第182話 獣王国の食卓

 いちゃつき始めたオルランド王子とルリア王女を放置し、改めてライオン王にへ向き直る。


「ご挨拶が遅くなり、大変申し訳ありません。私は温泉街の国主の桜と申します。この度は同盟を結んで頂き、誠に有難うございます。」

「俺はこの獣王国の国王ライオネルだ。まさか同盟の話しを隠れ蓑に、我が国へ無断で侵入してくるとは思わなかったがな!」

「大変申し訳ありませんでした。」


 おう、言葉の棘が凄い。素直にオルランド王子に会わせてと頼んだ所で、会わせてはくれなかっただろうに。

 とはいえ非はこちらにある為、返す言葉も無い。兎に角、誠心誠意謝ろう。


「お前、桜を虐めるつもりか?」

「へー・・・僕らの大切な桜ちゃんに対して、そんな態度取るんだー?」

「え?フェデリコ殿が神獣様方の主ではないのですか?」

「違う!!!」

「桜ちゃんに頼まれたから護衛してたけど、僕らの大切な人は桜ちゃんだけだよー!」


 私への態度に憤慨した2匹が、敵意を剥き出しにしてライオン王を睨み付ける。あんなに大きな体のライオン王が、コタロウとリュウに睨まれて小さくなってしまった。

 いやいや、こっちが無断侵入したから悪いんだよ!?


「コタロウとリュウの気持ちは嬉しいけど、最初に悪い事をしたのは私だから、ライオネル王が怒るのは当たり前なんだよ。」

「そうか、それは悪かった!」

「えー、でもずっと桜ちゃんを睨んでたのは、僕許せないんだけどー?」


 素直なコタロウはすぐに納得してくれたけど、リュウはライオン王達が私を睨んでいた事に気付いていた模様。でもあれは多分、自分たちのアイドルが私に甘えてる事に嫉妬してただけなんだよね。


「神獣様方の大切な方へのご無礼、どうかお許し下さい!神獣様方に慕われる桜殿が羨ましくてつい・・・。大変申し訳ありませんでした!!!」

「「「「「「申し訳ありませんでした!!!」」」」」」


 ライオン王に続いて一斉に頭を下げる獣人達。アイドル達に嫌われたくないからか皆一様に必死だ。


「いえ、こちらも本当に申し訳ありませんでした。これでお互い帳消しにしませんか?」

「はい!ありがとうございます!」


 私の提案にホッとしたのか、獣人達に笑顔が戻る。コタロウとリュウも獣人達の態度に満足げ。まあ実際ずっと睨まれてるのは居心地悪かったから、これで良かったかな。




 国取りについての話合いは、昼食を食べてからする事になった。ちなみに昼食は豪快に焼いたお肉とサラダ。


「いただきます!」


 まずはお肉を一口。お肉は塩のみの味付けだけど、素材が良いのかとても柔らかくて美味しい。きっと良いお肉でもてなしてくれたんだろうな。


 サラダはちぎった生の野菜をそのまま食べる感じかな。とても新鮮で瑞々しい。でもどうせなら、もっと美味しく食べたい。


 収納から自家製ドレッシングとマヨネーズを取り出すと、アンナ達が大喜びで飛びついてきた。

「桜!それマヨネーズだよな?私にも頂戴!」

「俺もマヨネーズが良い。」

「私にも分けて下さい!」

 皆マヨネーズ大好きだよね。ドレッシングもさっぱりしてて美味しいのに。


 そんな私達の光景を見ていたルリア王女が食いついた。

「桜様、皆様がお使いのものは何ですか?」

「これはドレッシングとマヨネーズです。生野菜にかけて食べると、より野菜が美味しくなる調味料ですよ!」

「そんな素晴らしいものが!?私にも試させてもらえませんか?」

「もちろん良いですよ!」


 王女のサラダにもマヨネーズをかけてあげると、ためらう事無くサラダを食べるルリア王女。


「ん~~~~~~~!!!!!」

 美味しかったのか、言葉にならない歓声をあげながら悶絶している。耳がピョコピョコ動いていて可愛い。

 そんな王女を見て、ゴクリと喉を鳴らすライオン王とオルランド王子。


「桜殿、私にもかけてもらえないだろうか?」

「あ!俺も食べてみたいです!」

「良いですよ!ここに置いておくので、好きにお使い下さい!」


 このままでは私が全員のサラダにかけて回る事になりそうなので、手を付けてないマヨネーズとドレッシングを新たに収納から出し、ライオン王の前に置く。


 国王相手にその対応で良いのかとも思ったけど、見ていたら誰もそんなに堅苦しくなく自由に食べていたので大丈夫そう。


「感謝します!」

 そう言うといち早くマヨネーズをサラダにかけて食べ、王女と同じ様に悶絶するライオン王。大きなライオンが悶絶する姿は、意外にも少し可愛かった。


 その後は食卓に着いていた全員がドレッシングとマヨネーズに悶絶しながらサラダを堪能していた。やっぱりセルフにしておいて良かった!


「桜殿、このドレッシングとマヨネーズを買わせてもらう事は出来ないだろうか?」

「出来ますよ!ベスティアに我が国の誇るローマン商会を誘致させてもらえれば、安定供給出来るようになるかと思いますが、いかがでしょうか?」

「是非頼む!それなら皆が買う事も出来よう!」


 というわけで、獣王国にもローマン商会を誘致する事が決定!帰ったら早速ローマンに話しておこう!販路拡大にきっと大喜びしてくれるよね!



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