第27話 初めてのレベル上げ⑤
「……えっ?
「来るよ、トウリ!」
「あ、あぁ」
『キュイイシャアアアアッ!』
六本足を
しかし、ディスプレイ画面の表示が正しければ、俺はこの場から動かなくても大丈夫なはずだ。
「はあっ!」
『キュシャアアアアッ!』
前の二本足を振り上げて襲い掛かってきたヌメルインセクトに対して、グウェインが直剣を振り抜き両断する。
前足が地面に落ちると、ビシャッと音を立てて半透明だった液体が
これが今回の戦闘において大事なものになってくる……らしい。
ただ、俺としては一歩も動いていないのにどうもなっていないので、この表示は正しいようだ。
「ちょっと、トウリ! 今は、逃げてくれないかな!」
「あー……たぶん大丈夫だよ」
「ど、どこからそんな自信が出てくる——」
『フゴオオオオオオオオォォッ!!』
おぉ、本当に突っ込んできたよ、ブルファング。
「はあっ!? いや、ちょっと待って! これはさすがに僕じゃあ無理だよ!」
ヌメルインセクトの相手をしながら、さらにブルファングが乱入してきたことで、グウェインの声は焦りに焦っている。
「グウェイン、ちょっとこっちに下がって」
「今はそれどころじゃないんだって!」
「いいから下がって!」
「くっ! ……わかったよ!」
三本目と四本目の足を斬り捨てたグウェインは、大きく飛び退の いて俺の横に着地する。
「トウリ! どういうことなのさ、早く逃げないとヤバいんだって!」
「だから大丈夫なんだよ。あのブルファングの狙いは——ヌメルインセクトなんだから」
「どうしてそれがわかるのさ! そうじゃなかったらこっちに……って、来ない?」
最初から大丈夫だと言っているじゃないか。
まあ、グウェインとしては俺を守らないといけないし、焦る気持ちもわかる。
そもそも、この表示も鑑定士【神眼】が関わっているんだろうし、普通の鑑定スキルではここまで出てこないんだろうなぁ。
『フゴオオオオォォッ!』
『キュイシャアアアアァァッ!』
お互いに
俺たちはゆっくりと後退しながら、二匹の様子に視線を向けていた。
そして、ブルファングが鼻息を荒くしながら突っ込んでいくと、ヌメルインセクトは短くなった前四本の足で拘束しに掛かる。
お互いの体に最初に触れたのはヌメルインセクトだった。
しかし、ブルファングの突進を止めることはできず、そして低い耐久力では耐えることもできず、ヌメルインセクトの胴体が一撃で半分になってしまい全身の液体が飛び散っていく。
「おぉぉーっ! ブルファング、強くないか?」
「そ、そんな悠長に感想を言っている場合じゃないって! こうなったら今度はこっちに——」
「大丈夫、見ていろよ」
俺が自信たっぷりにそう口にしたからか、グウェインは警戒しながらも残ったブルファングの様子を見つめている。
そのブルファングだが、次の獲物はお前たちだと言わんばかりに鼻息を荒くし、目を真っ赤にさせながら
「……ほ、本当に大丈夫なんだよね、トウリ?」
「あぁ……たぶんだけど」
「たぶんなの!?」
『フゴオオオオオオオオォォッ!』
「き、来たんだけどおっ!!」
ギュッと直剣を握り直したグウェインが俺を守るようにして前に出る。
段々と迫ってくるブルファングを見て、さすがに俺も怖くなってきた。
だけど、魔の森で何度も助けられた鑑定スキルを信じるのだと俺は決めたのだ。
ゴクリと唾を飲み込み、表示されたその時を待っていると——俺は目を見開いた。
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