第2話


最近やっと厨房を最新機能付きに変えてもらった。

慣れ親しんだ今までのものが嫌と言うわけではないが、やはり妖とは違い、力も分厚い皮膚も毛皮もない非力な人間からすると薪を用意し、火をくべる。終わればたまった灰を出し、掃除してまた火を熾す。この小さな積み重ねがつらい時もある。


満足げに研いだばかりの包丁を見ていると、裏口から野菜を持ってきたイノシシ頭のおイノさんがひょっこりと顔をのぞかせた。


「おお、これがお狐さまンとこのを真似したってやつかい」

「そうですよ、珠母(たまも)様は外交貿易を受け持たれているだけあって、お屋敷の設備が最新的でとてもすごいんです」


広い土間は大きな台所機器に支配されていて、慣れるまでは違和感が強い。

珠母様は、お客様をお料理で腹を太らせ、酒で気分を満たし、艶やかでしなやかなその技術で極楽へ導く。そのための努力は一切怠らないと常日頃言っているだけあって、彼女が支配する遊郭界隈は各地域のものよりも何倍も格が違う。


やっと設備が整ったので今日からまたここを使えるが、従業員に扱い方を説明しなければいけない。

早く慣れて使いこなしてもらわないと、この国随一の高級旅館が名折れになってしまう。それではいけない。桜樫華はこの国、いや世界でも通用する素晴らしいところだと思われなければ、料理ももてなしも、すべて完璧なものに。


今後の事をさらに思案していると、イノが感心したように言った。


「保守派の帝様がよく許可したもんだねえ。しっかしそんなもん新しくしなくとも、そもそも女将さんが自ら台所に立たなくてもいいじゃないさ」

「包丁を握ってないと、忘れてしまいそうなので」

「ふうん、羨ましい限りだねえ」


そう、他人は私が羨ましいという。

私と同じ境遇を生きる人間からすればこれ以上の幸せはないというだろうし、野心や好意を抱く生き物であれば、憎しみが生まれる程羨ましくて妬ましいともいうだろう。

しかして心いうものは三者三様である。


野菜を流しの近くに置きながらおイノは「へえ」と最新式をぐるりと見て回る、その様子の彼女のうしろから小さなうりぼーたちが真似するように付いて回り、すごいすごいと感心していた。


「これなんだい」

「冷蔵庫ですよ、氷室までいかなくとも長期保存できるようになっているんです」


扉を開けるとひんやりとした空気が外へ漏れだす。うりぼーたちがすごいすごいと飛び跳ねる。

中に入っていたキャンディーサイズのアイスを取り出し、うりぼーたちにあげる。短い脚で跳ねまわり喜んでいたがおイノに睨まれ、きちんと足を拭いて土間から一段高く上がっている畳の上に横に並んで座って食べた。


