第120話 お嬢様?
「というわけで、一挙両得!奪還&従業員大量確保作戦を決行します!」
「おーーーーーーー!!!」
「「「お、おーーー!」」」
フェデリコだけがノリノリで返してくれた。こういう時のフェデリコのノリは有難い。
エルミアさん、ララノアさんにはお店で待機していてもらい、フェデリコとカイを連れていざ奴隷商へ!
と、その前に、人目がない所で変身しておこう!今回はお金持ちのわがままなお嬢様風。金髪つり目で、少しキツい印象の少女。
「どう?お嬢様に見える?」
「ブハッ!」
「完璧かと。」
ヒーヒー言いながら笑ってる人は置いといて、さっさと奴隷商へ向かおう。もう次から絶対フェデリコは連れて来ない!
エルミアさんに聞いた場所へ行くと、2階建ての絢爛豪華な館が建っていた。MAPでは外観までは分からなかったけど、ゴテゴテしていてあまり良い趣味とは言えないな。
「いらっしゃいませ。当店は奴隷商とご存知でしょうか?」
「もちろんよ。じゃなきゃ来ないわ。」
扉の前に立っていた案内係の問に、敢えて傲慢ともいえる態度で返事をする。
お、敵意発生。MAPの印が赤に変わった。
「・・・それではこちらへどうぞ。」
扉を開けて中へと案内される。うーわー。中もこれまたゴテゴテと飾り立てられてて、センスの欠けらも無い。全てが高いのだろうけど、高ければ良いって物じゃないと思う。
応接室へと案内されたけど中には入らず、わがままお嬢様を炸裂させる。
「全ての奴隷を直接見たいのだけど、出来ないの?」
「・・・いえ、可能ですよ。ただ少々お嬢様には刺激が強いかと」
「お気遣いありがとう。でも構わないわ。この目で直接見て決めたいの。」
「・・・かしこまりました。」
明らかに私の態度にイライラしながら、奴隷がいる場所へと案内する。そんな彼の後を歩きながら、私の後ろで笑いを堪えきれてない馬鹿者の足を、靴の踵で思いっきり踏む。
「い゙っ!」
「?何かございましたか?」
「気にしないで。教育しただけだから。」
涙目のフェデリコを一睨みしてから、案内係にニコッと笑って先を促す。
特に気にすること無く前を歩き出す彼を、こっそり鑑定してみる。
ジャミル( 43 )
HP 700/MP 300
【魔法】
隷属魔法
【シークレット】
奴隷商の副支配人。犯罪歴有り。(窃盗、強盗、殺人、恐喝)
隷属魔法。これを使って奴隷紋を刻むわけね。追跡もこの人がするのかな。副支配人に犯罪歴と色々気になる所があるけど、気にしてる場合じゃない。
「ここと隣の部屋は、借金奴隷がいます。」
1人1人鑑定しながら見ていく。まだ幼い子供も沢山居る事に胸が痛む。
詳しいステータスは置いといて、今は犯罪歴があるかないかだけをサッと確認していく。
「とりあえず全員見せて。」
「・・・かしこまりました。」
この小娘が!とか思ってそう。実際は小娘って歳じゃないんだけどね。
「この部屋は戦争奴隷です。」
うわっ!強面ばっかりだ。片腕や片足の人が何人かいるけど、誰も犯罪歴がない。強くなる為に、必死に訓練してたんだろうな。
「この部屋と隣の部屋は犯罪奴隷です。」
当然犯罪歴がない人は居ないよね。ザッと鑑定してみると、1人だけ窃盗の犯罪歴のみの小さい女の子がいた。もしかして・・・。
「これで全員ですが、気に入った奴隷はいましたか?」
「これで全員?まだ一番奥の部屋にも居るように見えるんだけど?」
「あいつらは病気や怪我で、余命幾ばくもない奴隷ですが・・・。」
「見せて。」
副支配人は渋々ながらも、少し離れた場所にある部屋へと私を連れて行った。その部屋は異臭が漂い、咳き込む声が聞こえてくる。こんな部屋に居たら、治るものも治らないよ。
「今度こそこれで全てです。どうされますか?」
やっぱり地下の子達については、触れないのか。まあ予想通りだけどね。まずは大量の従業員確保だ!
「借金奴隷は1番前の彼と、その左側にいる彼女、あと1番後ろの茶色い髪の彼以外全員。戦争奴隷は全員。犯罪奴隷の小さい女の子。それとこの部屋の子達全てを購入します。」
「は?」
副支配人が口をあんぐりと開け、目を見開いて私を見ている。そんなに目を開けてると、乾燥するよ?
「聞こえなかった?借金奴隷は1番前の彼と」
「申し訳ありません!聞こえています!本当に今言われた奴隷全てを買われるのですか?かなりの金額になると思いますが・・・。」
「いくら?」
そうだった!芝居に夢中で金額を全く確認してなかったよ。足りなかったら恥ずかし過ぎる!
「少々お待ちを。・・・・・・・・・白金貨11枚、金貨51枚、銀貨12枚です。」
約1,151万円!確かに高額だ!でもドワーフへの支払いを温泉街の売上から出せるから、丸っとお金が余ってるんだよね。
私は偽装用の鞄から出すふりをして、収納から白金貨13枚を出して副支配人へ手渡す。
「!?あの、多いのですが・・・。」
「ついでにこの子達を連れ帰る為に、帆馬車を付けられない?」
「すぐに手配致します!」
私達をその場に残し、副支配人が走り去ってしまった。いやいや、お客を放置ってどうなのよ。
「なあ、俺らも買ってくれよ!何でもやるから!」
「あたいを買って損は無いよ!」
私が買わなかった奴隷達から、自薦の声が飛んで来るけどスルー。
私に買う気は欠けらも無い。残った奴らの犯罪歴は目も当てられない程酷いものだった。博愛主義では無いので、悪しからず。
副支配人を追って行こうとすると、片足のない強面の男性が声を掛けてきた。
「何故片足の無い俺を買った。あそこの病気の奴隷達もだ。一体何に使う気だ。」
思わず一歩下がってしまいそうな程の威圧感。カイがそっと私の前に立とうとするのをやんわり手で制する。ここで逃げてはいけない気がする。
「申し訳ないけど、今ここでは言えないの。でも決して悪いようにはしないから。少しだけ我慢して付いて来て。お願いします。」
頭を下げて頼むと、そこら中から息を飲む気配がする。
「奴隷に頭を下げるとは・・・。分かった。あんたを信じるよ。」
「ありがとう!」
何とか信頼を得る事が出来たみたい。さあ、後はとっととここを出るだけだね。
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