第26話 初めてのレベル上げ④

※※※


 本日は二度目のレベル上げとなる。

 すでに北の草原に到着しており、俺は鑑定スキルでヌメルインセクトを鑑定していた。

「……ん? 沼地にいるみたいだな」

「本当に便利だね。ヌメルインセクトは生息地が判明していて、沼地を縄張りにしているんだ」

 ということは、鑑定スキルを使わなくてもよかったのでは?

 俺の気持ちが通じたのか、グウェインは苦笑いを浮かべながら口を開いた。

「いや、生息地がわかっているとはいえ、沼地も広いし探すのには時間が掛かるんだよ。魔獣を探すのに時間を掛けるのは勿体もったいないかなって思ったんだ」

「……本当かぁ?」

「ほ、本当だよ! そうじゃないと、鑑定スキルを使わせないから!」

 ……まあ、そこまで必死に言うならそうなんだろう。

 俺たちがマップの案内に従いながら進んでいくと、草原を抜けて林に入っていった。

 この先に沼地があるはずだが……あぁ、あったな。

 グウェインが言ったように結構な広さがあり、ここから一匹の魔獣を探すとなると骨が折れそうで、鑑定スキルを使ってほしい気持ちもわかる。

 俺は先頭をグウェインに譲り、後方からヌメルインセクトがいる場所を教えていく。

 しばらく進むと、沼地を挟んだ奥の林がガサガサと音を立てた。

「……いるよ、トウリ」

「……あぁ。俺も見つけた。しかしあれは、確かにグロいなぁ」

 六本足で蜘蛛くものような見た目であり、体の表面を半透明な水色の膜が覆っている。

 その大きさは足を広げた全長が三メトルくらいになるだろうか、それに地面をうようにして動いているんだけど高さが一メトルくらいある。

 ……こいつ、本当にブルファングよりも弱いのか?

「ヌメルインセクトの方がでかくないか?」

「大きさはそうだけど、耐久力が低いからね。トウリの筋力でも十分に倒せるはずさ」

 それならいいんだけど……まあ、グウェインの指示に従っていたら問題ないだろう。

「そうそう、僕が攻撃をすると一撃で死んじゃうと思うから、トウリが攻撃してね」

「……はあっ!? いや、ちょっと待て! それはさすがにヤバいだろう!」

 相手の耐久力が低いとはいえ、それはこちらも同じである。

 一撃でも攻撃を受けたら俺なんて即死だぞ!

「僕が攻撃を防ぐから、隙を突いてトウリが攻撃してくれ」

「それならまあ……大丈夫なのか?」

 とはいえ、さすがに何も知らないままであの巨体の前に立つのは勇気がいる。

 せめて何か攻略法というか、こうしたらいいという指示は欲しいところだ。

「……鑑定スキルでそういうのもわかればいいんだけどなぁ」

 俺がそう口にすると——突然ディスプレイ画面が目の前に現れた。

「うわっ!」

「ちょっと、トウリ!」

『キュイシャア?』

 ヤバい、気づかれたか!

「何をしているんだよ! すぐに剣を構えて!」

「いや、だって、いきなりディスプレイ画面が!」

『キュイイシャアアアアッ!』

 くそっ! 説明している時間がないじゃないか!

 仕方なく剣を抜いてグウェインの後ろに立つ。

 しかし、ヌメルインセクトもこちらを様子見しているのかすぐに襲い掛かってくる様子はない。

 ならばと俺は、警戒しながらもディスプレイ画面に目を落とす。

 そこに書かれていた内容を見て、俺は呆気あっけに取られてしまった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る