第54話 先輩の誘惑
姉ちゃんから鏡先輩に会って欲しいというお願いが有った翌々日の夜、紗耶香から連絡が有った。
「明人、明日も一緒に居たいけど、ちょっと体調が悪くて」
「大丈夫?」
「うん、ごめん。言い辛いんだけど月の物なの」
「そ、そっか。じゃあ仕方ないね」
「うん、体調戻ったら連絡する」
「分かった」
私一条紗耶香は心配していた。あの時あいつは付けていなかった。一瞬だけあいつのものを感じた。だからもしかしたらと思ったけど少し遅れたけど来てくれた。良かった。
思い出してしまう。あの時の事を。初め抵抗したが、強い力で抑えられてどうしようも無かった。こっちが抵抗すればするほどあいつは激しくなった。絶対に声を出さなかった。我慢した。もし声を出したら明人を裏切る事になる。
私が我慢していると凄まじくして来た。はっきり言って我慢するのがきつかった。でも声を出す訳にはいかなかった。もし一言声を出したらなし崩しになる。そんな怖さがあったからだ。
本当は明人に抱いて欲しい。でも私は別の怖さを思ってしまう。あいつにされた後直ぐに明人にして貰った。夢中だった。けど、今は別の感情もある。もし明人にして貰って前の様に感じなかったら。
怖い、怖すぎる。それに明人は今躊躇している。私に。仕方ない。だから明人がもう一度、私にあの事を忘れされてくれる位激しく抱いてくれるまで待つしかない。でも苦しい。本当は…………。
………………。
私鏡京子は水森君から連絡が有った次の日直ぐに会う事にした。彼が会えると言って来たという事は多分ピンポイントだからだろう。
ふふっ、今日は水森君いえ明人君と二人だけで会う日。思い切り彼に私を見て貰う為お化粧して洋服を選んでいる。
会う場所は、有名なデパートがある街。彼の家からはちょっと遠いけどね。
会う時間は午前十時。少し早めに行った方が良いけどつまらないイベントが待っている可能性が高いから待合せぎりぎりで行く事にしている。
そして待ち合わせの時間
あっ、鏡先輩がホームから降りて来た。行きかう人があの人を見ている。高校の時はほとんどお化粧なんかしていなかったら分からなかったけど凄い。どう表現して良いか分からないけどとても綺麗でスタイルが抜群だ。
ふふっ、明人君が改札を出た所で待っていてくれる。白のTシャツにマリンブルーのコットンパンツ、黒のスニーカーか。さっぱりした感じでいいわ。
私は改札を出ると
「明人君、こんにちわ。久しぶりね」
「…あっ、はい。お久しぶりです」
なんなんだこの人。今ここにいても周りの人の視線が凄い。俺この人と会う約束したっけ?
「どうしたのあ・き・と・く・ん」
「あっ、いや」
ふふっ、顔が赤いわ。可愛い♡。
「どこ行こうか♡」
「えっ、…いや姉ちゃんが会ってくれって言われたから」
「ふふっ、そうなの?じゃあ私が行きたいところでいい?」
「あっ、はい」
私は決めていた。私は普段東京にいる。それだけに私の印象を彼の心の中にしっかりと埋め込まなくてはいけないことを。
だから無謀かもしれないけど今日一日で勝負をつけると。例え決定的にならなくても彼の心の中で一条さんという子と同じレベルまで上がる。
鏡先輩に手を引かれて連れて来られた所は、
「えっ、ここって」
「君が私にどこでも良いって言ってくれたから。いけなかった?」
「で、でも」
「いいじゃない。終わったらご飯食べよ」
本当は初めてなんだけどこの子なら何とかしてくれる。
部屋に入ったけど、どうすればいいか分からないから仕方ない。
「うおっ!」
いきなり頭からタオルを被らされた。
「流石に初めてなのに見られてもね。ちょっと我慢して」
「へっ?」
「いいわ」
「…………」
「タオル取りなさいよ」
強引に彼からタオルを取った。
「えっ!」
