第3話 お約束だけど現実になると辛いよね

 フッ…

「…んなっ! 木? 冷たっ!」

 光が収まると、森?にいた。視界には木々や草、尻餅をついていたらしく、じんわり冷たい。

「期待はしてたけど、思ってたのじゃなかったな…」

 壁の文字から思うに、世界に適した身体?言語能力的なのを貰ったらしいけど…いわゆるチート能力みたいなのはないんだろう。

 とりあえず辺りを見渡し、森の中かな?と把握し、その場で飛んだり身体を動かしてみる。

「うーん…特にいつも通りだろうな。力が湧いてくる感じもないしな…。触った感じ身体も顔も変わってないな。」

 軽く状況を整理した私は、改めて考える。見渡す限り森。木々の隙間から見るに、まだ夜ではない。木や草など種類はわからないけど、特に変わった印象もなく普通に木や草だと思わられる。

 次第に色々と問題がある事に気づいた。

 まず、私の格好…シャツにストレッチパンツに裸足。汗をかけばベタベタくっつくシャツ、引っ掛ければ破れるだろうパンツ、歩き回れば血だらけ必須の素足。

「森の中できついなぁ…」

 次に、白い部屋では感じなかった喉の渇きや空腹感。時間が止まっていた?単に不思議空間だったからか?気にするだけ無駄な事を思いつつ、このままではいけない。

 さらに、森の中らしいという事。異世界?の説明等なく、しかもアウトドアなどの知識も経験もない。よくあるパターンだと、モンスターが出てくるような世界なら尚更ハードモードになる。

「まぁ…今猪とか野犬が出てきても無事とは思えないな…」

 色々問題が出てきたとこで、このままここにいても仕方がない。死にたいわけでもないし、死ぬのは恐い。

「とりあえず、注意しながら水場を探すしかないか…」

 喉も渇いてきたし、水があればすぐ死ぬ事はないってのは聞いた事がある。

 目的も決まったので、早速移動する事にしよう。着ていたシャツを一度脱いで、袖を引きちぎる。そしてちぎった袖を足に巻き靴がわりにする。

 長袖で本当によかった。体感では少し汗ばむくらいだったし、問題はないと思う。

 これで素足で歩くよりはマシだろう。

「向かう方向はと…」

 空を見ても青っぽい空と雲しか見えない。太陽らしき物があったとしても、そんな知識もない。そうなると、勘で決めるしかない。

 「あっちが安全…そうかな。」

 独り言ばかりなのは、思ってるより不安なのかも知れない。

 歩きやすそうな方向へ歩き出した。


 道なき道をしばらく歩いている。特に動物やモンスター的なのも見かけない。内心ビクビク歩いているので思ってるよりは進んでいないだろう。

 ただ、やたら痒い。蚊に両腕を、何箇所か刺されてるようだ。

 藪蚊?多分そうだと思う。改めて見ると藪蚊なのか、違うのかはわからない。普段気にしてもないから違いもよく分からない。見比べる事もできないし。

 痒みと奮闘しながら歩いていた時だった。

「おぉっ。川だ!」

 草むらの向こうに川が見えた。助かった。足もパンパンになってきたところだった。

「透き通った綺麗な川だな。」

 着いた事で気が緩んでいたのかも知れない。私は、気にする事なく水を手にすくい飲んだのである。

「うまいっ。生き返る…」

 私は疲れた身体を休めるため、少し離れた軽く隠れられそうな木に背中を預けた。

 私は気づいてなかったのだ。川の水が安全なんて…


「キュ…キュルルッ…ギュルルル…」

 

 この世界での初めての戦闘は…腹痛であった。

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