第152話 移住

 ズルズルズルズル


「蕎麦うめーーーーー!!!」

「久しぶりのざる蕎麦!美味しすぎる~!」

「まさか異世界で蕎麦が食べられるなんて・・・。美味しい・・・。」


 ダンジョンから戻って来た大河、陽菜、優斗が、お蕎麦に舌鼓を打っている。優斗に至っては若干目が潤っている気がする。どうやら蕎麦が好物だった模様。


 リアム君とお爺さんが温泉街に来て早5日。この5日間は怒涛の様に過ぎて行った。



 2人が温泉街に移住して来た日、まずは温泉街を案内して回る事に。

 リアム君には明日からフェデリコの補佐をしてもらう事になっている。その前に温泉街を体験して貰いたかったのもある。


 ギムルさんの武器屋、ミレイユ姐さんの雑貨屋、ノアの鋳物屋、グレイソンの魔道具屋、エルフ三姉妹の服屋、ヘレンの甘味処、教会、野菜畑、訓練場や厩舎にも顔見せも兼ねて案内する。


 皆新しい蕎麦という食べ物に興味津々。プレオープンも兼ねて、従業員にお披露目する日を作った方が良いかもね。


 野菜畑では今日も活き活きとした野菜が沢山出来ていた。その隣に新しく、蕎麦を植える畑も作ってある。

 ソーヤーも蕎麦という新しい植物を育てる事に意欲を燃やしている。ソーヤーならきっと元気な蕎麦を育ててくれる事だろう。


 最後はお爺さんに営んでもらう蕎麦屋へと案内する。

「これは・・・暖簾ですか!?」

「そう暖簾だよ!何となくのイメージなんだけど、結構良い雰囲気じゃない?」

「はい、とても!」

 久しぶりに蕎麦以外の日本の文化に触れたリアム君は少し興奮気味。


 外観に満足したリアム君とお爺さんが、少しソワソワしながら蕎麦屋の中へ入る。

「うわぁーーー!なんだかとても懐かしい雰囲気です!」

「これはまた、洒落た店だのう。このテーブルは一体どうなってるんだ?」

「これは!掘りごたつですか!!??」

「せいかーい!靴を脱いでゆっくりしてもらいたいと思って作ったの。」


 移動手段が馬車、馬、徒歩のこの世界。冒険者の多くは徒歩で移動するはず。だからゆっくり足を伸ばして寛げる場所があるのも良いかと思うんだよね。


「こんな良い店をわざわざ建ててくれたんかい?」

「お爺さんが作る美味しい蕎麦の為なら、これくらい訳ないですよ!」

「それじゃ張り切って蕎麦打たなきゃな!」


 お爺さんが力こぶを作ってニカッと笑う。中々の力こぶが飛び出している。

 お店を気に入って貰えた様で良かった。私も今度掘りごたつで足伸ばしながら、ゆっくりお蕎麦を堪能させてもらおう!


 蕎麦屋を出た後は、本日の締め括りに温泉へ。今日は初日だし、折角なので宿舎の温泉ではなく男湯へ案内する。

 商品用の温泉はまた落ち着いた頃に案内するとして、今日はのんびり湯に浸かって疲れを取ってもらおう。


 温泉に向かう途中、1本の樹の前でリアム君が足を止める。そう、桜の木の前で。


「桜だ・・・。」

「うん。詳しくは今度話すね。」

「・・・うん。」


 日本に居た時は、春になると自然と目に入って来た桜。それがまさか、こんなにも心に染みて、目が離せなくなるとは思わなかったな。

 陽菜達もそうだったけど、やっぱりリアム君も同様に感じたらしい。暫く桜を静かに眺めていた。


「お待たせしました。行きましょうか。」

「もう良いの?」

「はい。それにこれからはいつでも見られますから。」

 そう言ったリアム君の目頭が、少し濡れていたのは見なかった事にしておこう。


 2人を男湯へ案内した後、私も女湯へ。相変わらず女神達の楽しそうな声が、壁の向こうから聞こえてくる。

 私はリアム君達より早く出る為、今日は壁向こうへは行かずに元気湯へ。美肌の湯に女神達と入ると、中々離して貰えないんだよね。


 女湯から出て、桜の下で湯冷ましに紅茶を飲んでいると、男湯から出たリアム君とお爺さんがやって来た。その足取りは軽そうだ。


「桜さん!あの湯はなんなんだ!儂の古傷が治ったぞ!?」

「あれは傷湯といって、どんな怪我でも治るこの温泉街の名物の温泉ですよ!治って良かったですね!」

「良かったんだが・・・しかし何年も前に完治した古傷なのに・・・。」


 何やらお爺さんがブツブツと呟いているけど、とりあえずスルー。元気になるならそれが1番だよね!


「桜さん、もしやチート能力持ちですか?」

「そうだね。後から神様に貰った能力だけど、チートだと思う。詳しくはまた明日説明するね。」

「何だか聞くのが怖いですけどね・・・。」


 リアム君が何かを察したのか、若干怯えている気がする。

 大丈夫!リアム君はあくまで第二補佐官。そこまでの負担はかからないはず・・・。多分。


 そんな話をしながら、今夜の宴会場兼宿舎へと向かうのだった。



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 いつも読んで下さっている皆様へ



体調不良の為、暫く新作を投稿出来ずに申し訳ありませんでした。

回復したので、また本日より投稿していきたいと思います。


いつも応援♡や評価★、そしてコメントをありがとうございます!励みにさせて頂いてます!

これからも楽しいお話を書いていきたいと思いますので、読んでもらえると幸いです!



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