第189話 移住計画
移住を提案した翌朝、集落の皆との話合いの結果を伝えに村長さんが訪ねて来た。結果は満場一致で移住が決定。
温泉街の準備が整ったら迎えに来る約束をし、私達は温泉街へ急ぎ戻る事にした。
「ドルムさんとホルグさんはどこですかーーー!!!」
温泉街へ戻ると、リアム君が一目散にドルムとホルグを探しに走って行った。若干エルフ達を早く迎えたい気持ちが先走っている気もする。MAPで見つけた2人は、そっちには居ないんだな。
「あんなリアム初めて見たな。歳の割に落ち着いてると思ってたけど、案外子供っぽい所もあるんだな。」
「永遠の少年なんだよ。」
「え?」
「あ、いや、何でも無いです。」
ヒューゴの言葉に思わず呟いてしまった言葉を聞き逃さない地獄耳ヒューゴ。お願いだから聞き流して欲しい。
体は子供、精神年齢はおじさんのリアム君だけど、エルフに関わる時だけは永遠の少年に戻る。
そんな事を私が言ってたなんてバレた日には・・・・・。いや、これ以上は考えまい。
「ヒューゴはリアム君を会議室まで連れて来て。クレマンはフェデリコに事情説明頼める?私はドルムとホルグを呼んでくる。」
「おう、了解!」
「畏まりました。」
2人は返事をするとすぐに走り出し、あっという間に見えなくなってしまった。さて、私も2人を呼びに行きますか。
最近は外回りの仕事が多かったから、フェデリコの館内にあるこの会議室に来たのはかなり久しぶりだ。
だからだろうか、以前使った時より部屋の中にある装飾品や調度品などが豪華になっている気がする。
これはかなり儲けが出てる証拠だね。温泉街印の商品は、ローマン商会で飛ぶように売れている。
となると、他の商会からの横やりや妨害なんかもありそうだけど、そこら辺大丈夫なのかな。今度聞いてみよう。
私としては会議室にソファーが欲しいところ。木で作った椅子は固くて、長時間座っていると腰が痛くなっちゃうんだよね。
今は円座クッションで我慢するけど、この件が落ち着いたらまた色々作りたいな。まあ、作るのは職人さんだけど。
「それで、今度は何を作りたいんで?」
「いつでも取りかかれますよ!」
自分たちが呼ばれた意味を理解しているドルムとホルグが、嬉しそうに笑いながら聞いてくる。さすが頼もしいかぎりだね。
「実は今回エスプリの森の隠れ里に住むエルフ達が、温泉街に移住する事になったの。それで急ぎ住む場所を確保したいから、その相談。」
「エルフの家!?」
「これはまた面白い依頼ですね!」
ドルムとホルグに、エルフ達がツリーハウスに住んでいて、家自体はそのまま持ってくる事。それと皆で食事が出来て、温泉にも入れる建物を別にドルムとホルグに造ってもらいたい事を話すと、腕がなるとばかりに大興奮。
当面の食料は大丈夫なほどの野菜を手土産に渡してあるけど、なるべく早く移住させてあげたい。従業員用宿舎はまだまだ空きはあるけど、ツリーハウスに住むエルフ達には住みにくいだろう。
だから温泉街の外壁を広げ安全を確保し、頑丈そうな木の上にツリーハウスを移設する。これが現状で一番早くて最適解だと思う。
「場所はどこが良いかな?人目につきにくい場所が良いよね。」
「畑の奥はどうでしょうか。それなら茶畑も近くに移植しやすいと思いますし。」
「確かに、あの辺りなら温泉街を訪れた冒険者や商人の目に晒される事もないでしょう。」
「あれだけの美形集団が集まると、変なちょっかいをかける奴もいるかもしれねーから、街の中心より良いと思う。」
「・・・・・はぇ!?」
私の質問に答えたのはリアム君、フェデリコ、そしてまさかのヒューゴだった。
まさかあの脳筋ヒューゴからそんなまともな答えが聞けるとは思ってもいなかったので、咄嗟に変な声が出てしまったよ。
「おい。何だよその反応。」
「あ、いや、ナンデモナイデス。」
警備隊長からの目線で話が出来るまでに成長したんだね!凄いよヒューゴ!
そう心の中で思ったのは私だけじゃなかったらしく、会議室に居る全員から生暖かい目で見られ、ヒューゴは居心地悪そうにしていた。
「じゃあ皆の意見が一致したので、場所は畑の奥に決定します!ドルムとホルグには悪いんだけど、急ぎでさっき話した建物をお願いね!」
「おう!任せとけって!」
「職人総動員して、すぐに完成させてみせます!」
そんなヒューゴをサラッとスルーして、さっさと話を詰めてしまう。
ドルムとホルグからは頼もしい返事も聞けたし、急いでエルフを迎える準備を整えよう!
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