第13話 異世界で家を借りてみよう(前編)

 ナナを引き取り一ヵ月くらい経った。こちらの世界の曜日や暦はあるんだが、まだ馴染めず日数をメモして大まかに把握してる状況だ。

 

 捕まったり倒れたり色々あったので、正確ではないがこちらに来て半年くらいは経った。

 ちなみにだが、週は5日で月は40日1年は10ヵ月との事。

 光→火→水→風→闇が週で…らしい。実はまだちゃんと把握出来ていない。

おっさんの吸収力のなさを舐めてはいけない。今じゃナナに聞けばわかるほど差がある。


 上手く物事が進んでいる時にこそ問題が出てくる。

 拙僧のないダメおっさんのつもりはないが…同僚と酒も飲みたいし、可愛い子とゴニョゴニョも…。


 宿住まいでナナとは同じ部屋で、しかも夜置いて遊びになんて行けない。

 今まで独り身でこもって生活していた時はなんともなかったが、気軽に出歩けなくなってみると無性に出たくなるのが不思議である。


 せめて家を借りて落ち着きたいところだ。宿住まいで置いては歩けない。

 貯金は結構あるし、浅い知識とはいえアイデア料みたいなのも少しだが貰えたりする様になっていた。


 流石に異世界ドリームとはいかないのが、冴えないおっさんの実力ではある。

 雇い主もサスペンションらしきものを試行錯誤しているらしく、持ち馬車が若干乗り心地がよくなっていた。


「そろそろ家を借りてみようと思ってるけど、ナナはどう思う?」


 若干の不純?な動機もあったが、生活基盤をしっかりしたいのは本当だ。やっぱり出入りの多い宿だと、ガラの悪い人間もいたりするからな。


 「えっ!ほんとっ?ほんとなら嬉しいし、お掃除も頑張るっ!」


 最近じゃ日常生活に困らないくらい話せるようになったナナ。よほど嬉しいのか、飛び跳ねて喜んでいる。

 

「なら探してみるか!」


 「うんっ!」


 少しずつだが、生活も仕事も良くなっていくのは気持ちがいい。

 こっちで放り出されてなきゃ、この歳でこんな経験はなかなか出来ない。

 ナナほどではないが、私も楽しいと思う。



 休みになったので、家を探しに商会ギルドに来ている。

 雇い主に相談すると、商業ギルドは物の売買だけでなく空き店舗や空き家の賃貸も扱っているのだという。


 「ようこそいらっしゃいました、御用件を承ります。」


 眼鏡をかけた美人が対応してくれて、ドキドキしてしまう。


「い、家を借りたくてですね…出来れば治安のいい区画で3〜4人でも狭くない家がいいんですが。」


 奥さんが来てくれる予定も何もないが、ナナにも部屋をと思っていたので広めに聞いてみた。

 予算もあるので、最悪狭くても危険が少ない場所にするつもりである。


 「そうですね__が、ありますがどうでしょう?」


 出されたのは3つ。3つとも治安の割といい区画で、今の宿と一本隣の通りだった。

 

 1つ目は、月に銀貨250枚(金貨2・銀貨50)

二階があり、間取りは4LDK。

外装も新しい方。

 

 2つ目は、月に銀貨100枚

二階はないが、間取りは2LKに小さな屋根裏部屋付き。

外装も内装もそれなりに古い。


 3つ目は、月に銀貨90枚

二階もあり、間取りは3LDK。

外装も内装も普通。


「そうですね…一度見て周りたいのですが可能ですか? 」


 「もちろんです。こちらが鍵になりますので、夜の鐘前までに返却をお願いします。」

 

 そうして、鍵をもらいナナと合流した。



「気にいる家だといいな!」


 「うんっ!楽しみっ!」


 ドキドキ内見ツアーが始まる…


 




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