第140話 あっさりバレた
「ふ~~、食った食った。」
「こんな美味い飯食ったの久しぶりですよ!」
「もう食えねーーー!」
ペロリと大盛り3人前を完食し、満足気なレオさんと、パーティーメンバー達。
出会った時より見知らぬ顔が2人増えている。
いや、前に大熊亭にレオさん達と食べに来てた気がする。管巻いててハンバーガーが出せなくて困った事を思い出した。
レオさん達より一回り下ぐらいかな?
きっと面倒見の良いレオさんの事だから、一緒に連れ出してあげたんだろうな。それなら私も協力してあげなきゃね!後でアンナに頼んでおこう!
「酒はまだ飲んでも良いんだよな!?」
「事情を聞きたいから場所は大熊亭に変えるけど、まだまだ飲めるから安心して。」
ギムルさんはまだまだ飲み足りない模様。久しぶりに会えたんだし、美味しいお酒で乾杯したい!
「クレマン。フェデリコとガイン、ヒューゴを大熊亭まで呼んでくれる?」
「かしこまりました。」
優雅に一礼して去って行くクレマンの速さが尋常じゃない。歩いてるはずなのに、瞬きする間に消えていた。
「あの爺さん、何者だ?」
クレマンの唯ならぬ動きに、警戒している気配がレオさんからする。
「優秀な執事だよ。元王宮暗部隊長だけど。」
「・・・はい?」
「はいはい。詳しい話はあとあと!まずは大熊亭まで移動するよ!」
温泉街を案内がてら、歩いて大熊亭まで向かう。途中途中で私を見かけた従業員から声を掛けられ、進捗の報告を受ける。
皆活き活きと楽しそうに話してくれるのはすごく嬉しいんだけど、中々大熊亭に辿り着けない。
「・・・すごい街だよな。カティアの森のど真ん中なのに、誰も不安な顔してねえ。」
「それにさっきの料理や酒は、ラースでも見た事ないぞ!」
「温泉も素晴らしかったですよー!あんな効能見た事ないです!」
レオさん、ギムルさん、マリーさんに手放しで褒められ、誇らしい気持ちになる。従業員の皆が頑張ってくれてるおかげだね!
「ところで桜さん。俺の腕を治したあの薬って、ここの温泉っすか?」
「そうそう!ここの温泉だよ!あの時はまだ温泉スキルの可能性を手探りだったから、治るかどうかは一か八かだったんだよね。」
「っつー事はやっぱりあの聖職者は、桜の知り合いか。」
「・・・あっ。そうかも?」
「何で疑問形なんだよ!?」
ギムルさんの突っ込みは笑って躱す。テオがサラッと聞いてくるから、思わずペロッと答えちゃったよ。
温泉については隠してないんだけど、変身スキルについては知らないメンバーが居る所では話せない。すまぬよ。
「桜!魔物狩って来た!」
「たくさん倒したよー!エラいー?」
魔物の討伐が終わったコタロウとリュウが、駆け寄って来た。怪我一つ無さそうで、ホッと胸を撫で下ろす。どうしても毎回心配になっちゃうんだよね。
「エラいエラい!ありがとね!」
コタロウとリュウをヨシヨシしていると、後ろから呟き声が聞こえて来た。
「あの時見た聖獣フェンリルっす。」
「おいおいおい。どういう事だこりゃ。」
テオとギムルさんが、驚きに目を見開いている。
あの時って事は、大熊亭ごと転移した時あの場に2人垣共居たって事だ。しかもコタロウとリュウは普通のフェンリルとは異なった見た目。見間違い様がない。詰んだね。
「はい、その聖職者は私です。」
ついでとばかりに、目の前で謎の聖職者へと変身する。
ギムルさん達には元々隠すつもりは無かったし、後の細々とした事後処理はフェデリコに丸投げしちゃおう。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「桜の姿が変わった!?」
「えっ!?ええっ!?」
一様に混乱する皆を連れて、とっとと大熊亭まで転移する。もう私一人での対応は無理!
「フェデリコ!助けて!」
変身と転移の両方を見た皆は、絶賛大混乱中。その間にフェデリコへと今の状況を伝える。説明が終わると、深いため息をつかれた。
仕方なかったんだよ!?誤魔化せない状況だったんだよ!?これは不可抗力です!
「皆様の事情を聞く前に、まずは温泉街と桜様の能力について説明致しますが、これは極秘事項ですので、誓約を交わして頂きます。宜しいですね?」
有無を言わさぬ文言のフェデリコに合わせる様に、サッと皆の前に誓約書を置いていくクレマン。さすがの素早さです。
「恐縮でございます。」
だから口に出して無いからね!?
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