両親

 二人でベットに腰掛け俺は目黒さん手当てをしていた。

「...よし!これで処置完了かな?」

 取り合えず切り傷には消毒と絆創膏を。

 内出血には湿布を張った。

「...なんで、ここまでしてくれるの?」

「何でなのかな?俺も分かんないや」

 理由なんて特にない。

 強いて言えばクラスメートが酷い目に合うのは胸糞悪い、それだけだ。

「なにそれ」

 目黒さんはくすっとはにかんだ。

 ...いつも教室で見る顔だ。

 こんな笑顔も出来る人がなぜこのような目に合っているのだろうか。

「失礼だったらごめん。全然、答えなくても良いんだけどさ...その傷なに?明らかに不注意とかスポーツによる物ではないよね?」

 目黒さんは一瞬顔を強張らせたがすぐに作り笑顔をし、改めてこちらを見つめてきた。

「...やっぱり、気になるよね。でも、私が悪いの...私の出来が悪いからお母さん達怒っちゃうんだよ」

 つまり親からされたのだろう。

 これは立派な虐待だ。

「...そっか」

「...うわーごめん!なんか変な空気になっちゃったね」

 目黒さんは取り繕うかのようにあははと笑ってみせた。

「そ、そう合えば...内田ってここ一人暮らしなの?」

「うん」

 一人暮らしを初めてもうはや1年と数ヶ月である。

「...ご、ごめん。勢いで聞いちゃったけど大丈夫なヤツだった?」

 目黒さんは少し気まずそうにしている。

「全然大丈夫だよ」

 目黒さんは打ち明けてくれたのだ。

 俺も言うべきであろう。

「俺、両親と仲悪くて縁を切ったんだよね」

 と言っても目黒さんみたいに直接的な暴力を受けたのはほんの数回。

 しかも傷も残らない程度のもの。

 目黒さんに比べたら俺のなど何でもないだろう。

 それから目黒さんは少しゆっくりしていき午後10時前には家を去っていったのだった。

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