第15話 本当によくある勇者召喚⑭
——……ズズズズゥゥ。
俺は、心なしか満足げな表情を浮かべながら戻ってきたアリーシャさんが
グウェインはどうしたのかと聞いても、気にするなの一点張りだったのでこれ以上は聞かないことにした。
その代わりといってはなんだが、俺のスキルを使って二人の役に立てないかと相談してみた。
「マヒロさんの鑑定は確実に役に立つのですが、あまり広めない方がいいんですよね」
「……確かにその通りですね」
使い方を間違えれば、確実に悪い連中に狙われてしまいそうだもんなぁ。
「なので、しばらくは私かグウェインと行動を共にしてもらうことになります」
「それはありがたいんですが、いいんですか? 領主ってことは、忙しいですよね?」
心配になり声を掛けたのだが、アリーシャさんは笑いながら問題ないと口にした。
「領主とはいっても、毎日忙しいわけではありませんし、グウェインと交代しながらなら問題ありませんよ」
「そうは言っても、グウェインにも仕事があるでしょう?」
「そうですが……仕方がありません。気は進みませんが、グウェインもまた呼びますか」
……いや、マジでどうなったんだよ、グウェインは。
部屋を出ていったアリーシャが戻ってくると、その後ろから
……あー、うん。いくら姉弟でも、そうなるわな。
俺は無言のまま視線をアリーシャさんに移したのだが、ニコニコと笑うだけで何も口にしない。
そっちの方が怖いと思ってしまったが、俺からも何も言わない方がいい気がしたので黙っておこう。
「……そ、それで、さっきの話なんだけど」
俺は本題にそのまま入るべく、二人のうちのどちらかが同行するという話題を持ち出した。
「僕は全然構わないよ。むしろ、その方が安全だし大賛成」
「アリーシャさんは領主だけど、グウェインは何をしているんだ?」
「僕かい? 僕はグランザウォールの兵士さ。そこで副兵士長を務めているんだ」
「副兵士長!? ……それって、重要なポジションなんじゃないのか?」
「まあ、僕の場合は領主の弟って肩書きのせいでこのポジションになっているだけで、ほとんどが他の兵士たちとなんら変わらないことをしているんだよ」
「……コネ?」
「はっきり言われると答えにくいんだけど、そんな感じかな」
あははーっと笑いながら言っているが、領主や貴族ならそんなこと当然なんだろうなぁ。
「でも、グウェインの場合は職業も中級職の銀級騎士ですし、実力も副兵士長の肩書きに十分なものを持っているんですよ!」
俺がコネと言ったからだろうか、頬に張り手を残したであろう張本人のアリーシャさんがグウェインを
「えっと、なんかごめん?」
「いやいや、事実だから気にしないで」
それにしても、銀級騎士……騎士ってことは、戦闘職だよなぁ。
「いいなぁ、戦闘職。俺も戦闘職だったら、レベルを上げられたんだろうなぁ」
「そういえば、マヒロさんのレベルはいくつなのですか?」
「レベルは1ですよ」
……あれ? そこで二人ともなんで黙るんだろう。
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