第7話 達成感のち涙

 朝食を食べ、仕事を探すために街へ出た。教えてもらった斡旋所は、少し大きな石造りの建物で、様々な求人や、成人した人への見習いの仲介、適正など相談する事が出来るとのこと。

 先立つ物もないので、日雇いの仕事を紹介してもらい、環境を整えつつ色々慣れていく事にした。


 紹介してもらった仕事は、街中での配送や荷物の詰め込み。単純な肉体労働だし、街の地理にも詳しくなれると思いお願いした。報酬は1日銀貨4枚で、期間は5日更新との事。

 宿が食事付きで1日銀貨3枚なので、飛び入りの仕事なら十分だと思う。


 これからすぐ働けるとの事だったので、さっそく仕事場に向かい働く事になった。未経験なおっさんだと浮くかなと思ったが、年代もバラバラ、私の見た目も若く見えるらしく気にする事もなかった。

 初日で、配達先を覚えたり慣れない力仕事で大変ではあったが、なかなか楽しかった。

 体裁や世間体を気にしなくていいせいか、初めてバイトした頃のようだ。


「疲れたーっ。でも、見るもやるも新鮮で楽しいが勝ったかな。にしても、やっぱ異世界なんだなぁ」


 宿で夕飯を食べながら、今日の事を思い返す。人種というのかあからさまではないが、ドワーフやエルフ、獣人…っぽい人を見かけた。呼び方なんかは知らないし、見た目もまさにって感じではなかったが多分そうだと思う。いうなら、街中にいろんな国の観光客がいる感覚。

 それに、冒険者ギルドというのもあった。冒険者は、読み書き等の試験と体力試験をクリアすればなれるようだ。

 治療院というのもあって、魔法で治療していて魔法もあるんだとワクワクした。


 興味が色々出てきたのはいい傾向だけど、危ない橋を渡るわけにもいかないので明日からもコツコツやっていこうと改めて思い、部屋に戻り眠りについた。


 初日あれだけ疲れたのが、嘘のように身体が軽くサクサク仕事が進み、5日間もあっという間に過ぎ斡旋所に報告して帰路に着く。とても充実していた。

 すると、宿への途中…


 「きゃぁっ!なんですか!やめて!」

 路地裏の方から声がした。

 「うるせぇっ!静かにしろ!痛い目に合わすぞ!」

 「いや!やめて___ 」

 トラブル発生のようだ。慌てて路地裏に向かう。

「何してるっ!」


 勢いで首を突っ込んでしまった。厳つい5.6人に囲まれている女性。

 一瞬で後悔しました。

 そうそう殺されたりとしない暮らしをしていて油断をした。見た瞬間に殺されると感じてしまった。


 「なんだてめぇっ!邪魔すんじゃねぇよ!おい!ついでにそいつも連れて行け。なんかに使えるだろ。」

 

 そういうと有無を言わさず、あっという間に頭に袋を被され拘束されいく。

(うっ!…いたっ!…え…なっ)


 理解が追いつかないと、こんなものなんだろう…閉ざされた視界に、そのまま意識を投げ捨てた。



 目を覚ますと…知らない部屋に手足を縛られて横たわっていた。部屋には何もなく、格子のついた扉があるだけだった。

 拉致されたのを思い出した。身体を起こしつつ、辺りを見渡す。他にも2人いた。1人は絡まれていた女性であるが、まだ気を失っているみたいだ。


「な、なぁ大丈夫か⁉︎なんなんだこれ?」

 近くにいた青年に声をかけた。

 「あぁ…あんたも捕まったのか。災難だったな。な。多分ハクサンって奴の仲間に捕まったんだよ。」

「ハクサン?私は殺されたりするんだろうか…」

 「それはないと思う。ただ…無理な契約を結ばれて、搾取されるはずだ。脅され、拉致もなかった事にされて泣き寝入りするしかないだろうな。捕まらずにいるって事は、従わない奴は口を封じられてるのかもしれないが…」

「そんな…」


 初の仕事をこなし、これから着実にって矢先に…涙がツーっと溢れる。

 最後に涙を流したのはいつだったか…おっさんの久しぶりの涙は、異世界でとてもキラキラしていた。

 

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