第4話 割とテンプレ通りなのか…?

 あれからどれくらいの時間が過ぎたのだろう…

 腹痛と、いつナニかに襲われるのかもしれない恐怖…私は、憔悴していた。

 「最悪だ…生水がダメなのはわかっていたけど、あんな綺麗な川で腹痛になるなんてな…」

 しみじみ日本という平和なとこに住んでいたんだなと、オレンジに染まってきた空を見ながら項垂れていた。

 空腹は感じる余裕もなく、脱水症状になるんではないかと思いながらも何も出来ずにいた。

 そんな時だった。

「ガサッガサガサッ」

 何かが近づいて来た。朦朧としながらも、身体を丸め息を殺す。

 腕の隙間から片目で様子を見る。すると、人が出てきた。

 180cm 75kg の私から見ても明らかにデカイ、色々とデカイ髭面の30代くらいの男だった。


 (まずいっ…襲われる?盗賊なのか、まずいまずい…)


 こんな森の中普通の人なんかいるはずもない、ワイルドな見た目もあってか、悪い考えしか浮かばない。

 「誰かいるんか? いたら返事をしろ!」

 男が声を上げた。私は、ますます怖くなり身を潜める。

 「用足した後もあるし、いるはずなんだがな…」

 男は、数メートルのとこまで近づいて来た。


 (み、見つかるっ。まずいこんなとこで…歩き疲れて、水飲んで、腹を壊して…それで終わりとか死にきれないっ。)


「あ!そこに誰かいるな!おい!」

「ひぃ!み、見つかったっ!こ、殺さないでくれ!死にたくない!た、助け…」

「!いきなりなんだ!おい、大丈夫か!おい!おい!…」

 男が何か言っているのも、頭に入らず気を失った。


「ん…んんっ」

 ぼやける視界が回復すると、木の天井があった。

「おう、目が覚めたな?とりあえずこれを飲め」

 状況を理解できないまま、男に差し出された茶のような物を口にした。


(にがい…)


「薬だ、なんか悪いもんでも口にしたんだろ?やつれてるし、履いてたのも…汚れてたしな…」

 この歳になって粗相した挙げ句、助けてもらったみたいだ。殺されるかもと恐怖していた事なんか忘れて、恥ずかしさと情けなさでいっぱいになる。

「あ、ありがとうございます…見ず知らずの私を助けて頂き…ありがとうございます…」

「なんもなんも気にする事なんかない。あのまま置いていけるかよ。」

 男は、優しい笑みを浮かべる。

「まあ落ち着いてきたみたいだし、事情くらい話してみろよ」

 ベアと名乗った男に、信じて貰えるよう嘘はつかず話せる範囲で話した。

 私は、気づいたら森にいた。川の水を飲んで腹を壊し、何かに襲われるかもしれないと身を潜めていた。自分の名前はわかるが、なんでここにいるのかはわからない。知らない土地だと説明した。

「そうか…ユーイチ?と言ったか、悪いやつには思えんが…困ったなぁ」

「すみません…得体も知れないようなやつを助けていただいて…」

「う〜ん…とりあえず日も暮れた、飯食って今日は休んでいけな。ベッドもそのまま使って構わない。用は、あの扉の向こうだ。遠慮しなくていい。明日、改めて話をしような。」

 盗賊か殺人鬼と勘違いしていた男は、めちゃくちゃ男前のいい人だった。若い女の子ならともかく、正体不明のおっさんを助けてくれるなんて。

「ベアさん本当にありがとうございます!お言葉に甘えさせてもらいます。」

「おう!いいって。あと歳も近そうだ、あまり畏まらなくていいぞ。こっちが気を使っちまう。」

 そう言って、笑いながらベアさんは隣の部屋へ行った。気が休まらないと思って一人にしてくれたのか、そうだとしたらますますいい人だなと思う。

 そして、気が抜けたのか…私は、そのまま眠ってしまった。



 


 


 



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