


 

 -屋根裏-

 「ガサッ…ガサガサ…」



 誰もいないはずの空家…


 ユーイチとナナに待ち受けるのはいったい…


 


 

 

 

 




 


 



 

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