「ところで、女将さん。帝様が人間の小娘をここに連れてきたって、下町じゃ噂が広がってるけど」

「はい、ここ温泉旅館『桜樫華さくらかしか』で預かってますよ」


旦那様が私に与えてくださったものの一つ、東和でも屈指の高級温泉旅館「桜樫華」

ごく普通のお客様のみならず、海外のお客様や神様もお泊りになるこの場所。


ただ管理者として胡坐をかいていればいい、権利をくれてやったのだと言っていたので、その言葉に甘えて経営まで口を出させていただいている。


やりたいことをやっていい、そういったのは旦那さまだ。



「大丈夫なのかね。噂じゃ『あれ』じゃないかって」

「さあて、一概にはいえませんね」


ぴゅうう、とお湯の沸いた音が響きわたる。

それを見て手をパン、と叩いた。


「さ、私はそのお噂の人の元に行きますので、失礼します」

「ああ、長居しちゃったわね。帰るわよ」


ウリボーたちが母の元へ集まり、頭を下げて帰っていった。

沸いたお湯を急須の中に注ぎ、準備をする。


「……落ち着いていると、いいのだけれど」






―――夢だと思っていた。

動物の頭をした人間のようなもの、ケタケタと笑う白い手、暗闇に浮かぶ提灯。


涙目でそっと布団にもぐる。


なんでまだここにいるのおおおおッ


最後の記憶はイケメンが私を持ち上げていて、優しそうな少女がそっと頭を撫でてくれていたことだ。


服もいつの間にか白い寝間着に代わっている。


「もうし、もうし」


女性の声にびくりと体が揺れる。

ただ、あの時のような怖い声ではなく、優しい温和な声だった。


「失礼いたしますよ」


す、と襖が開くと、あの時みたクールショートの優し気な少女。

彼女はそっと中に入ると、お盆の上においていた急須と茶器を用意し、せっせと準備を始めた。横には桜餅も見える。


ぐう、とお腹が鳴ると、彼女はにこりと微笑んだ。


「ここにきてから何もお召しになってませんものね、どうぞお召し上がりくださいな」


お茶と桜餅

いつぶりだろう、口に入れた瞬間暖かくて優しい味が広がった。


「おいしい」


泣きそうになりながら言うと、ぽんぽん、と背中を軽くたたかれあやされる。小さな子になったような気持で少し恥ずかしかったけど、嫌ではなかった。


しばらくすると、着替えを用意してくれたのだが、本人も周りも和装の姿だったからてっきり着物を着ることになるかと思ったら、和モダンなワンピースを用意された。ただ少しやたら柄が派手なのが気になる……


「さて、自己紹介しましょうか。私は」


女性が名乗る前に襖が大きく開いた。


「胤継ぎの娘が何だっていうのよ!」

「そうよ絶対許さないんだから!」


左右対称にサイドテールに髪をまとめた、とてもそっくりな美少女が二人、興奮気味に現れてそう言い放ったが、次の瞬間何かを見てハッと冷や汗を垂らしている。


「二人とも、いい加減にしなさい。そんな失礼な態度ばかりとるのだったら、もう中宮にお帰んなさい。しばらく桜樫華にこなくてよろしい」

「や、やだーッごめんなさい」

「ごめんなさい、お母様」


しゅんと首をうなだれ素直に謝る双子

ただ、続いた言葉に驚く


「お母様……?」


目の前の少女をみれば、申し訳なさそうに頭を下げた。


「娘たちが失礼をしました。ごめんなさいね」

「い、いえ、それはいいんですけど……あの、お、おかあさま?」

「はい、右の黒から桃の混じり髪色が『芍薬』、左の桃から黒が『牡丹』そして双子の母ソノ、と申します」


どう見ても同じ年のようにしか見えない。

思わずおいくつなんですか、と漏らすと彼女は小さく笑った。


「32です。あなたは娘と同じ、15か6ぐらいかしら」

「え、ま、はい」


美魔女とか言うレベルではなく、本当に若い。驚いていると、双子は母の後ろに回り込むように現れた。

彼女たちは着物は着物でも「和ゴスロリ」のような恰好をしており、ふわっとしたスカートにリボンやフリルがいっぱいついている。

美少女にしか許されなさそうな強い主張の服。


気圧されていると、二人はべーっと舌を出した。


「ふたりとも、後ろにいるから見えないと思ってるんでしょうけど、わかりますからね」


ぎく、と肩を震わせ二人はきちんと坐る。


「お名前は?」

「大野木柚子乃です」

「どこのご出身で?」

「し、島根の……」


聞かれたとこを素直に答えていく。そのたびに後ろ座る二人がなんだそりゃって顔をしていたからやはりここは異世界なんだなと項垂れる。


「私は、あまり学がないのでわかりませんが」


ソノは少しだけ言い辛そうにしたが、はっきりと言った。


「貴女は『胤継ぎ』として、こちらに来たのだと思います」

「た、ね……つ、ぎ?」

「この世界の国を治めるのは基本的に龍の一族が務めます。この国東和の現龍帝は荒丸(すさまる)様という方で、貴女が助けを求め触れた方がそうです」


あの時のイケメンが龍?! しかもこの国の一番偉い人だったとは

驚いていると、さらに驚くことを告げられる


「貴女はその方の『男児を孕む母体』なのです」

「ふぁ?!」


超ド直球な言葉に思わず間抜けな声がでる。


「長寿ってことは、子どもができにくいってことなんだけど、子孫ができないまま終わるって事もあるわけで、そういうのを解消するために『胤継ぎ』が現れるって言い伝えにはあるっていってたわよね?」