俺の前に立っている人(女性)は顔を真っ赤にして布一つまとわずに俺にその素敵な姿を見せていた。
俺は思い切り顔を横に向けて
「ちょっ、ちょっと何しているんですか」
「ふふっ、こうしているのよ」
先輩は俺に思い切り抱き着いて来て唇を奪った。そして俺の手を何も付けていない胸に持って行くと耳元で
「ねえ、十九才の女の子が、自分が本当に一生尽くしたいと思っている男の子にこうして全てを曝け出しているのよ。それも初めてを」
確かに先輩の言う通りだ。この人が歩けば万人が振り向く容姿。その体は完璧と言って良いほど綺麗で抜群のスタイルだ。その人が何も身に着けずに俺に抱き着いて来ている。
流石に理性が飛びそうだ。
「せ、先輩。冗談言わないで下さいよ。俺なんか」
「私が君に全てを捧げたいと言っているの。ねえ、寒いわ。お願い」
………………。
噂では聞いていたけどそんなでも無かったな。でも手と口だけでこんなに翻弄されるなんて。
あっ、また。駄目、駄目。何この感覚。明人…。
目が覚めた。生暖かい柔らかい物が俺の側にある。チラッと見た。信じられない位綺麗な人が横で目を閉じている。
あーっ、やっちまった。どうしよう。でもこんな素敵な人が何も着けずに来たら無理だよな。
でもどうしよう。人生始めての失敗だよ。あっ、先輩が目を開けた。いきなり抱き着かれた。
「ふふふっ、明人君、思い切り痛かったんだから責任取ってくれるよね」
本当は気持ち良かったけど。
「せ、責任って?」
「難しい事じゃないわ。私の彼になって♡」
「いやでも俺は…」
「言わないの。それ以上は。今は私の事だけ思って」
唇を合わせて来た。あっ、先輩そんなとこ触ったら。
ふふっ、最初は痛かったけど結構気持ちいいものね。あれも飲んであるし。この子の全部吸い取ってあげる。
でも、
「あ、明人君、そろそろ」
「先輩がいけないんです」
「えーっ!」
彼は目を閉じていた。ヘッドサイドの時計を見るともう午後三時。六時間もこの子に。
でもいいわ。これで少なくても私を無視する事は無くなったから。
今だから言うけど明人、私の好みなの。離さないからね。あっ、彼が目を開けた。
「先輩」
「もう京子って呼んでくれてもいいでしょ」
「いやそれは」
「じゃあ、こうしちゃう」
思い切り唇を胸で塞がれた。息出来ないよ。
「わっ、分かりました。京子さん。あのお腹すきません?」
信じられない。私をここまで翻弄しておきながら、お腹すきませんか。ふふっ、だからあなたを好きになったよ。
先輩とホテルを出たのは午後四時を過ぎていた。
「先輩、大丈夫ですか。歩き方おかしいですよ」
「誰がこうさせたのよ。それに先輩では無いでしょう。もう一度呼んで」
はっきり言って腰がふらふらだ。あそこも違和感が凄い。
「…京子さん」
「まあそれで良いわ。ところで何を食べたいの。私自身はもうちょっと無理よ」
「な、何言っているんですか。〇ックでもいいですけど」
「あのねーっ。初めてのデートで食事が〇ックは無いでしょ。いいわ来なさい」
連れて来られたのは、SC(ショッピングセンター)にあるイタリアンレストラン。
「あの、俺ではここは高すぎて」
「いいの。今日は出してあげる」
結局、俺は京子さんに色々な約束をさせられてしまった。
家に帰えると
「明人、今日はどうだった」
本当は京子から聞いているけど。
「えっ、なんで姉ちゃん知っているの」
「まあ、紹介した手前、会う日位は聞いていたから」
「まあ、色々話していただけだよ」
「そう」
ふふっ、あんた石鹸の匂いが一杯よ。
―――――
鏡京子、やっぱり強襲で来ましたね。
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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