第155話 アマリア聖王国との同盟
「うわぁ〜・・・すごく変わったねぇ。」
久しぶりのアマリア聖王国の入場門前は、以前の姿とは違い大行列が出来ていた。その列の周辺には串焼き、プリン、ハンバーガー等々の屋台まで出ていて賑わっている。
列に並んでいるのは冒険者や商人だけでなく、馬車用の列には豪華な装飾の馬車の姿まである。あれはお貴族様の馬車なのかな?
(うわぁ、良い匂いがする~!)
(串焼き食べたい・・・。)
(ふふっ。後で食べさせてあげるから、今は我慢できる?)
((出来る!!!))
温泉街出発前に合流したコタロウとリュウは、影の中から護衛中。辺りから漂ってくる匂いに、食欲が刺激されている模様。列に並んでいる人達もこぞって買っている。
確かにこの匂いは堪らないね。私も後でコタロウとリュウと一緒に食べる為に、5本購入し収納しておく。
暫く並んで、やっと入場門検査が私の番になった。冒険者カードを門番に渡すと、確認した門番の顔色が変わった。蒼白だ。何やら慌てて人を呼びに行ってしまった。
えっ・・・何その反応。犯罪歴とかないし、おかしな表示は特に無いはずなんだけど・・・。
何だ何だと周りの視線が痛い。あまりの居心地の悪さにどうしたものかと考えていると、兵舎の方から上官らしき人が猛ダッシュでやって来た。
「桜様!!!大変お待たせしてしまい、申し訳ございません!!!どうぞこちらへ!!!」
「え?どこに?私はカルロさんに話が合って来たのですが・・・。」
「なるほど!かしこまりました!では私がご案内致します!おい、急ぎ教会へ先触れを出せ!」
「はっ!直ちに!!」
指示を受けた騎士が、これまた猛ダッシュで教会へと走って行った。そして何やら私の目の前には豪華な馬車が。
いやいやいやいや、何で馬車!?この対応は何!?
「・・・歩いて行くので大丈夫です。場所も分かりますし・・・。」
「そんなわけには参りません!大恩人の桜様に歩かせるなどあっては、私が叱られてしまいます!枢機卿からの指示でもありますので、どうか!!!」
「・・・分かりました。」
周りの視線に耐えかね渋々了承し、馬車に乗り込む。カルロさん・・・一体何でこんな指示を出してくれちゃったのかな・・・?
馬車がゆっくりと動き出したので、カーテンの隙間からこっそり街を眺める。街も前回来た時より更に人で溢れていた。
そんな街中に一際大きな建物が見えてきた。まだ営業はしてないみたいだけど、私が前回来た時には無かった建物だ。建物に付いている看板を何気なく見て驚いた。
【ローマン商会】
あれ?もう建物が建ってる!?今回は話合い話合いだけじゃ無かったの?
ローマンの行動の早さに驚きつつ、街の様子を更に観察していると、冒険者ギルドが見えてきた。こちらも入りきれない冒険者が入り口から溢れていた。良い狩り場でも出来たのかな?
前回来た時より活気溢れる街の様子が面白く、気付いたら教会に到着していた。
「桜様、到着致しました!お手をどうぞ!」
上官さんが手を差し出している。こういう扱いは慣れないけど、せっかくの親切を無下に断るわけにはいかないよね・・・。
「ありがとうございます。」
上官さんの手を借りて馬車を降りると、教会前にずらりと司祭服を着た人達が並んでいた。その中にはカルロさんも居る。
「ようこそおいで下さいました桜様!聖王様がお待ちですので、こちらへどうぞ。」
「カールーローさーん。後でお話し合いしましょうね?」
「えっ!?は、はい!」
理由は分からないまでも、私の不穏な空気を察したカルロさんは、とっても良いお返事。毎回この対応をされたら堪らない。後でしっかりお願いしておかないとね。
カルロさんに連れられて入った部屋は、豪華に飾られた応接室らしき部屋だった。そしてそこに銀髪碧眼の20代ぐらいの若い男性がにこやかに立っていた。
「初めまして。私はこのアマリア聖王国の聖王、ルイ・アーサー・デッラ・アマリアと言います。どうぞお見知りおき下さい。」
聖王・・・アマリアの性・・・。まごう事なきこの国のトップだね・・・。
「私は桜と言います。この度カティアの森の中に造った【温泉街】と言う名の独立国の主となりました。本日は当国と同盟を結んで頂けないかと、お願いしに参りました。」
「大恩ある桜様の頼みなら、喜んでお受け致します!」
まさかの即答。えっ?こんな簡単に決めて良いの?大丈夫?心配になるレベルだよ。
「ふふふ。ご心配ありがとうございます。これでも人を見る目は確かなのですよ?それに桜様はこの国に再び信仰を取り戻して下さった大恩人。心より感謝申し上げます。」
聖王様が私に向かって頭を下げると、カルロさんや他の司祭さん達まで頭を下げる。
「困ります!お願いですから、頭をお上げ下さい!」
私がゼノス様に恩を返したいが為に、ある意味利用したようなもの。ここまでされると少し罪悪感が・・・。
「マイルズの言ってた通りのお方ですね。」
頭を上げた聖王様が、楽しそうに笑っている。マイルズさんは一体何を言ったのかな?
「考えてることが顔に出やすい正直な人、とお聞きしていました。」
「あぁ、なるほど・・・。」
確かに最近色んな人に言われるなぁ。昔はもっとポーカーフェイスが出来た気がするんだけど、この世界があまりにも楽しくて表情筋が緩んだのかも。
「ところで桜様。温泉街がどのような国なのかお聞きしてもよろしいですか?」
「国というよりは大きな街なんですけどね。」
聖王様に温泉街について説明する。その説明の中で特に温泉というものが分からなかったみたいなので、鞄から出したかのように収納から元気湯を3本取り出してテーブルの上に置く。
「この温泉は飲んでも効能が得られるので、もし良ければどうぞ。疲れが取れて元気が出ますよ!」
まずは私が毒味とばかりに1本飲む。
ゴックゴックゴック。プッハー!
うん、美味しい!シュワッとしていてスッキリするし、気分爽快!
私の飲みっぷりが気になったのか、聖王様もカルロさんも瓶に口を付ける。最初は恐る恐る舐めたかと思うと、味を確認した2人が喉を鳴らして一気に飲み干した。
「これは初めての感覚ですが、シュワシュワとしているのがとても面白く、味も大変美味しかったです!」
「もしやこれはイザヤさんに桜様が差し入れられた飲み物でしょうか?」
「そうです!ローマン商会の誘致をお願いする時に、試飲用としてお渡ししました。」
「なるほど、それで!イザヤさんがやけにローマン商会の誘致を急がせるので、何かあるとは思っていたのですが、これが目当てでしたか。」
イザヤさんそんなに気に入ってくれてたんだ。後で差し入れしようかな。
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