「他の龍帝には何人もお嫁さんいるのに、お父様は二人しか娶ってないからきちゃったんじゃないの?」

「娘が三人もいるんだから男児いなくたっていいじゃないのよー」

「そうよねー?」


「二人とも、五月蠅い」


母に注意され、喉を詰まらせた鳩のようにピタッと黙る二人。


「つまり私はここで……好きでもない人との子どもを作らないといけないの?」

「お気の毒だけど、貴女は」

「そんなの嫌だ!」


まだ何かを話していたソノの言葉を振り切り、部屋を飛び出し逃げ出した。

行く当てなどないがとにかく聞きたくなかったのだ。

そうするしかないのだと言われれば、受け入れたくなくとも受け入れなければいけないような気がして……怖い


「芍薬、牡丹」

「はい、お母様」


ソノは落ち着いた態度のまま立ち上がると、サッと窓を開けた。


「傷つけちゃだめよ」


二人は窓から飛び出ると、竜の姿に変異した。


「あの子は少し、落ち着きがない」



あの子の身になって考えれば、致し方ないのかもしれないが、と小さく呟き

大きな風に乗った。






走って、走って、走って

息が切れたと同時に何かに躓いて盛大に転げる、その際手を擦りむいた。


震える手で置きあがり、そっと空を見上げると二匹の龍が獲物を取り囲むように周りをぐるりと浮遊している。

もう逃げる気力もなくてただその様子を見ていると、その背に乗っていたソノが飛び降り、まっすぐこちらにかけてきてこちらの頬を両手で強くたたいた。

じんじんとひりひりする頬を離さぬまま、ソノは柚子乃の目をまっすぐ見つめ


「逃げて逃げて、それで何か変わるとでも?」


大声ではないが、厳しい口調で問う、ただ怒られた幼子のように何も言えず、ただそっと目を逸らす。


「まあ落ち着きなさいな。がむしゃらに拒絶するだけでは怪我をするだけです」


ほら、とこちらの手を取る。

見れば砂が混じった血が手の平に滲んでいて、彼女は懐から竹の水筒と麻布を取り出し、さっと応急手当てをしてくれた。

まるでこうなることが分かっていたかのような迅速な対応に驚いていると、彼女は小さく笑い、困った顔で「私も同じことをしたことがあるから」とつぶやく。


「子を孕めばあなたも国も将来安泰ですが、旦那さまは貴女にそうさせるつもりはないようですし、大丈夫ですよ」

「本当に……絶対?」


確信を持った言葉に疑問を問えば、彼女はしっかりと頷いた。


「そうでなければ桜樫華に貴女を預けたりしないでしょう」


「そ、そうなんだ……」

「ただ、貴女の体質的に……旦那様から『精』をお分けしていただかなければいけないと思います」

「セイ?」


後ろで双子がきゃっと照れている。

なんとなくそれで察して顔が赤くなるが、ソノは手を振った。


「あ、まぐわったほうが確実ですが、別にしなくとも大丈夫なのですよ。ようは旦那様のお力をわけていただければいいという話ですので」

「そうなんですね」


身体を重ねる方がいいが、別の方法でもいいというソノ

しかし双子が首を傾げる。


「でもお母様、あれって人の体に耐えれるの?」

「間接的に力を渡すのって超~時間と労力使うんでしょう?」

「いえ、あれは結構貧弱な人間にはキツイですから、別の方法でとりましょうか」


経験者は語るなのか、うんうんと何かを思い出しながら同意するソノ

でも大丈夫と手を鳴らす。


「飲むなら精液と血液どっちがいい?」


双子が同時におええと言ったが、たぶん同じ顔はしてたんだと思う。

困った顔で笑うソノが見えたから


・・・

・・


どうせ外に出たのだからと、双子龍の背にのって下町に下っていく。


高い山の上にあった桜樫華から、視界に下界がひろがった。

それぞれが四角いブロックに分けられていて、平安図みたいだなとちょっと思う。


「この国は龍帝の下に集う四天王将軍によって守られています。北にある町は鬼将軍、朱天しゅてん様が務める、北上町」

「軍事力を担当しているから、あの町は力自慢とかそんな人ばっかいるよね」

「鍛冶場が多いのもあって、綺麗な工芸品もあるから嫌いじゃないけど」


この簪もそうなんだよ、と芍薬か牡丹か、どちらかが自慢げに短い手で指さしたが、ただでさえどちらか分からないのに、龍の姿だとなおわからない。

しかし龍の毛に刺さる簪は透明で、それでいてキラキラと輝いていて確かに綺麗だった。


「西が霊将軍、山ノやまのべ様が務める西左町」

「山様面白いよね、ぼうっとしててなんかカワイイ」

「自然がいっぱいだから森林浴には最高の場所なの、いつ行っても薄暗いけれど」


霊っていうのは精霊とか幽霊とかそういった眷属のことだよ、どちらかが補足する。

確かにすれ違う翼の生えた謎生物がそちらへと向かっていくのが見えた。ヘンな生物や人外にはであったが、今のところソノしか人間を見ていない気がする。もしかして人間っていないのかな、とつぶやくと勿論いますよ、とソノが続けた。


