第2回


 少しして振り返ると彼女の姿はなかった。どこで曲がったのだろう。彼女は海の方に住んでいるのだろうか。そこで僕は、彼女がうちの学校の制服を着ていたのに、一度も見かけたことがないと気づいた。


 なんとなくそわそわしてしまって、めずらしくコンビニに寄った。入ってすぐに気づいたのだが、レジの店員が中学の同級生だった。インスタのストーリーでは毎日のように見ていたけれど、実際に見かけたのは、卒業して以来だった。腰近くまで伸びた長い髪のイメージだったのだが、今彼女はモダンな感じのショートカットにしていて、風を切って走る新幹線の先頭車両を連想させた。しばらく悩んでからアイスの実をもっていった。何か話しかけられるかと思って身構えていたのだが、彼女は僕に気づいていないようだった。

 駐車場のゴミ箱の近くでアイスを食べていたら、向こうから遠藤が歩いてきた。

 「あれ?部活は?」と僕は声をかけた。

 「先生が出張になって、なくなったわ」

 「あ、そう。明日は?」

 「ふつーにあると思う」

 「オッケー」と言いながら、アイスのゴミを捨てて、遠藤に追いつく。遠藤はサッカー部に入っている。サッカーには詳しくないので、話題には上らないが、けっこう上手い方らしかった。そういえば、この間うちのクラスの女子から遠藤が同じクラスの女子──《たしか「み」から始まる名前なんだよね》とうちのクラスの女子は言っていた──と付き合っている噂を確かめておいてほしいと言われていたことを思い出した。もうちょっと時間のある時に訊こうと思った。

 やがて、いつも遠藤と別れるY字路まで来た。うちとは逆方向の道を歩いていく遠藤を見送りながら、コンビニで働いていた同級生の名前を訊けばよかったと思った。

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