第183話 エルフ

「オーリーの馬鹿ぁぁぁぁぁ!!!」

「ご、誤解だよルリア!」

「俺の可愛いルリアをなに泣かせてんだ小僧!!!」

「お、お義父さん誤解なんでゴフッ!!!」


 おっと、オルランド王子が壁までふっ飛んでいった。ついさっきまで、見てるこっちが恥ずかしくなるぐらいイチャついてたのに、何がどうしてこんな惨劇を見せられているのだろうか。


 昼食をご馳走になった後、早速国取りについての話合いをする事になったのだが、国取りの前にエルフとも同盟を結んだ方が良いとオルランド王子が言い出した。


 どうやらエルフは、エスプリの森の隠れ里に住んでいるらしい。エスプリの森と言えば、最初に温泉作ったり魔法の練習をした森だ。


 確かに立地的にもエルフと同盟を結べれば、シューレ王国を同盟国で取り囲む形になるし、これなら万が一にも王様を逃す心配は無い。

 逃げ隠れする人を探す方が時間も労力もかかるし、お城に居る内に捕まえておきたい。


 満場一致でエルフを探しに行こうと話が纏まった所に、オルランド王子が自分も行くと言い出した。

 言い分としては、シューレ王国の国取りに力を貸してもらうなら、旗頭である自分が同行するのが筋だと。


 言ってる事はまともなんだけど、その緩みきった表情がどうにも信用できない。私でも分かるという事は、もちろんルリア王女も・・・。


 そして冒頭のカオスな惨劇へと至ったわけだ。シークレット情報に載ってた女好きは伊達じゃないって事か。


 あれ?でも私やアンナには特にそんな様子はなかったけど・・・。うん、深く考えるのは止めよう。今ならまだ傷は浅い!

 

 よし!エルフに会いに行こう!




 獣王国から転移で温泉街に帰るとすっかり日が暮れていた為、翌日エスプリの森へ行く事になった。

 エスプリの森のエルフを探し隊メンバーはコタロウとリュウ、ヒューゴとクレマン、それとどうしても行きたいと懇願してきたリアム君だ。


 分かる!分かるよ!ファンタジーな種族はロマンだよね!エルフ三姉妹の時も思ったけど、やっぱりエルフは美形揃い。今度はエルフの青年イケメンにも是非お会いしてみたい。


 そんな邪な事を考えながら集合場所の温泉街入り口で皆を待っていると、丁度ローマンがエテルネから帰って来た所と出くわした。


「ローマンお帰り!」

「只今戻りました!大口顧客の開拓、ありがとうございました!また儲かってしまいますな!」

「おぉ!さすがローマンだね!じゃあ次は獣王国ベスティアに支店の誘致をお願いね!獣王様の許可はもらってるから安心して!」

「獣王国!?これまた人嫌いで今まで交渉不可と言われていた国ですのに、素晴らしい交渉能力ですね!」


 尊敬のまなざしで見てくるローマンの顔がまっすぐ見られない。正直交渉力とか全く関係ない。

 ただ商品が良いだけなんだけど、否定しても謙遜だと受け取られるだけなので訂正できず、その結果の今なので甘んじてこの居心地の悪さを受け入れよう。


 ローマンは新しい販路拡大を大いに喜んでいた。頑張って営業かけて良かったよ!

 ローマンは生粋の商人だからなのか、販路拡大するのにとても意欲的だ。これからも頑張って営業かけていかないとね!



 皆が来たのでローマンと別れ、エスプリの森で以前温泉を造って入っていた場所へと転移する。

 昨日MAPでエスプリの森のエルフを探していたら、以外にも近くに集落らしき所があったんだよね。


 今回は森の中という事で、当然馬車は無し。なのでコタロウとリュウが私を乗せると張り切っていてとても可愛い。


 エスプリの森の東側、シューレ王国とは反対側にあるエルフの集落へ魔物を倒しながら向かっていると、集落手前にかなりの人数が集まって来ている。動き方からして、私達を包囲するつもりかな。


「ここから先へは進めない。今すぐ引き返せ。」

「ここに住むエルフ達と同盟を結びたく、カティアの森からやって来ました。代表の方に会わせては頂けないでしょうか?」

「無理だ。諦めて帰る事だな。」


 姿を見せずに警告してくるエルフ。私達の周りは完全に包囲されているから、強引な突破はリスクが高い。これは準備したアレの出番だね!


「こちらは我が国の特産品でございます。土産にとお持ち致しましたので、是非お納め下さい。」


 温泉街産の瑞々しい野菜と果物をちらつかせてみると、ゴクリと喉の鳴る音がそこら中から聞こえてきた。野菜を手土産にしたのは大正解だったね!


 昨夜エルフ三姉妹に手土産の相談をしに行った時に、温泉街産の野菜と果物が良い!!!と力説されたんだよね。

 この世界のエルフはベジタリアンではないけど、美味しい野菜や果物に目がないらしい。


 温泉街産の野菜は旨味がぎゅっと凝縮されているのに瑞々しさもあって、生のまま食べてもえぐみが全くなく、とっても美味しい。

 果物に至っては、お菓子かと思うくらいに糖度が高く、温泉街でも人気なんだよね。


「確認して来るから、暫しここで待て。」

「はい、承知致しました。」


 MAPで見ていると、1人集落へ向かって走って行った。

 姿が見えないから木の上に居るんだろうけど、木の上をこのスピードで走れるなんて、森と共に暮らすエルフならではだね。



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