第156話 白い誓い
聖王様と無事に同盟を締結する事が出来た私は、現在貯まりに貯まった魔物素材の買い取りしてもらう為、冒険者ギルドへと来ていた。あの後カルロさんにしっかりとお話し合いしたので、ここまで歩いて来る事が出来ました!話合いって大切だよね!
時間帯はすでに夕方に差し掛かっているからか、依頼の報告をしたい冒険者達で溢れている。
私も買い取り査定をお願いしたかったけど、買い取りの受付も大行列が出来ている。時間も掛かりそうだし、今日は止めておこうかな。
「あーーーーーっ!!!桜さんですよね!!!お久しぶりですーーー!!!」
受付から聞き覚えのある女性の大音量の声が、ギルド内に響き渡った。この周りを全く気にしないマイペースさんは、もちろんアメリアさんだよね・・・。
「ギルマスから、桜さんが来たら部屋へ案内するようにって言われてるんですー!なので2階へどーぞ!!!」
アメリアさん・・・それ案内じゃ無い・・・。そして周りの冒険者からの視線も痛い・・・。
受付の奥に居る先輩らしき職員さんが、胃が痛いのかお腹を押さえながら申し訳なさそうな顔で頭を下げている。彼女も相変わらず苦労してそうだな。後で回湯と元気湯を差し入れよう。
今日は買い取りを諦めてこのまま止まり木に行こうかと思ってたんだけど、この空気の中さすがにスルーする勇気は持ち合わせて無い。
アメリアさんに挨拶を返し、いざ階段を上がろうかと思っていると、2階からマイルズさんが下りてきた。アメリアさんの声が聞こえたらしい。
「桜さんお久しぶりですね。少しご相談したい事があるのですが、今お時間大丈夫ですか?」
「マイルズさんお久しぶりです!大丈夫ですよ。」
「ありがとうございます。それではどうぞこちらへ。」
にっこりと微笑みながら、スマートに2階へと案内してくれるマイルズさん。ギルドマスター直々のお出迎えとあって、さっきまでとは違い探るような視線に晒される。どのみち見られるのなら気にしないのが1番だね!
「先ほどはまたうちの職員が申し訳ありませんでした。」
「アメリアさんですからね。気にしてませんよ。それで相談とは一体?」
「実は冒険者達が何人もカティアダンジョンを目指して行ったのですが、誰も到達できずに傷だらけで戻って来たのです。いえ、正確に言うと一組戻って来ないのです。当ギルド唯一のBランクパーティーなので、始めは順調にダンジョン攻略をしているのかと思っていたのですが、あまりにも戻って来ないので・・・。」
Bランク!!そんなに強いパーティーが苦戦してるの!?何かトラブルでもあったのかな。
「桜さん、どうかBランクパーティー【 白い誓い 】のメンバーの救出をお願い出来ないでしょうか?」
あれ?そのパーティー名って・・・。
「生存の可能性は限りなく低いかもしれませんが、もしかしたら救助を待っているのではと思うと・・・。」
今にも泣き出しそうな顔で必死に説明してくれるけど・・・どうしよう、頭に全然入って来ない。
白い誓いって確か前に助けた冒険者パーティーだったはず。アンナとガインのデスマーチで鍛えられて、ついこの前陽菜達とダンジョン攻略に行ってた様な・・・。
「あの-・・・。」
「彼らは冒険者が離れていったこのギルドを、ずっと支えてくれていたんです。」
「そのー・・・。」
「どうかお願いします!!!」
マイルズさんが悲痛な面持ちで頭を下げている。どうしよう・・・言いづらい・・・。
「えーっと・・・その冒険者パーティーなんですが・・・多分温泉街を拠点にしながら、他のパーティーと合同でダンジョンに潜ってますよ。」
「・・・・・・・え?」
さっきまでの悲痛な面持ちはどこに行ったのか、ポカーンと口を開けて呆然としているマイルズさん。
「えーと・・・生きています。元気です。ピンピンしています!男女4人組のパーティーですよね?」
「そうです・・・。4人組の・・・。彼らは無事なんですね・・・。良かった・・・。」
ホッとして気が抜けたのか、マイルズさんはその場に座り込んでしまった。それだけ思い入れのあるパーティーなんだね。
・・・うん。温泉街で堕落しかけていた事は内緒にしておこう。
温泉街からアマリア聖王国まで連絡手段が無いから報告しようにも出来無いし、簡単に帰れる場所でも無い。これはハーメルの冒険者ギルドも心配してるかも?でもあそこのギルマスは信用できないしなぁ・・・。
でも今後の事を考えると、遠い所にも連絡が出来る手段が欲しいな。電話みたいな。
「桜さん。彼らを温泉街に受け入れて頂き、本当にありがとうございます。何かお礼がしたいのですが・・・。」
私が少し考え込んでいる間に気持ちが落ち着いたのか、マイルズさんはいつもの優しい笑顔に戻っていた。
「でしたら魔物の買い取りをお願い出来ますか?実はその為に来たのですが、買い取りの受付が混んでいてまだなんです。」
「そんな事でよろしいのですか?」
「その・・・大量なんです・・・。」
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