落ち葉踏みしめ、恋々と。
@Liku_kotogiri
呉服みつる
遅めの時間に帰宅すると、郵便受けに広告やダイレクトメール以外の封筒が混じっているのが目に留まった。
学校を卒業してからというもの、文明の利器に頼りっぱなしで、滅多なことでは私的な紙の便りなどなくなってしまった。元から筆不精ではあったが…。
さて置き、宛名と差出人を確認する。
宛名は『
差出人は『杉田理子』とある。覚えのない名前だ。しかし、併記されてるいる住所と名字には心当たりがある。
今でも時折やり取りのある、学生時代の同級生だ。
住所と名字から推測するに、その同級生の家族の誰かからのものだろう。
差出人が同級生本人でないことに、いささかの訝しさそ覚えたものの、手にしたそれの封を開けた。
封筒の中には、面白味のない白い紙にこう記されていた。
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夫
葬儀は、すでに近親者のみで執り行いました。
生前の親交に感謝いたしますとともに、謹んでお知らせ申し上げます。
20**年11月10日
喪主 杉田理子
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「は?」
間の抜けた声が出た。
お前いつの間に結婚したんだよ!?
とか、
昔、山登り誘った時は色々理由つけて断ってたくせに『登山中の滑落』って何!?
とか、
『今度、案内するよ!』って言ってた観光は!?
とか、言いたいことがいくつも浮かんでは、消えてゆく。
最後に残ったのは、
そっか、一人で逝ってしまったんだ…。
という言葉だけだった。
落ち葉踏みしめ、恋々と。 @Liku_kotogiri
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