第157話 テンプレ展開?
「桜さん・・・。」
「ちょっとこれは・・・。」
「あ、やっぱり多すぎました?」
積み上がった魔物の山の前で、無言で頷くマイルズさんと解体場のおじさん。
一応最初に多いって伝えてたんだけど、2人が「大丈夫ですよ!」「任せとけ!」って言ったから出したんだけど、さすがにこの量は想定外だったらしい。
「じゃあこのくらいは・・・?」
3分の2の魔物を収納袋に収納すると、残った魔物は小さな小山程。
「こ、このくらいなら明日の朝までには・・・。」
「明日の夕方にまた来ますので、急がなくても大丈夫です。よろしくお願いしますね。」
「助かる!しっかり解体しておくから任せとけ!」
さすがに徹夜してまではやって欲しくはない。明日ツヴェルク王国に行った帰りに、忘れずに受け取りに来よう!
「それにしてもその袋は本当に凄い収納量ですね!
「時間経過もしないってのもすげーよ。素材が劣化しないから、高額で売れる!」
マイルズさんと解体場のおじさんを信用して収納袋について話したら、始めは半信半疑だった2人も、実際に収納から出し入れして見せると大興奮。これで魔物素材を定期的に売りさばく事が出来るね!
収納袋については秘密にした方が良いというマイルズさんの強い薦めで、2人と誓約書も交わしてあるので大丈夫!帰ってから怒られないはず!多分。
帰り際マイルズさんにアメリアさんの上司さんへの差し入れを預けると、理由が想像付いたからか、苦笑いするマイルズさん。上司さんの事をしっかりねぎらってあげて下さいね。
「あ!!桜さん帰られるんですかー?また来て下さいねーーー!!!」
こっそり帰ろうとした所を見つけたアメリアさんが、良い笑顔で手を振っている。基本的にはとても良い子なんだよね。ただマイペースなだけで。あの笑顔に癒やされる冒険者も少なくないはず。
アメリアさんに手を振り返し、冒険者ギルドを出て人通りが多い所へ向かう。
( 桜、付けられてるぞ。)
( さっき冒険者ギルドに居た奴らだよー。)
( やっぱり目を付けられたね。さてどうしようかな。)
MAPにも後を付けてきている敵意を持った赤い印が5個映っている。絡まれるのは面倒だな・・・。
( あんな奴ら一瞬で片付けられる。)
( 弱そうだし、一咬みだよー!)
私が対応を考え込んでいたのを困っていると思ったのか、物騒な気配が影の中から漂ってくる。
( いやいやいやいや、片付けないで!?咬むのもダメ!)
(( えーーーーーーーーー・・・ ))
( えーーーじゃない!こういうのは関わらないのが1番!)
どういう理由で付けて来ているのか、考えるのも相手するのも面倒。こういう時はスルーに限る!
( ・・・桜がそう言うなら。)
( 残念だけど我慢するー。)
( 2匹とも良い子!!!帰ったらさっき買った串焼きと、デザートにケーキを出してあげるね!)
(( やったーーーーーーー!!!))
コタロウとリュウの気配が楽しそうな気配に変わってホッと一安心。私への危機管理体制は多少物騒だけど、それも私を思っての事。私もこの子達をしっかり守らなきゃね!
人混みで撒けるかとも思ったけど、さすがにそう簡単には行かず、付かず離れず一定の距離を保って付いてくる。
このまま商業ギルドに行くと、商業ギルドに迷惑を掛ける可能性もある。止まり木に泊まったら、夜襲をかけてくるかもしれない。街の中で撒いても、街の中を探し回るかもしれない。
よし決めた!一旦街の外に出た振りして、転移で戻って来よう!
付けられている事に気付いていない風を装い、出国手続きする列に並ぶ。思った通り何人か間に挟んで後ろに並んで来た。何やらボソボソと話している声も聞こえる。
( 何を話してるか聞こえる?)
( 聞こえる。ラッキーだとか、好都合だとか言ってるな。)
( 女1人で生意気とか言ってるねー。やっぱり咬んでやろうか・・・。)
( 大丈夫だから落ち着いて!)
ふぅ、危うく自分で火に油を注ぐ所だったよ。リュウなんて口調まで変わってるから、本気でキレる一歩手前だ。危ない危ない。
でもやっぱりどうでも良い理由で付けられてたんだな。本当いい迷惑だよ。
入国審査の時と同様に、門番さんや上官さんが走ってきたり、順番をすっ飛ばそうとしたりとすったもんだがあったけど、何とか無事に街の外へ出ることが出来た。
さて後は付け回してた奴らが出てくる前に、人目がつかないところまで行っちゃおう。彼らの顔と名前は今後の為に見ておきたい。
近くの林まで走り、木の影に隠れてMAPで彼らの様子を探っていると、門から出た彼らは右に左にとウロウロしながら徐々に近付いてくる。完全に私を見失って慌ててるな。
肉眼でも彼らが見える距離に来るまで待ち、顔を確認後すぐに鑑定。そしてすぐさまアマリア聖王国の商業ギルド付近へと転移で戻る。
よし!これで完璧に撒けたね!安心して商業ギルドにも、とまり木にも行けるし、安眠できる!
特筆すべきステータスじゃなかったけど、しっかりと顔と名前は覚えたよ。もし温泉街に来ても入れないように、ブラックリストに名前を載せておこう!
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