第四話 色々と実験してみる

 現在、アッシュはティオ達の家――その庭へとやってきていた。

 ここに来た理由は一つ、ティオ協力の元いくつかの実験を行ってみたいからである。


「にしても、お前達の家って大きいんだな。この庭の事も考えると、かなりの敷地がある様に見えるけど」


「いえ……魔法使いの家系なら、これくらいは当然です」


 と、相も変わらず気だるげな様子のティオ。

 彼女は続けて言ってくる。


「魔法使いは書物と格闘することも多いですが、魔法を練習することも多いです……室内で魔法の練習するわけにもいかないでしょう? そのための庭です……というか、これくらい常識だと思うんですが」


「え、いや……」


「あやしいですね……さっきもレベルがどうの意味不明な事を言っていましたし」


 ティオはジトーっとした視線で、アッシュの方を見てくる。

 さて、どうしたものか。


(異世界から来ました~とか言ったら、確実に変人だと思われるよな。都合がいいようにごますにはやっぱり、あれを言うしかないか)


 ティオを騙すようで少し気が引けるが、おかしな事を言って彼女を混乱させるよりはいいに違いない。

 と、アッシュはそう判断し、ティオへと言う。


「実は俺、ものっすごい田舎の生まれでさ。村の住民以外の人と会うのはこれで初めてなんだ」


「これまで田舎から出たことがない……嘘くさいですね。でも、アッシュさんは恩人です。ですから、まぁ信じましょう……嘘くさいですけど」


「あ、あはは……そうしてくれると助かるよ」


 さぁ、楽しいお喋りも一段落したところで、いよいよ本題――ティオ協力のもと実験の開始である。

もっとも、そんなに難しい実験ではない。


「じゃあ、指示があるまでティオはそこで立ってくれてるだけでいいから」


「立っているだけですか……なんだかよくわかりませんが、わかりました」


 ティオはそう言うと、癖なのかまたもアッシュの方をじっと見つめだす。

 何を考えているのか、実に気になる視線である。

 けれど、今はそれに気を取られてばかりはいられない。


(ティオをあんまり退屈させるのも悪いし、つまらないところはさっさと終わらせるか)


 アッシュはそう判断し、さっそくメニューウィンドウを開く。


(最初にすることは、このメニューウィンドウで相手の事を調べられるかどうか)


 あのゲームではメニューウィンドウから、周囲の人のステータスなどを調べる事が出来たのだ――相手のレベルや戦力を見て、ギルドに誘ったり云々するというわけである。

 また、勧誘は当然できないものの、モンスターのステータスも調べる事が出来た。


(つまり、この世界でもメニューウィンドウを使ってそれが出来れば、かなりのアドバンテージになる。なんせ、メニューウィンドウを使えるのが俺だけである以上、そのアドバンテージを得られるのも俺だけになるんだからな)


 アッシュはメニューウィンドウを操作し、ティオをのステータスを開こうとする。

 結果は。


(よし、開けた! ティオはレベル10……優秀だって言ってたし、多分この年齢でこれは高い方なんだろうな。まだ学生みたいだし、ギルドでクエストを受けてレベル上げ――みたいのは、これからってとこか)


 ティオは本格的な戦闘はまだ経験した事がないに違いない。

 けれど、学校で模擬戦などはこなしている可能性が非常に高い。


(となると、戦闘系の学校を出ていない人――いわゆる日本的な学校を出た、戦闘訓練を積んでいない一般人のレベルは10以下……5レベル以下くらいってとこか)


 アッシュはメニューウィンドウが期待通り機能したことに、「ふむふむ」と一人満足。その後、ティオへと言う。


「じゃあ次の実験したいんだけど、何か魔法を使ってくれないかな?」


「一つ目の実験が何だったのかについては、つっこまない方がいいんですかね」


「ま、まぁそれはいつか説明するよ」


「いいですけど別に……それで、魔法を使えばいいんですか? 種類は問わず?」


「できれば攻撃系がいいかな。もしもの事があっても、大惨事にならないような奴」


「大惨事……私は学校一優秀な魔法使いです。魔力のコントロールをミスって大惨事なんて、死んでも起こしませんよ……爆発系女子は姉さんだけで十分です」


 と、ティオは杖を何もない地面へと向けるのだった。

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