第129話 予防は大切
収納から苺のショートケーキとチョコレートケーキをワンホールずつ、それとアイスクリームの入った箱を取り出し机へ並べていく。
それを期待に満ちた目で子供達とコタロウとリュウが見つめてる。
「ねえねえ、これはなぁに?」
「それは苺のショートケーキっていう甘いデザートだよ。」
「こっちの茶色いのはー?」
「チョコレートを使ったケーキだよ。」
「この箱には何が入ってるの?」
「冷たくて甘いアイスクリームだよ。」
初めて見たものばかりで興奮気味の子供たちから質問攻めにあう。それだけ楽しみにしてくれてるって事だよね。実は私もかなり楽しみにしてたりする。
「じゃあケーキを切ってお皿に盛り付けておくから、皆手を洗って来てね!」
「「「「「「・・・手を洗う?」」」」」」
子供達だけでなく、大人も皆きょとんとした顔をしている。
あーれー?手洗い習慣がない?そういえば今までご飯の前に手を洗ってる人を見た事がない様な・・・?
しまったな。今まで全く気にして見てなかった事が悔やまれる。細菌とかウィルスなんて概念がそもそもないんだ。
石鹸やハンドソープが無いから、洗うとしても水洗いか泡立つ木の実で洗うくらいか。それだと今一安心出来ない。
よし!無いなら作ろう!石鹸は固めるのに時間がかかるし、ハンドソープにしようかな。もちろん大地を汚さない天然素材で。
容器はないから、ハンドソープの冷泉にポンプを直接付ければ使いやすいかも。
問題は出来上がった屋内に、温泉が作れない事だよね。温泉宿みたいに最初に温泉を作ってしまえば、後から建物を作れるんだけど・・・。今度石鹸も作ってみよう。
でも今は一先ず庭にある水道の横に作ろう。
「食事の前に手を洗うと、病気になりにくくなるんだよ!皆付いて来て!」
不思議そうな皆を連れて庭に出て、水道のある所まで行く。
さあ、始めよう!まずはいつも通り土台を作って、そこにポンプ付きのハンドソープの冷泉を作る。鑑定結果は【 手の全ての汚れを落とす冷泉 】よし!問題なし!
「これは一体・・・。」
「これはハンドソープと言って、手を洗う時に使うの。体を洗う時に皆が使ってるボディソープみたいな、手を洗う専用の洗剤かな。」
説明しながら使ってみせる。ポンプを1回押すと、中から純白の液体が出てくる。それを濡らした手でゴシゴシと擦ると、見る見る泡だっていく。指の間や手首までしっかり洗ったら、最後は水で綺麗に洗い流す。
「はい!これで手がピカピカになったよ。皆も真似してみて!」
「「「「「「はーい!」」」」」」
子供達が興味津々でポンプを押して、ハンドソープを手に乗せ、ゴシゴシと手を洗っている。
うんうん、上手に洗えてる!さて、私は今の内に準備を始めておこう。
全員が手を洗ってる間に、一足先に戻ってケーキを8等分にカットし、その隣にアイスクリームをスプーンで掬って添える。今度ノアにアイスディッシャーを作れないか聞いてみよう。
今居る人数は子供が6人、大人が6人、フェンリルが2匹の合計12人と2匹。
ケーキはそれぞれ一切れずつ収納して数を揃えれば、喧嘩も起こらないよね?
「出来たー!」
「あわあわ楽しい!」
「良い匂いがするー!」
日本で使っていたハンドソープをイメージしたから、香り付きになってたみたい。思わぬ副産物だね。
「それじゃあ皆食べたいケーキを選んで取ってね!」
「私は苺!」
「僕は茶色いやつ!」
子供達が楽しそうにケーキを選ぶ姿を、大人組はホッコリと見守っている。キラキラと目を輝かせて一生懸命選ぶ姿には癒されるよね。
子供達が選んだ後は、大人組が選ぶ。私は運良く食べたかったチョコレートケーキをゲット!久しぶりのチョコレートケーキに胸が踊っちゃう。
コタロウが選んだのは、私と同じチョコレートケーキ、リュウは苺のショートケーキ。すごく嬉しそうに尻尾が揺れている。
「いただきます!」
パクリ
「おーいーしーいーーーー!!!」
ココアスポンジに生地の間にはチョコクリームをサンド。更に周りをチョコレートでコーティングしたチョコレートケーキ。
ひと口食べた瞬間に、口いっぱいに広がるチョコレートの風味と、滑らかな口どけは悶絶級。濃厚なチョコレートの甘さで幸福感に包まれる。
「桜!これ美味い!また食べたい!」
「僕もー!でも今度はそっちのケーキも食べてみたーい!」
コタロウとリュウも大満足の美味しさだったみたい。今度両方作ってあげよう。
子供も大人も夢中で食べている。これなら甘味処でもきっと売れる!
これだけ甘い物を食べたんだから、あとでしっかり歯磨きするように子供達に言っとかなきゃ。
・・・あれ、そういえばこの世界の歯磨きって、何かの動物の毛で出来たブラシに塩をつけて磨くぐらいだ。そんな世界で、チョコレートなんて食べたら・・・。
「ああああああぁぁぁ!!!」
このままじゃ確実に虫歯になる!子供達だけじゃなく、大人にコタロウとリュウも!これは何か対策しなきゃ!
歯磨き粉じゃ、磨き残しがあった場合に不安が残る。マウスウオッシュが良いかな。
「桜様、突然叫ばれて何かありましたか!?」
「ご、ごめん!少し思い出したことがあって・・・。これからさっき使ったハンドソープの隣に冷泉を作るから、歯磨きした後にその水で口を濯いでくれる?甘い物を食べると歯の病気になる事があるから、それを予防出来るの。」
「承知しました!」
子供達の世話をしてくれる女性に頼んでから、ハンドソープの隣にマウスウオッシュの冷泉を作る。鑑定結果は【 口の中の汚れを全て落とす冷泉 】これで虫歯を気にせず甘味が食べれるね!
その後ハンドジェルとマウスウオッシュを量産し、各施設へ設置したのは言うまでもない。
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