「東が人将軍、聡仁あきひと様が務める東右町。この国に数少ない人間が住まう土地です」

「お母様と同じ種族だけど、私あの御仁なんか嫌いなのよねー」

「わかる、なんか怖いんだよね~。妖なんか、だーい嫌いって顔してるよねー」

「こら」


笑顔で諫められ二人は黙った。母は強しだな、とおもう。

東右町だけが他の町とは違い、高い塀で囲まれていた。それはまるで来るものを拒み、去るモノを追わずといった様子に見える。

少しだけ行ってみたいと思ったが、どこか冷たいその町に行こうというのは躊躇してしまう。

勇気が出なかったので今回は見送ることにした。



「南が狐将軍、珠母たまも様が務める南下町。今からそこへ行きます」


そこは初めてここに来たときに震えていた場所だった。

夜見た時はただ怖いと思っていたが、昼間見るそこは活気あふれにぎやかで、出店なんかがたくさん出ている。


「夜は花街~、昼は観光街~、眠らぬ場所南下町へぇ~ようこそぉ」


花のかんざしを付けた狐が色っぽく入り口で客を歓迎している。

こうしてみると、売ってる人も買っている人の中にも、人間らしき者はいない。


「……」


なんとなく不安になってソノの服を掴むと、そっと手を握られた。


「私はここにいますよ。大丈夫『裏』に行かなければ危険ではありませんから」

「……裏?」


双子が左右に分かれ早速出店に夢中になっている。

龍帝の娘って言うぐらいだからお姫様だろうに、どこか庶民じみている二人。

母親であるソノの影響が大きいのだろうかと、彼女のほうを見れば目がばっちり合う。


「貴女もご覧になってきてはどうです。欲しいものがあれば買ってあげますから」


そういってにっこり笑う彼女。

まだ出会ってそう時間が経っていないが、彼女の傍にいる方が安全な気がしてきた……。

そう思っていると、ふと何かの視線を感じ周りを見る。妖たちがこちらを見ている気がした。視線は合わないが、じろじろとこちらを品定めをしているような視線

困惑していると遠方からキャーッと悲鳴が上がった。


「いたずらかまいたちよ~」


ネズミの女性がそう叫ぶと、後ろから現れた竜巻が人々を飲み込んで放り投げた。

その威力は「いたずら?」と疑問を抱くほどだったが、確かに放り投げられても妖ゆえにかみんな綺麗に何事もなく着地を決めている。

猛スピードでこちらにそれが来ているのを確認し、普通の人間はそんなことできないと今更ながら慌てる。


「わわわわ、こっちきてる!?」

「柚子乃さん、こちらに」


ソノが私の手をひいて端によけようとしたが、風でワンピースのスカートがめくれ上がり、とんでもないほど下半身があられもない姿、あまりの羞恥心に耐え切れず、逃げることを中断し、両手でスカートを抑える。


「ひぃええ」

「柚子乃さ……」


ぶわ、っという音が聞こえて


「を?!」


身体が空を舞う。


何かに持ち上げられ、捨てられるこの感覚は……夏のプールで父親と遊んでいた時の感覚に似ている。

