第29話 初めてのレベル上げ⑦
「……よし、帰ろうか!」
「えぇっ!?」
「今考えてもわからないことは、より多くの知識を用いて考えるべきだ!」
「いや、それはそうなんだけど……わかった、戻ろうか」
グウェインはあまり納得していないようだったが、わからないものは仕方がない。
それに、俺の場合はレベルが1しか上がらなかったことに加えて気になっていることがある。
まさか、ブルファングの倒し方を鑑定してくれるなんて思いもしなかった。
さすがに万能すぎて何か裏があるんじゃないかと疑いたくなってくるな、鑑定士【神眼】。
……あれ? もしかして、レベルアップに関しても鑑定できるんじゃないのか?
「……鑑定、レベル3に上がる方法」
こっそりと鑑定スキルを使ってみる。
すると、思った通りでディスプレイ画面に案内が表示された。
「おぉっ! ……はあ?」
「ど、どうしたの、トウリ?」
俺はレベル上げの方法が表示されたことに驚き、そして内容に目を通して落胆してしまう。
そんな一喜一憂の呟つぶやきにグウェインが心配になったのか声を掛けてきた。
「えっとー……レベル上げの方法が鑑定できた」
「……えぇっ!!」
「だけど、ブルファング五〇匹討伐とか異常な数が表示されていて困惑もしている」
「……はい? ご、五〇匹?」
グウェインの反応を見るに、やはりレベル3に上がるためにブルファング五〇匹討伐はおかしな数字なのだろう。
それに、レベルが上がったものの能力値も5や10だったのが、筋力と耐久力が10、速さが20 、魔力と器用が30とそこまで上がっていない。
魔力が30に上がったのは鑑定を多く使えるのでありがたいが、この能力値でブルファングを五〇匹討伐するのは結構な労力を掛ける必要が出てくる。
今すぐにできる数字でもないし、俺の判断は結局——
「……帰ろう」
「……そ、そうだね。今日はひとまず帰って、姉さんに報告しようかな」
俺が肩を大きく落として歩き出すと、その肩をポンと叩いたグウェインが隣に並んでくれた。
……くっ! 泣いてなんか、いないんだからな!
※※※
昼を少し回ったくらいの時間に屋敷へ到着すると、アリーシャは少しだけ驚いていた。
「もう戻ってきたんですか?」
「あはは。……まあ、色々と事情がありまして」
俺の様子が気になったのか、アリーシャは心配そうな表情でグウェインを見る。
「あー、立ち話もなんだしリビングで話をしようか。それか、昼食を食べながらとか?」
「あっ! それならお昼ご飯の準備はできています! トウリさん、一緒に食べませんか?」
「……食べます。これはもう、やけ食いだ!」
「そ、そこまでの量はないんですけど」
「……はい、すみません。普通に食べます」
昨日の今日で色々とありすぎて、少しだけ自暴自棄になっていたかもしれない。
気持ちを落ち着かせながら席に着くと、ほどなくしてアリーシャが料理を運んできてくれた。
「……ありがとう、アリーシャ」
「どういたしまして。それで、何があったんですか?」
料理が全員に行き渡ると、俺はヌメルインセクトからのブルファングを討伐した流れや、鑑定スキルでレベル上げの方法がわかったことも含めて、ブルファング五〇匹事件について説明した。
これはもう事件だよ、事件! 五〇匹とか、絶対にあり得ないだろう!
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