第139話 マリーさんの事情
「はぁ~~~。気持ち良い~~~。」
「向こうに髪と肌が綺麗になる温泉もあるから、次はそっちに入りに行こう!」
「きゃー!行く行くー!」
アンナが活き活きと、マリーに温泉を案内している。口には出さないけど、やっぱり義妹に会えた事が相当嬉しいようだ。
疲れや細かい傷を癒すため、現在大熊亭の温泉へとやって来ている。私はアンナ、マリーさんと一緒に女湯へ。男湯はクレマンに任せてあるので大丈夫!
ちなみにコタロウとリュウは、血の匂いで集まった周辺の魔物を、コルト達と一緒に駆除してくれている。
「それで何だってマリーが、レオ達と一緒にカティアの森に入る事になったんだい?」
それそれ。ギムルさんやミレイユ姐さんにも驚いたけど、マリーさんは商業ギルドの受付嬢という仕事がある。そんなに長期間休めるのかな?
「皆さんが大熊亭と一緒に消えた後、街中凄い騒ぎになってたんですよ?テオ君の腕を治した聖職者と、大熊亭ごと消えた人物が同じと分かってからは特に。」
「あー・・・なるほど。」
アンナが苦笑いしながら私を見てくる。温泉の効能を知ってる人なら、出処は私だって直ぐに分かっちゃうね。
「それで大熊亭のガインの妹という事で、私にしつこく行方を聞い来る人が日に日に増えて・・・挙句の果てには神殿や王宮からも呼び出される始末で・・・。」
きっと上から目線のふんぞり返った態度で問いただされたんだろうな。
「このままだと私を人質に取りそうな気配さえ感じて。そんな時に丁度レオさん達が、カティアの森の中に大熊亭があるらしいって情報を掴んだ来たの。行ってみるって言うから、お願いして同行させてもらって今に至ります。」
この世界の回復系ポーションは下級ポーション、上級ポーション、特級ポーションがある。
そして特級ポーションを使ってやっと部位欠損は治せる。その特級ポーションと傷湯は同じ回復効果。そう、同じ効果なんだよね?
「神殿や王宮にも特級ポーションはあるだろうに、何でそんなに謎の聖職者を探してるの?」
「傷湯だけならここまで大事にはならなかっただろうさ。だけど聖獣フェンリルが付き従い、転移まで使える。謎の聖職者を創造神様の遣いだと言い出すのは、簡単に想像出来るよ。」
アンナの考察に、マリーさんがウンウンと頷いている。
え?全く想像出来ませんでしたけど?聖職者の姿にしたのが失敗だったのかな。
「何考えてるか手に取るように分かるけど、そうじゃないからね?」
「えぇ!?違うの!?」
「はぁ~・・・、まあ桜はそれで良いよ。その分あたしらが注意を払うからさ。」
何となく釈然としないけど、今はマリーさんが無事だった事を喜んでおこう。
「それじゃあマリーさんは、これからもここに居られるの?」
「・・・ご迷惑じゃなければ、お願いしたいです。」
私の質問をネガティブに捉えたのか、マリーさんはすごく不安そう顔をしている。
「迷惑じゃないよ!むしろ待ってた人材だよーーー!マリーさんゲットだぜ!」
にひひ。これで前にフェデリコに話した、簡易冒険者ギルドを作れる!ギルドというと誤解を生むかな。斡旋所、互助組織、紹介所、うーん・・・組合、組合が1番しっくり来るかも!冒険者組合!これで行こう!
「マリーさんとアンナにもお願いしたい事があるんだけど、それはまたおいおいで。今は温泉を堪能して、美味しいご飯を食べて、旅の疲れをしっかり癒そう!」
「はーい!!!」
「あいよ!」
マリーさんは安心したのか、声が以前と変わらない明るい声音に戻った。やっぱりマリーさんはこうじゃなきゃね!
女湯から出ると、クレマンが外で待っていた。
「男性陣はもう上がられてますよ。今は宿舎の食堂で、先にご飯を召し上がっておいでです。」
「分かった!皆の案内をありがとう!」
どうやら一歩出遅れたらしい。久しぶりに会えたからか、話に花が咲いてしまい、ついつい遅くなってしまったよ。
食堂に着くと、酒を片手に猛烈な勢いでご飯をかき込んでる集団が目に入った。当然レオさん達だ。
「おう!先に食ってるよ!」
「ここは酒も飯も驚く程に美味いな!特に酒はいくらでも飲める!」
さすがドワーフ。ギムルさんもお酒には目がない様だ。そんなギムルさんに負けず劣らず飲んでるレオさんも、相当な酒豪だね。
今夜のメニューは、オムライスと具だくさんコンソメスープ。お酒はビールとブランデーが準備してある。
まずは具だくさんコンソメスープから。野菜の甘みがスープに染み込んでいて、優しい味わい。野菜は口に入れるとホロホロと崩れるほどしっかりと煮込まれていて、とっても美味しい。
オムライスは元祖オムライス。薄い卵に、チキンライスが包まれていて、卵の上には更にケチャップを乗せる。
ふんわり卵のオムライスも好きなんだけど、オーソドックスなオムライスもまた美味しいんだよね~。
「このスープ美味しい!」
「これもまた桜のレシピかい?相変わらず見た事ない料理だけど、見た目も綺麗で味も美味いね!」
2人にも好評の様で何より。もちろん私の手も全く止まらず、口にスプーンを運んでいるよ。オムライス大好物なんだよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます