第160話 新たな移住者
本日もモフモフサラサラの心地よさに包まれながらの最高の目覚め。至福です。
昨日はエマさんからの突然のカミングアウトには驚いたけど、おかげで今まであまり聞いた事の無かった獣王国や獣人について、色々な話を聞く事が出来た。
いつか獣王国にも遊びに行ってみたいな。
朝の支度を済ませた後は、ミニサイズのコタロウとリュウと一緒に食堂で朝食を食べる。
今朝のメニューはベーコンエッグとふんわりパンのジャムサンド。具だくさんの野菜スープに特産品となったプリンだ。
何故コタロウとリュウも一緒に食堂で食べてるかというと、サイズを小さくすればフェンリルとはバレないだろうというエマエル姉妹の提案で、とまり木ではそのまま一緒に食堂でご飯を食べれる事になったからだ。
2人がコタロウとリュウの姿を見ていたいだけなのかもしれないけど、私も一緒に食べられるのは嬉しいから2人の提案は正直ありがたい。
「キャ~!サンドイッチを食べてる姿も素敵です~!」
「キャ~!私が作った料理を食べて頂ける日が来るなんて~!」
・・・・・うん。ありがたい。
食堂で美味しい朝食を堪能した後、部屋で出発の準備をしていると、不意に窓に何かが当たる音がした。
窓の外を見てみると、カイが可愛がっている鳥さんが窓をコツコツと突いている。
テーブルに鳥さんを運び、足に付いている小さな筒から手紙を取り出す。頑張って運んで来てくれた鳥さんには、フルーツとお水でおもてなし。
昨日出発したばかりなのに、何かあったのかな。少し不安になりながら手紙を見てみると、
『一旦温泉街へ戻られたし』
実に簡潔な一言だけが書いてあった。簡潔すぎて全く状況が分からないからね!?
エマエル姉妹に別れを惜しまれつつ、まずは1度アマリア聖王国を出て、それから温泉街にあるフェデリコの執務室へと直接転移する。
フェデリコの執務室には、部屋の主であるフェデリコはもちろん、カリオ、リアム君、クレマン、ドルムとホルグといった面々が集まっていた。
「おはようございます桜様。丁度良いタイミングだった様で、何よりでございます。」
「おはようー。朝食食べて、出発の準備をしてる所だったんだけど・・・。」
「丁度良うございました。」
「あ、はい。」
にっこりと満足げな表情で頷いているクレマン。私の行動はもはや見透かされている模様。
「実は昨日、ドワーフ達に依頼していた全ての建物が出来上がりました。」
「あ!桜様に頼まれた算盤も出来ていますよ!」
建物は近々だろうとは思ってたけど、このタイミングとは・・・。しかも算盤までもう出来てるなんて!さすがホルグ!仕事が早い!!
と言う事は、私を呼んだ理由は一つ。ツヴェルク王国へ行くついでに、一緒に彼らを送り届けろって所かな。
でもでも労いの宴会とかしなくて良いの!?
「桜様不在でしたが、宴会は昨夜すでに開催致しました。忙しいドワーフ達をいつまでも温泉街に縛り付ける事は出来ませんからね。」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーー!!!」
酷すぎる。それなら宴会に呼んでくれても良かったのに・・・。ん?もしかして?
「フェデリコ、もしかして昨日ドリンクバー使った?」
「ギクッ!」
「やっぱり!!!だから私を呼んでくれなかったんだね!!!」
計画犯だ。というか、そんな事に私が気付かないと思っているなんて甘すぎる!
「それでですね!桜様にドワーフ達をツヴェルク王国へ送って頂きたいのですが、少し問題が・・・。」
私の追求を躱したいフェデリコが、話題を変えてきた。今は敢えてその話に乗るけど、これは貸し1つにしておこうかな。
フェデリコが私の視線を受けて、そのまま話を続けても良いと判断し本題に入った。ドルムとホルグにめを向け話を促す。
「桜様よ!俺はここに残るぞ!移住を許可してくれ!」
「私と部下達を、どうかこのまま温泉宿で雇ってはもらえませんか?」
「えっ!本当!?もちろん大歓迎だよ!!」
「「やったぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」
私が二つ返事で速攻了承した事に驚いたフェデリコ、カリオ、リアム君から待ったがかかった。
「良いんですか!?ドルムとホルグは、ツヴェルク王国きっての一流職人なんですよ!?」
「さ、桜様!?」
「ツヴェルク王国との同盟を結ぶ事が難しくならないかな?」
想定外だったのかな?でもまだこれからも新しい建物が必要になってくると思うし、私からしたら願ったり叶ったりなんだよね。
「んーーーー・・・多分大丈夫だと思う。とりあえずツヴェルク王国へ行って頼んでみるよ!」
必殺!お酒の詰め合わせを手土産にして、いざツヴェルク王国へ!!!
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