あまり高くあげられると、水でも痛いんだよな……なんて走馬燈のように過去を思い出す


「オワタ」


誰かに抱きかかえられる感覚。

そして、大地に着地する振動。


少しだけゆれている三半規管を落ち着くまでじっとしていると、そっと地面に降ろされた感覚がした。


瞬きを数回して、助けてくれた人のほうを見る。


「あの」


振り返ったその人は、ラテン系の彫りの深い顔立ちをしていた。鼻筋がしっかりしていて凛々しく、目つきは鋭く愛想が悪そうだったが、それすら『ワイルドでクールなイケメン』という言葉で片付くレベルの容姿だった。


グレーなふわふわな髪色と瞳がより魅力的だと思い、思わず見惚れる


「……怪我しているなら出歩くんじゃねえよ」


見惚れている間に男は吐き捨てるようにつぶやくと、静かにどこかへ消え去った。


「あ、いちゃった……もう、お礼ぐらい言いなよ私ったら!!!」


頭をわしゃわしゃと掻き毟っていると、影ができた。

空を見上げると、龍の姿。


「柚子乃さん」

「ソノさん!」

「「私達もいるんですけど」」


双子にツンツンされて苦笑いする。

実はこの二人のこと、まだちょっと怖いけど……悪い子ではないんだろうなと思う。


芍薬か牡丹か、どちらかの背中に乗って桜樫華に戻る。


その道中でも、先ほどあった男の人のことが頭から忘れられない。

結構若そうだったから、ちょっと年上ぐらいかな……でも妖だったらもっと上かも?


「……名前なんていうんだろ」

「誰の?」


横に飛ぶ龍と目が合う。

思わず驚いて転げ落ちそうになると、暴れないでよ! と怒られた。


「いたずらかまいたちのこと?」

「き、気にしないでどうぞ」

「やだ、気になる」


くねくねと交互に空を飛ぶ二人にやや酔いそうになる。


「こら」


ぴたっとやめてまっすぐ飛ぶ。

ちょっとこういうところは面白くて好きだと思う。


しばらくして桜樫華に到着する。


てっきり二人も人に戻るかと思ったらそのままの姿でこちらを見下ろしていた。


「?」


戻ろうとしたのについてこないので不思議に思って振り返ると、ソノは二人の頭を撫でていた。


「まっすぐ大宮に戻って旦那様にご挨拶して、中宮でお行儀良く過ごすのですよ」

「分かってますよー」

「ちゃんと宮ではお姫様やってるもんねー」


二人はそういった後、また今度来るからねといって空へ飛んでいった。


「戻らないの?」

「ああ、あの子たちの住むところは大宮……龍の一族が暮らす皇居ですから」

「え、ソノさんは?」

「あそこねえ、人間が暮らすにはそれはそれは息苦しいところなんですよ」


さ、戻りましょうと笑顔で言われる。

晩御飯は何がいいでしょうかね、と言われ困惑していると、手伝ってもらいますから一緒に考えましょうね、と背中を叩かれた。


こういうやり取りは本当の親子みたいで、ちょっとくすぐったかった。

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