第2話 知ってるような知らない部屋

「うぅ…ん゛…!」

 目を開けると、白かった。

「うわ! 痛っ! なんだ!」

 急な視界に加え、床に寝転んでいたらしい自分、驚いて動いた身体を打ちつけた。そしてようやく整理をはじめた。

 「なんだよ…これ…」

 身体を起こし見渡す。何もない白い部屋。そう、私は白い部屋にいた。映画で観たような、小説や漫画で見たような場所。

 不思議な事に部屋だと認識し、混乱や発狂もしない。むしろ、少し期待しだした自分がいた。

「もしかしたら、もしかしてなのか?」

 恐怖などはどこかに忘れた私は、しきりに辺りを観察。キズ一つない白い部屋、扉も窓もない、机もお約束の人影の気配もない。

 気づいてから体感で、1・2時間は経ったと思う。

「いや…なんも起きない…いまさら夢とかないだろ…」

 色々状況を確認。

「意識というか、気ははっきりしてる。痛みも感じるし夢ではないと思うんだけどなぁ」

 手には何も持っていないし、服も休みの日のシャツにストレッチパンツといういつものコーデ。

 胸ポケットに吸いかけのタバコとライターが入っていたくらい。

 カチッ 

「ふぅ…」

 完全に落ち着いたのか、逃避しだしたのかいつものように吸い始めた。

「ほんと訳がわからんな…そもそも死んだのか?ガス爆発?…ないな。病気…身に覚えもないし、健康診断は、聴力がちょっと…って、老化の範囲だったか。」

 あれこれブツブツ言ってると、ふと目に入る。

「ん?…なんだ?」

 何もなかった壁に、文字が書いてあった。


【モウシワケアリマセン マチガエテヨビマシタ】

 

 !!!

「いっ…おっ…何!」

 ここに来て一番のパニック。

「え…えっ。どうなるんですか!私は…これから、死ぬ?戻る?教えて下さい!」

 対話出来るかと思ったからか、進展があったからなのか、私は焦り出した。


【シンデハイマセン モドレマセン イナカッタコトニナッテル コレカラアナタハテンイスル コトナルセカイニ】


「お…お!転移! 異世界…? まさかの!」

 年甲斐もなくテンションが上がるおっさん。

「えーとっ、スキル?特技というのか、魔法か…そういうのは貰えるんですか?」

 気持ちがはやる。ただ悲しいかな、おっさんである。 


【ワタシニソンナチカラハナイ コトバ モジ カラダ アチラニアワセルダケ ジカンナイ オクル デキルナラ ナガクイキテホシイ】


 視界が、急に光で溢れていく…

「そっ!そんっ…な!…」

 アラフォーおっさん、異世界に転移。


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