糸の重なり
陰陽由実
糸の重なり
その子と会ったのは、小学校に上がってからだった。
その小学校では地区によってグループ分けがされており、グループごとに決まった色が定められていた。そしてその色の子たちで集まって集団下校する決まりだった。
生徒数が多くない、小さな小学校であったため、グループの人数も多くない。
集団下校は大体週1ペースで行われていた。学年によって授業数が違うためだろう。それでも週1で集団下校をする頻度としては高いように思っていた。
そのグループの中で、その子は同じ学年で唯一同じ女の子だった。
もはや道理というか、その子とはすぐに仲良くなった。
どういう経緯で仲良くなったのかはよく覚えてないが、その子のことを「はーちゃん」と呼ぶようになった。
同じグループなのだから家が近いのは当然で、毎日のようにお互いの家に行き来していた。
もっぱら、はーちゃんの家に私が行くことの方が多かったのだが。
はーちゃんの家ではテレビゲームをしたり、夏には一緒にかき氷を食べたりした。
家の外で遊ぶことも多かった。
近くの公園の砂場で2人で穴を掘ることに一時期夢中になっていた。
穴を掘っていたら砂場道具を発掘し、目を白黒していたらはーちゃん家の姉の無くし物だったり、夢中になって時間を忘れて、気がつけば門限を盛大に破ってしまい、1週間ほど遊びに行けなくなったことは、今ではいい思い出だ。
そんなはーちゃんと過ごしたのは1年半ほど。
私の家が引っ越しをすることになったからだ。
はーちゃんからかわいい小物とネックレス、そして手紙をもらった。はーちゃんの姉からも手紙をもらった。
今では連絡先を知らないので、会って話すことができない。
いつか出会いたい。再開したい。
しかし、自分から探して会いに行ってまで伝えたいこともない。
小学校低学年の頃の、1年半程度の思い出だ。もし彼女が私のことを忘れていたとしても不思議ではない。
しかし、また出会うことが叶ったなら。
私は、あなたに何を伝えようか。
糸の重なり 陰陽由実 @tukisizukusakura
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます