第128話 料理ジャンキー
タコパの準備の前に、まずは腹ごしらえ。丁度お昼になったので宿舎の食堂へと向かう。
最近は料理長達の手間を増やさないようにする為、基本的に昼食と夕食は、皆が宿舎の食堂で食べる様になった。自分で作って食べたくなった時は、大熊亭の厨房で。
宿舎に着くと、中から甘~い匂いが漂ってくる。美味しそうではあるんだけど、外まで臭ってくるという事は・・・。
「甘い匂いがする!」
「食べたーい!」
一早く反応したコタロウとリュウが、私を背に乗せたまま猛スピードで食堂へと走り出した。
食堂にそのままのスピードで飛び込むと、噎せ返るほどの甘い匂いが部屋中に充満していた。
「おえっ。」
「うわあぁぁぁ!!!」
「鼻が曲がっちゃうよー!」
流石の私も気分が悪くなってくる。当然私より鼻の良いコタロウとリュウは悶絶している。とりあえず換気しよう!
食堂にある全ての窓を全開にし、風魔法を使って外から屋内へ新鮮な空気を送り込むのと同時に、別の窓から屋内の甘い空気を外へと追い出す。
グルグルと空気が循環するように回していくと、やっと匂いが落ち着いて来た。
「酷い目にあった・・・。」
「俺まだ鼻が変だよ!」
「僕もー!」
「あぁ!そんなに掻くと傷が出来ちゃうよ!これ飲んでみて!」
2匹がゴシゴシと鼻を前足で掻きむしっている。効くかどうか分からないけど、回湯を飲ませてみる。余程辛いのか、必死に飲む姿が可哀想なのに可愛い。
「「治ったー!!!」」
「効いて良かったー!」
2匹の元気になった姿にホッとする。
匂いの元を辿ると、どうやら厨房へと繋がるカウンターから匂いが流れて来ているのが分かった。
そして一連の流れをカウンターからこっそり見ている人達を発見。
「・・・で、そこの御三方。どうしてこんな事になってるのかな?」
「バレてましたか・・・。」
「ごめんなさい・・・。」
「すまん。」
しょんぼりとしながら出て来たのは、料理長、ヘレナ、ガインだった。
「昨日桜様が作られたレシピを、あれから作ってまして・・・。」
「えっ!?あの量を全部!?」
「はい・・・。」
っていうか今までずっと作ってたの!?睡眠は!?真っ黒ブラック企業もビックリだよ!
普段は甘味処で試作品を作っているけど、今回は量も多いという事で、宿舎の厨房で作る事にしたらしい。
そのせいできっと私達以外の犠牲者も居たはず。朝食の時は匂い大丈夫だったかな。
「今度から甘味の試作は甘味処のみ!それと試作を作るのは仕事の時間内で。就業時間はきっちり守ってね?守れないなら今後新作レシピは見せないからね?」
「「はい!気を付けます!」」
「ガインも夜遅くまで作ったら、アンナに言うからね?」
「分かった!」
ふぅ。これで再発は防げるはず。料理の事となると、3人共理性がどこかへ飛んで行くんだろうな。それとなくクレマンにも気にかけといてもらおう。
とりあえず大量に作ったというデザートを見に厨房へ行くと、作業台に所狭しと並べられたデザートと料理の数が圧巻だった。
いや一晩でよくこの量を作ったよね。
折りよく今からお昼時。料理の試作は希望者に食べてもらう事に。デザートはあとで子供達に差し入れしたら喜んでくれるかな。
「という訳で早い者勝ち!私はこのオムライスとコンソメスープで!」
「俺も!」「僕も!」
「「「あぁぁぁぁっ!!!」」」
私達は一早く狙いをつけていた料理をゲット!卵の練習をしたのか、オムライスは運良く3つ作ってあった。
3人の悲鳴が聞こえた気もするけど、気にしなーい!
「「「いただきます!」」」
チキンライスを包んだ卵にスプーンを入れると、湯気と一緒にケチャップの香ばしい匂いが漂ってきて食欲をそそる。
パクリ
「うんまーい!」
優しい味のチキンライスと卵だけで食べても美味しいけど、ここにケチャップが加わることで、より一層美味しさが増す。ケチャップ作って良かった!
コタロウとリュウは一心不乱に食べている。うんうん。美味しいと喋る暇が無くなるんだよね!
食後に紅茶を飲みながら、料理の改善点や作る時のコツ等を話し合っていたら、気付けば3時のお茶の時間がまじかに迫って来ていた。
急いで子供たちへデザートを差し入れしに向かう。料理長はさすがに夕食の準備があるので来られなかったけど、ヘレナとガインも一緒に行く事になった。
持って行くのは、苺のショートケーキとチョコレートケーキ、そしてアイスクリーム!もちろん溶けないように収納に入れて運んでるよ!
子供達とお世話係さんの住む家は、便宜上【 大樹寮 】と呼ぶ事になった。建物は木造建築で建ててあるから、木の温もりを感じられる。
「こんにちはー!」
「あーーー!桜様だーーー!」
「こんにちわー!」
「きゃーーー!大きな狼だー!」
子供達みんなの表情がすごく柔らかくなってる。キャッキャと楽しそうに笑ってて、自然と私も笑顔になる。
「今日はみんなに差し入れを持って来たよ!一緒に食べよう!」
「「「「やったーーーーー!!!」」」」
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