第17話 本当によくある勇者召喚⑯
「「——も、申し訳ございませんでした!」」
お昼ご飯の時間になると二人から
「俺も信じてもらうためとはいえ
防衛都市と呼ばれているとはいえ、あくまでも魔の森から溢れてくる魔獣に対処するために築かれた都市であって、調査を目的とした都市ではない。
そして、魔の森は必然的に謎が多い場所として世界に認知されているのだとか。
「魔の森から溢れてくる魔獣は、縄張り争いに敗れた個体です。それでもレベルが高く私たちの脅威になることには変わりありません」
「ですから、グランザウォールを拠点に動いてくれている冒険者のレベルも高いんですが、それでも魔の森に自ら足を踏み入れようとする者はいないんですよ」
それもそうだろう。レベルが50や60が当たり前の魔の森に行こうなんて普通は考えないか。能力値も桁違いだったし、マジで生き残れたのが奇跡だもんな。
それにしても、レベル上位の魔獣は鑑定できないかぁ。……できちゃったんだよなぁ。
鑑定スキルのレベルが低ければ強い魔獣や貴重な素材を鑑定することができないってのが、世間一般の常識なんだろう。この辺もラノベとかに出てくる鑑定スキルと似たようなものだな。
「しかし、一時的とはいえ能力値が上がる果物なんて、聞いたことがありませんよ」
「だからこそ、情報を出すかどうかは気をつけないといけないね」
「どうして? 情報を出した方が活動しやすくなるんじゃないの?」
これが世間に出回れば冒険者も動きやすくなるだろうし、何より魔の森の調査を国の主導で行ってくれるのではないかと思ったのだが、どうやらそう簡単ではないらしい。
「国が動けば人が動く。人が動けば物資が動く。でも、グランザウォールには物資もなければ大量の人を受け入れる施設もない」
「それに、情報なんてものは一度外に出てしまうと一気に広まるものだからね。自分の実力を過信して、魔の森に突っ込んでいく冒険者が出てこないとも限らない」
「……そっか。そしたら死人が増えてしまって、それが抑止力となり結局国も動かなくなるかもしれないってことか?」
「冒険者の命くらいで国が及び腰になるとは思わないけど、可能性はゼロではないかな」
「それに、これが他国に漏れた時が一番怖いですね。ですから、情報を出すにもどこに出すのか、どのようにして伝えるのかが大事になってくるんです」
人の口に戸は立てられないとはよく言うけど、どこの世界でも変わらないんだな。
「うーん、それだと俺が二人のためにできることがないんだよなぁ」
「「……ん?」」
「……えっ?」
いや、なんでそこで疑問形なんでしょうか。これだけお世話になっているんだからお返しをした
いに決まっているんですけど。
「だって、追い返されそうになったところを助けてもらって、さらに泊めてもらって食事まで食べさせてもらったんだよ? 俺にできることがあれば何か返したいんだよね」
「ですが、私はご先祖様と同じ異世界人であるマヒロさんを助けたかっただけです。これは、私がやりたくてやっただけなんですよ」
「僕もそうだよ。それに、トウリと仲良くなりたかったからね」
二人は何もいらないと言うけれど、それでもできることはやってあげたい。
「そうだなぁ……あっ! それじゃあ、俺は冒険者としてここで活動しようかな!」
「いや、それは……」
「
「えっと、どうして?」
俺が首を傾げると二人は同時にこう答えた。
「「レベル1だから」」
「……あー、そうですか」
まあ、レベル1の冒険者なんて聞いたことがないのかもしれないな。それに、鑑定士が冒険者になるのも普通ではないのかもしれないし。
それでも俺は二人の助けになりたいという感情とは別に、この世界を満喫したいという感情も持っている。冒険者になるというのはその一つの手段なのだ。
「それじゃあ、レベルを上げれば問題ないですか?」
「ですが、鑑定士ですからねぇ」
「……いや、もしかしたら可能かもしれないよ、姉さん」
「どういうことだ、グウェイン?」
アリーシャさんとは対照的な意見に、俺は
そして、その答えは俺の望みを
「だって——異世界人だったご先祖様の職業も元は鑑定士だったんだから」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます