第141話 あの日の約束
私の能力について一切口外しないという誓約を交わした後、創造神様から能力を貰った話から温泉街を作るに至るまでを掻い摘んで説明した。
特にラースを出る原因になった騎士とのいざこざや、その前にあったラース商業ギルドのギルマスとのやり取りを話すと、レオンさんの顔が曇った。
「商業ギルドのギルマスもか。」
「も?」
「ああ、ラース冒険者ギルドのギルマスの動きもおかしいんだ。国王が荒くれ者の冒険者を呼び集めたせいで、地元の冒険者とのいさかいが耐えない。ギルマスに仲裁を求めても、のらりくらりと躱すだけでな。」
大熊亭でもレオさんの仲間が愚痴ってた話だね。戦力を集めた結果、集まったのは荒くれ冒険者ばかりだったとか何とか。
冒険者ギルドの戦力集めに、商業ギルドの資金集め。戦争準備確実だね。
「このままじゃ俺らまで戦争に駆り出されかねないと危機感を感じてた時に、カティアの森に大熊亭という宿屋が出来たという噂を聞いてな。しかもそこを拠点にしてダンジョン攻略してる連中が居るっていうから、もうこれは絶対アンナとガインだ!と確信したんだ。」
アンナとガインが元騎士というのは、昔からラースで暮らしてる人達は当然知っている。レオさんもラースで生まれ育ったらしく、アンナとガインの強さは知っていたらしい。むしろ憧れてたのかな?
そんなアンナとガインが挑むカティアダンジョンに、レオさんも挑んでみたくなったらしい。それで大熊亭を目指してラースを出たそうだ。
「ギムルさんは何で一緒に来る事になったんですか?」
「国王から武器や防具を接収すると通達が来たからだ。」
「「「 は? 」」」
私とフェデリコ、そして何故かレオさんの声が揃った。レオさん事情聞いてなかったの!?
「いやいやいや、接収!?一般の武器屋から!?ありえんだろう!何やってんだよあの馬鹿王は!!!」
元宰相が頭を抱えている。まあフェデリコを軟禁する様な王だしね。自分の利益の為なら、国民の生活がどうなろうと知ったこっちゃなさそうだよね。
「丁度ラースを出る前にと、レオが挨拶に寄ってくれたもんだから、それに急遽便乗させてもらったんだ!がはははは!」
「本っっっっっ当に急すぎて、ほとんど置いてくる羽目になったっす。俺が精魂込めて作った防具もっすよ!」
恨めしそうな目でギムルさんをジトっと見るテオ君。
「またここで作れば良いだろーが!良いよな?」
テオ君の背中をバシバシと叩きながら、楽しげに私に視線を向けたギムルさんから素晴らしい提案が!もちろん断る理由は全くない!
「もちろんだよ!やったーーー!これで武器、防具の心配は要らないね!」
まさかギムルさんがこの温泉街で武器屋をやってくれるなんて!思わず小躍りしちゃう程嬉しい!
コンコン
丁度話の区切りが付いたタイミングで、ドアをノックする音が鳴る。
大熊亭のドアをノックするのはクレマンだね。アンナとガインは気にせず入るはず。
予想通り、扉を開けて最初に入ってきたのはクレマン。その後ろにアンナ、ガイン、ヒューゴ、それから起きたのかイアンさんとミレイユ姐さんも居た。
「おっ!皆集まってるね!」
「桜ー!久しぶり!怪我治してくれたんだって?ありがとな!」
「桜ちゃん、本当にありがとう。死んでもおかしくない怪我だったのに、傷1つ残ってなくてビックリしちゃったわ!」
イアンさんもミレイユ姐さんも、すっかり怪我が良くなってるみたいでホッとする。本当に間に合って良かったよ。
2人からも話を聞きたいけど、その前に2人はご飯だね。コタロウとリュウも腹ぺこで力が入らないのか、床にポテンと座り込んでいる。
「待たせてごめんね!今ご飯を出すからね!」
食堂で貰っておいたオムライスとコンソメスープを、急いで2人と2匹の前に置くと、そこかしこから盛大に音が鳴った。皆さんさっき食べてましたよね?
「「「「 いただきまーす! 」」」」
驚異的な速さで2人と2匹のオムライスが消えていく。ミレイユ姐さんは食べ方こそ綺麗だけど、勢いはイアンさんと変わらない。ある意味凄いと思う。
「今のうちに飲み物取っておいでよ。」
「い、良いのか!?」
「ヒャッホー!まずは何から飲もうかね。」
ヒューゴ、アンナ、ガインが嬉しそうにドリンクバーへ飲み物を取りに向かうのに、不思議そうな顔をしたレオさん達も付いて行く。
とりあえず私は残りのメンバーの為に、つまみになりそうな物を収納から出して並べておこう。
タコの唐揚げに海老のアヒージョ、それと枝豆!畑に大豆を植えてて良かった!
各々飲みたいお酒を持って帰って来た。レオさんさん達も無事にお酒を選べた様で何より。
「うおっ!美味そうな匂いがする!」
「これ食って良いのか!?」
「もちろん良いよ!でも皆お酒を飲みすぎないでね!」
「「「「「「 はーい! 」」」」」」
良い返事だけど、いまいち信用ならない。まあでも、今日は久しぶりの再会を祝って無礼講といきますか!
「桜ちゃん、乾杯しよう!あの日の約束、やっと果たせたね。」
「ふふっ。本当ですね。それじゃあ再会を祝して、乾杯!」
「乾杯!」
グラスを軽く触れ合わせてから、一気に煽る。
ミレイユ姐さんとの飲み会の約束を、まさか温泉街で果たせるとは思わなかった。今夜はお酒が進みそうだな。
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