第143話 久しぶりのグロッキー
「うぉぇ。」
「どうした桜!大丈夫か!?」
「桜ちゃん、昨日は珍しく飲みすぎちゃったねー。」
二日酔いという名の最悪の状態異常で、起き抜けからグロッキー。まだ自分の息がお酒臭い気がする。
収納から急いで回湯を出して飲むと、すぐに気分爽快!生き返る~。
皆も昨日は湯水の如くお酒を飲んでいたから、今朝はまた屍の山が高く築かれている事だろう。
そんな予想を立てながら1階へ降りると、意外な事に誰も居なかった。不思議に思いMAPで所在を確認すると、女湯と男湯に居るのを発見。
皆二日酔いを治す為に、回湯を使ってるのかな?
あれ?ギムルさんが男湯に居ない。
「おう、起きてたか!」
「うわっ!ビックリしたー・・・。おはようございますギムルさん。」
MAPに気を取られてて、背後の気配に全く気付かなかった。丁度MAPで探してたギムルさんは、灯台もと暗し。大熊亭の部屋にいたらしい。
「ギムルさん二日酔いは大丈夫?昨日相当飲んでたよね?」
「あれぐらいじゃあ、俺は潰れないぞ!他の奴らは真っ青になってたがな!ガッハハハハハ!」
大笑いしているギルムさんは、確かに二日酔いの素振りは全く無く通常運転だ。
酒飲みと言われるツヴェルク王国のドワーフ達でさえ飲み過ぎると潰れてしまうのに、ギムルさんは本物の酒豪だね。
「ギムルさん朝食は?」
「まだだ。ガインに作らせようと思ってたが、あいつも真っ青な顔で温泉に入りに行ってしまってな。」
あー・・・、想像が付く。レオさんやヒューゴみたいに大騒ぎする訳じゃないけど、淡々とグラスが空いていくんだよね。
「それなら私が作りますね!」
「おっ!久々に桜の料理が食えるな!じゃあアレは作れるか?潰した肉を焼いて、パンに挟んだやつ!」
どうやらハンバーガーの事らしい。ギムルさんらしい言い回しに、クスッと笑ってしまう。それではご期待に答えましょう!
「すぐに作るので、座って待ってて下さいね!」
「おう!」
どうせ作るなら、皆の分も作っておこう。パンは大量に焼いたストックがまだ収納にあるけど、ハンバーグは在庫がもう無い。
オークジェネラルの肉をミンチにし、パン粉や卵、調味料と混ぜ成形し、フライパンで焼いていく。
グゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・
美味しそうな肉の焼ける匂いに、思わずお腹が鳴ってしまう。
「美味そうな匂い・・・」
「お腹空いたよー。」
「じゃあ美味しく焼けたか、味見してくれる?」
「「 やったー!!! 」」
焼きたてのハンバーグにケチャップを乗せ2匹の前に置く。
目を輝かせたコタロウとリュウが、美味しそうにモグモグと味わって食べている。
ずっと眺めていたい衝動を何とか押さえ込み、ハンバーグの仕上げに取り掛かる。
付け合せはフライドポテトとコーンスープ。
コーンスープは、畑で取れたとうもろこしを使って作ってみたら、とても甘くて美味しく出来た。お酒を飲んだ後の胃にも優しいはず。
「お待たせしましたー!」
「「「「「「「 待ってました!!! 」」」」」」」
ハンバーガーを持って食堂へ戻ると、回湯を飲んで復活した面々が腹を空かせて待っていた。
でも慌てることは無い!既に作って、冷めないように収納してあるからね!
「ちゃんと皆の分も作ってあるよ。」
テーブルに人数分のハンバーガーとポテト、コーンスープを並べていく。もちろんコタロウとリュウは2人前で。
「さあ、召し上がれ!」
「「「「「「「 いただきます! 」」」」」」」
パクリ
「うんまーい!」
「これだよコレ!やっぱり桜が作ったハンバーガーが1番美味い!」
「この黄色いスープ、甘くて美味しいわ!」
「揚げた芋がこんなに美味いなんてな。いくらでも食えるよ。」
良い反応をありがとう!作り手冥利に尽きるね。
ケチャップも出来たし、ハンバーガーに使いたかったけど、今回は皆の知ってる味のままにしてみました!テリヤキバーガーも大好き!
「そうそう、今この街にツヴェルク王国のドワーフ達が来てるんだって?」
「うん、そうだよ。街作りに手を貸してもらってるの。」
おかげで素晴らしい建物が出来上がった。子供達の家なんて、私が住みたいくらいの楽しい出来になっていた。
「それなら追加で、俺の店を建ててもらえねーか?腕もなまるし、いつまでも働かない訳にはいかねーからな!」
「出来たら私のお店もお願いできないかしら。」
そうだった!まだ2人に話してなかった。うっかり忘れてたわけでは決してない!
「2人のお店ならもう運んであるよ!ミレイユさんのお店はすぐにでも使えると思うけど、ギムルさんのお店は略奪された後でかなり荒れてたよ・・・。鍛冶場は大丈夫そうだったけど、後で確認してみてね!」
「「 は? 」」
固まるギムルさんとミレイユさん。レオさん達も驚いている。
対称的に、アンナ達は少し可笑しそうに笑ってる。今までも前例があるから、慣れたとも言う。
「後で見て確かめてみな。嘘じゃないからさ。」
「いや、嘘とは思っていないが・・・。」
「良く考えれば、大熊亭ごとここに来てるし可能よね。」
冷静にミレイユ姐さんに分析されている。あの謎の聖職者での子芝居をしたのが私だとバレてから、どうにもその話は小っ恥ずかしい。
「でも一体いつ運んだんだ?」
「飲み会の途中でこっそりと。」
「「・・・・・。」」
あれ?2人が黙ってしまった。皆に顔を向けると、笑いながら肩を竦めている。
夜のうちが良かったんだから、仕方ないのだよ!
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