第4話 本当によくある勇者召喚③
※※※
——そして、今に至るわけだ。
いやー、最初はどうしようか本当に焦ったよ。シュリーデン国が魔獣の脅威に晒さらされていて、それを助けてもらうために勇者召喚をしたって言っていたからな。
ここがどこだかわからず、聞いたことのない
……っていうかさぁ、いらないなりにもっと別の捨て方があるでしょうよ。追放するにしても安全なところに放り出してくれたら好きに生きるっての。
まあ、俺なんかいなくなってもシュリーデン国からすればどうってことないんだろうけどさ。
「それにしても鑑定士【神眼】、めっちゃ役に立つけど本当に初級職なのか?」
俺が思い描いていた鑑定士は、鑑定する品を見てスキルを発動することで名前や状態を把握する、そんなスキルだった。
もちろん、思っていた通りの能力もあるんだけど、さらに良い方向へ予想外の能力もあったんだ。
「鑑定、食べられる果物」
鑑定スキル発動のためにそう口にすると、右目にモノクルのようなものが現れて鑑定が始まる。
抽象的な言葉を口にしただけなのだが、モノクルが現れてからしばらくすると、ディスプレイ画面には『食べられる果物』がどこにあるかというマップ案内が表示された。
こうして先ほど食べていたような果物を見つけ、同様に『危険な魔獣』という言葉で鑑定を掛けて魔獣の位置を把握しながらこの森の中で生き延びている。
俺自身にもレベルがあり魔獣を倒せば上がっていくんだろうけど、一人では魔獣と戦う術すべを持っていないのでいまだにレベル1のまま。
この森には俺でも倒せそうな弱い魔獣がいないので、どうしたものかと考えているうちに数日が経過したのだ。
「食べるだけで能力が上がるようなものがあればいいんだけどなぁ」
力の実とか、速さの実的な、そんなものが。
……ちょっと、鑑定してみようかな。
「鑑定、能力が上がる食べ物」
……出ないかぁ。まあ、そんな都合よく出てくるわけないよな。
「……か、鑑定、一時的に能力が上がる食べ物」
ちょっとだけ内容を変えてみました。
まあ、そんなんで出てくるはずが……えっ……おいおい、まさか、マジかよ!
「案内が、出た!」
一時的ならあるのかよ! さっきだって永続的になんて限定はしてなかったよ!
なんでもっと早くに気づかなかったんだ。能力が上がるなら、逃げるなり何なりしてやりようはあるだろうに!
俺は魔獣に注意しながら案内に従って森の中を進んでいく。
色々と鑑定してわかったことだが、この世界の距離の単位は体感的に日本とさほど変わらない。
1キロが1ミロ、1メートルが1メトル、1センチが1セルチである。
他の単位も近い感覚であれば、楽に覚えられるんだけどなぁ。
そんなことよりも目的の場所が近づいてきた。……1ミロ……500メトル……200メトル……そして——ついに辿たどり着いた。
「……おぉ……これが……一時的に能力が上がる食べ物か!」
そこには、大きく実った果物が大量にぶら下がった大木が存在していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます