第117話 ダンジョン攻略組帰還
アマリア聖王国とツヴェルク王国に話を通した翌日、ローマンが慌ただしく護衛を連れてアマリア聖王国へと出発して行った。護衛はクレマン直属の部下達なので、安心して任せられるね。
久しぶりにゆっくり温泉街を見て回ると、私が頼んでいた建物がもうほぼ出来ていて驚いた。あと出来てないのは、男湯の仕上げとフェデリコが主に使う仕事場兼住居。
本当に1つの街を、カティアの森に作れたんだなぁ。まだまだ人手不足だったりと問題が山積みだけど、ほぼ身一つでお城を出た事を考えると感慨深いものがある。
「なんじゃこりゃーーー!!!」
「ここって、私達が居た拠点ですよね!?」
「間違えてどこかの街に来たのか!?」
MAPで確認するまでもなく、声の主はアンナ達。一緒に行った冒険者達も一様に口をポカンと開けて放心状態だ。
「お帰りー!5日ぶりだね!」
「桜がいる!って事はやっぱりここは拠点で間違いないのかい?」
「うんうん!合ってるよ!皆がダンジョンに籠ってる間に、温泉街もほとんど出来上がってきたんだよ。」
「5日で出来るもんじゃないだろこれ!」
「凄ーーーい!ワクワクするーーー!」
「後で街の中を見て回ろう!」
「おう!」
アンナや陽菜ちゃん、優斗に大河も大はしゃぎしている。
新しくなった温泉を見たら驚くだろうな~。これは是非とも堪能してもらわねば。
「アンナ、陽菜に耳寄り情報。女湯を改装したんだけど、すごく綺麗になったよ。もう全然別物。この後ゆっくり試してみて。」
「うわー!早く入りたいな!」
「楽しみ!!!」
過酷な5日間で疲れきった体を、ゆっくり癒してね。
「男湯は今改装中だけど、そろそろ出来てる頃だと思う。中にいるドルム達に聞いて、大丈夫だったら新しい男湯に入ってみて!」
「やったー!5日ぶりに温泉入れる!」
「ダンジョン攻略は楽しいけど、風呂に入れない事がキツかったな。」
「早く入ってさっぱりしたい。」
優斗や大河だけじゃなく、ガインとヒューゴも温泉気に入ってるのか。意外だな。
「冒険者の皆は、泊まるなら新しく出来た温泉宿になるけど良いかな?」
「「「「「はい!お願いします!」」」」」
全身泥だらけで、防具のあちこちに傷がある。顔も隈が出来ていて疲れきっている様子だけど、何だかデスマーチ前より覇気がある。・・・気がする。アンナのデスマーチは凄いな。
「桜様。冒険者の方々は、私共がご案内致しますね。」
いつの間にかリリー達が側に立っていた。やっぱり気配消すの上手だよね。
「ありがとう!よろしくね!」
温泉宿のプレオープンには丁度いい。3パーティーの冒険者で、温泉宿がどんな感じになるか試させてもらおう。
「あれ!?リリーさん!?」
「どうしてここに!?」
リリーと面識のある陽菜とヒューゴが驚いている。
そうだった。皆がダンジョンに行ったあとに、合流したんだった。
「話は温泉に入って体を休めた後にしよう。皆ゆっくりして来てね。
あっ!ヒューゴは温泉に入る前に話があるの。すぐだから、付いて来て。」
「わ、分かった。」
会うまでは彼らの事は内緒にしておこう。感動の再会になるかな。
これで明日からは警備をヒューゴに任せられるから、コタロウとリュウを警備から解放できるよ!嬉しいーーー!!!
彼らは今、鍛錬場で訓練している時間だったはず。鍛錬場へとヒューゴを案内すると、ヒューゴを見つけた元騎士達が泣きながら駆け寄ってきた。
「「「「「ヒューゴ隊長ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」」
「えっ!?何でここにお前らが」
「ヒューゴを慕って、ここまで自分達で来てくれたんだよ。というわけで、ヒューゴを警備隊隊長に任命します。明日から任せた!」
「いや、えっ!?どういう」
「じゃあそういう事で!よろしくね!」
「桜!!!おい!!!」
「「「「「ヒューゴ隊長!これからまたよろしくお願いします!」」」」」
「お、おう、よろしく・・・。」
うんうん。感動の再会だね!とりあえずヒューゴが我に返る前に、とっととトンズラしよう。
「桜様。」
「ヒッ!」
皆と分かれて何処と無く歩いていると、いつの間にかカイが横を歩いていた。
クレマンといい、リリーといい、カイといい・・・気配消されて近づかれると驚くからね!?私の心臓いつか止まるよ!?
「驚かせてしまいすみません。お探しの裁縫師が見つかりました。」
「本当!?どこにいるの!?」
「それが・・・。」
珍しくカイが言い淀んでる。そんなに言い難い事なのかな。
カイがフェデリコと一緒に話を聞いて欲しいと言うので、フェデリコの側まで転移する。
現在フェデリコは大熊亭の自室として使っている部屋で執務中。部屋中が書類らしき物で散らかっている。執務室が出来たら、もう少し仕事しやすくなるはず。
「桜様、突然来られると流石の私も驚きますよ。」
全く驚いた様子のない顔で、憎らしいほど平然と言うフェデリコ。
「カイに裁縫師を探してもらってたんだけど、見つかったらしいの。」
「それは良かったですね。」
「エール帝国内の服屋で働いている女性で、腕が良いと評判が高いのですが・・・。」
やっぱり歯切れが悪い。評判が良いなら良いんじゃないの?
「・・・なるほど。もしかして奴隷ですか?」
「はい。」
・・・奴隷?この世界は奴隷制度があるの!?衝撃で言葉が出ない。今まで見た事がなかったから、考えた事もなかった。私はまだまだ異世界を甘く見ていたらしい。
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