第154話 桜国主になる

 リアム君からの予想外の質問に、思わず聞き返してしまった。

 確かにここの温泉街を作る上での責任者にはなったけど、実質名前だけでフェデリコに任せてるし・・・。この場合フェデリコが君主なんじゃないの?


「この場合君主ではなく国主なんじゃないかな。」

「確かにそうですね!」

「なるほど!」

「いやいやいや、そこじゃないから!」

「「「 え? 」」」

 私が悩んでる内容を勘違いしたフェデリコと、その内容に同意したカリオとリアム君。違うよ。そうじゃないのよ。


 フェデリコとカリオの反応から、どうやら2人は私がトップだと認識していたらしい。もしかして他のメンバーも?

 私としては、作りたいと言い出した責任をとって責任者とは言ってたけど・・・。そこまで深く考えた事なかったな。


「温泉街の収益、商品、その他にもダンジョンについて等、温泉街に関わる諸々をフェデリコさんから聞きました。

 これだけ価値のある温泉街を他国、特に帝国やシューレ王国が見逃すとは思えません。この温泉街を守りたいなら、早急に!独立国家だと諸外国に認識させる必要があると思います。出来るなら後ろ盾も欲しいところですね。」


 どうしたものかとうーんうーんと唸っていると、リアム君から現実的な説明追い討ちが入った。そこまで差し迫っているとは思いもよらなかったよ。


「私も対策をとは思っていたのですが、何分仕事に忙殺されてたもので。」

 フェデリコからの苦情はスルーします。


「なので桜さん。腹を括って下さい。」

「えっ!?」

「リアム君、よく言った!」

 フェデリコの反応に納得はいかないけど、ここまで皆を巻き込んだからにはやるべきなんだろうな・・・。まだダンジョン攻略とか、この世界の見た事ない場所とか見て回りたかったな。


「大丈夫!主な仕事は今まで通りですよ。実務はフェデリコさんとカリオさんと僕で回します。」

「えっ!?本当!?ダンジョン攻略行っても良い!?」

「差し迫った事がない時は大丈夫ですよ。」

「やったぁぁぁぁぁぁ!ありがとう!私やるよ!」

「そんなぁぁぁぁぁぁ!やっと楽できると思ったのにぃぃぃぃ。」


 絶望するフェデリコを横目に、思わず小躍りしてしまう。リアム君頼りになるなぁ。あ、そうだった。中身は40歳の元公務員さんなんだった。つい可愛らしい見た目で忘れてしまうよ。


「それでは今は差し迫っている状況ですので、しっかりと働いて下さいね。」

「えぇぇ!?」

 リアム君は上げて落とすタイプなんだね。今後の為にしっかりと覚えておきます。


「では今後についてなのですが、国家間の同盟を結べる様なツテは無いですか?」

「どの国でも良いのかな?多分アマリア聖王国とツヴェルク王国なら大丈夫だと思うんだけど。」

「人間との国交は滅多に結ばないとされるドワーフの国のツヴェルク王国!?それに聖なる地であるアマリア聖王国ですか!?」

「その二国なら確実かと。」


 頷くフェデリコに驚き固まるリアム君。そういえばまだ今までの話が出来てなかったね。今度ゆっくり聞いてもらおう。

 

「確実・・・ですか。それはまた凄いツテがあるんですね。では桜さんは、その二国と同盟を結んで来てください。」

「はーい!」

「軽っ!本当に大丈夫ですか?」

「大丈夫!大丈夫!」


 私の返事に不安そうな顔をしているね。これはやれば出来るという所をビシッと見せておかねば!


「そうそう桜様。確かローマンが今ツヴェルク王国に居るはずです。出来ればそちらの手助けもお願いしますね。」

「はーい!」

「本当軽っ!大丈夫かなぁ・・・。」


 ブツブツと何か呟いているけど、聞こえなーい。まずは結果を出して信用を得ないとね。


「忘れるとこだった!伝票を大量に計算するのに、暗算じゃ効率が悪すぎるんです!出発する前に算盤作って下さい!」

「了解!ドワーフに作れないか聞いてみるね。」

「もし出来るのなら多めに発注して下さい!」

「はーい!それじゃあ行ってきます!」

「本当に頼みましたよ!」

「「行ってらっしゃいませ!」」


 執務室を出た足でボルグに算盤の依頼をすると、目を輝かせて請け負ってくれた。これで計算するのに少しは楽になるかな。


 それじゃあまずはアマリア聖王国に行きますか!イザヤさんに何か手土産持っていくべきか・・・。あ、何だか少し嫌な予感がする。



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