第3話 本当によくある勇者召喚②
顔を上げてどよめきが起きた方に視線を向けると……あぁ、生徒会長か。
周囲の騎士っぽい人たちからも歓声があがり、生徒会長もまんざらではなさそうな顔をしている。
そして、すぐに他の生徒たちの職業も判明していく。
副会長が賢者、剣道部主将が剣聖、陸上部主将が拳王、このあたりが最も騒がれていた職業で、勇者を含めたこの四つは特級職と呼ばれる特別な職業なんだとか。
それ以外だと上級職、中級職、下級職、そして底辺の初級職。
どうやら他の生徒も大半が上級職で、低くても中級職だとわかって広間は大騒ぎだ。
「……あのー」
これなら俺の職業である鑑定士【神眼】も期待できると手を挙げてみた。
「おぉっ! お主にはまだ聞いていなかったな。して、職業は何なのだ?」
「えっと、俺の職業は鑑定士です。その後ろに——」
「か、鑑定士じゃと!?」
……あ、あれ? なんか、予想外の反応なんですが。
王様が驚きの声をあげると数秒だけ沈黙が続き、そしてドッと笑い声が広がった。
「……えっと、何事?」
俺が困惑している中、王様が手を上げると笑い声は一斉に止や んだ。
そして、次に口を開いたのは王様ではなく銀髪の男性だった。
「あなたの職業である鑑定士は——初級職です。底辺の……初級職、なんです……ぶははっ!」
そう口にすると口元を手で隠し、笑いを堪こらえようとしているが堪えきれていない。
説明するだけでも笑ってしまうのかと少しだけ悔しかったが、【神眼】のことを伝えれば態度も一変するはずだ。
「あの、その鑑定士の文字の後ろに——」
「あー、もうよい、お主は
「いや、ですから文字の後ろに括弧が付いて——」
「誰か! 奴を
「いぃっ!? わ、わかりました、黙りますよ! もう何も喋りませんから!」
兵士に剣を抜かれて囲まれてしまったので、俺は【神眼】について聞くことができなかった。
クラスメイトが何やらこそこそと話をしているのが見えたが、あれは絶対に悪口である。まあ、俺だけ初級職だとわかればそうなるのも無理はない。
この時の俺は鑑定士という職業に期待していた分、落胆も大きかった。
職業に差があれば扱いにも差が生まれてしまう。
全員の職業が確認されると特級職の四名、上級職と中級職の二六名は広間を出て右へと案内されたのだが、初級職の俺だけは左に案内された。
「ちょっと! どうして
そう進言してくれたのは数学の先生だ。
「落ち着いてください、ハルカ様。こちら側の部屋が足りないだけですから」
そうそう、
「なら私がそちらに行きます! 生徒一人だけが離れてしまうなんて考えられません!」
「いいえ、ハルカ様。鑑定士の彼はあちらの部屋になるのです」
……これ、絶対に何かあるだろ。まさか暗殺されるとかないよな。
「……大丈夫ですよ、先生」
「だけど真広君!」
「俺は初級職で、みんなと一緒にいられないってだけですから」
「彼もこう言っているのです、時間もありませんから」
「……私は、納得していませんからね!」
秋ヶ瀬先生は優しい先生なんだよなぁ。
……まあ、そういうあなたの職業は上級職の
ただし、クラスメイトは俺に冷ややかな視線を向けている。ああはなりたくない、そんな視線だ。
そんな中にも心配そうに見つめる視線もあったが、俺はそれを無視することにした。
これ以上ここにいたら剣で突っつかれて無理やり連れていかれそうだしな。
そうしてみんなと別れた俺が連れていかれた先は、意外にも普通の部屋だった。
みんなはもっと豪華な部屋でくつろいでいるんだろうなと思いながらベッドに触れると……うん、前言撤回だ。
「
指で
こんなところでくつろげるわけがないだろうとため息をつこうとした——その時だった。
「うえぇっ!」
教室にいた時と同じ真っ白な光が部屋の中にも現れると、部屋を中心に円状に放たれている。
「暗殺とかじゃないからよかったけど、これって絶対——」
どっか危ないところに放り出されるよねええええええええぇぇぇぇ……——
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