第116話 丸投げを丸投げ

 カフェオレ、珈琲、ココアの試飲が終わり、興奮醒めやらぬ様子のローマンとフェデリコ。いや、これもしかしてカフェインの効果?


「そろそろ各店舗で、お酒や回復の湯等を販売しようと思っているのですが、この珈琲やココアも販売してよろしいでしょうか?」

「もちろん!卸値はフェデリコと相談して決めてね。」

「はい!ありがとうございます!」

 ココアを入手出来るのがとても嬉しそう。孫娘が喜んでくれると良いね!


「その商品についてなのですが、名称が未だ曖昧だったり長かったりするので、ここでサクッと良い商品名を決めて頂けませんか?」

 そういえば確かにしっかり決めてはいなかったかも。でも何でも良いよ?


「何でもは良くないですからね?」

 私の考えを読んだのフェデリコ!?恐ろしい能力の持ち主だったんだ!

「顔に出すぎです。もう少しポーカーフェイスが出来るようになった方が良いですよ。」

「大丈夫!交渉事はフェデリコに任せるから!」

 フェデリコは深いため息をついているけど、そんな感じの約束をしたはず!多分。


「とりあえず名前を決めてしまいましょう。」

 ローマンに促され、商品名を考えてみる。

 シャンプーやボディーソープ、お酒やジュース等はそのままの名前でいいとして・・・。問題は傷湯や疲労回復の湯とか、日本にないものの名前だよね。


 ・傷を治す湯・・・傷湯

 ・疲労回復の湯・・・元気湯

 ・状態異常回復の湯・・・回湯

 ・魔力回復の湯・・・魔力湯

 ・美肌・美髪の湯・・・美人湯


「これでどうかな。」

 安直だけど仕方がない!私にネーミングセンスを期待してはいけないのだよ。


「分かりやすくて良いと思いますよ。これで行きましょう!」

 えっ?これで良いの?本当に?


「ではその様に!早速販売準備に取り掛かりますので、お先に失礼致します!」

 ローマンは意気揚揚と走り去って行った。きっと頭の中には大金が思い浮かんでいるに違いない。


 そういえばそろそろアマリア聖王国の商業ギルドとツヴェルク王国に、牛乳やウィスキーを持って行かなきゃ。

 いっそこの2国にも、ローマン商会作ってくれないかな。それなら在庫が切れることも無くなるのに。


 ・・・これ名案なのでは!?今はそれぞれ牛乳と赤白ワイン、ウィスキーしか売ってない。

 だけどローマン商会が出来れば今よりもっと色んな商品が手に入るし、両国にとっても損が無いのでは!?


「フェデリコ・・・提案があるんだけど。」

「聞きたくないです。」

 えっ!?聞きたくない!?衝撃的なお返事ですよ!?


「それでは私も仕事に戻るとします。カリオに任せて来たので、そろそろ私が恋しくて泣いている頃だと思いますので。」

「いやいやいや、逃がさないよ!クレマンお願い!」


 私が頼むのと同時に、クレマンによってフェデリコは無事に確保された。そんなに嫌がらなくても良いのに・・・。


「絶対面倒な話だって分かっているんですからね!」

「売り上げアップに繋がる話だよ!フェデリコにとっても悪い話じゃ無いでしょ?」

「聞きましょう。」

 ・・・・・本当潔いというか、現金というか。助かるんだけどね。


 アマリア聖王国とツヴェルク王国にローマン商会の支店を出してもらう提案をすると、フェデリコの目が輝き出した。

 これは売り上げアップだけじゃなく、ローマンに丸投げ出来ると思って喜んでるな。まあ、そこら辺は2人で話し合ってもらえばいっか。


「では私はこの話を今すぐにローマンにして来ます!」

「よろしく!私はツヴェルク王国とアマリア聖王国に、先に話を通しておくね。」

「お願いします!」

 フェデリコはとても嬉しそうに走って行った。ローマンに後で元気湯を差し入れておこう。




「という訳で、ローマン商会を誘致したいのですが、良いですか?」

「久しぶりに来たと思ったら、あんたはまた面白い話を持って来たねぇ。」

 イザヤさんが笑いながら、試飲として持って来た元気湯を飲んでいる。


「凄いね!これは力が湧いてくるよ!」

「だからって、無理はしないようにして下さいね?」

「私を年寄り扱いするんじゃないよ!」

 年齢的には・・・いや、この先を考えるのは止めておこう。


「まあ、うちとしても助かるし、悪い話じゃないね。今度ローマン商会の代表と会わせてもらえるかい?」

「もちろんです!また詳しい日時が決まったら連絡しますね!」

 よしよし!アマリア聖王国とは話がついた。次はツヴェルク王国だね。


「ところで桜。新しいレシピは」

「あ!次の予定の時間が迫って来てる!それじゃあイザヤさん、また来ますね!」

「ちょいと桜!」

 イザヤさんには申し訳ないけど、ここで捕まったら今日1日が潰れてしまう!慌てて商業ギルドを飛び出し、人気のない所でツヴェルク王国へ転移する。



「という訳で、ローマン商会を誘致したいのですが、如何でしょうか?」

「ふむ・・・・・。」

 ツヴェルク王国は元々、人を国の中に滅多に入れる事がない。そりゃすぐに賛成は出来ないよね。


「ちなみに取り扱い商品の中に、ウィスキー以外にも、日本酒やブランデーといった珍しいお酒も取り揃えて」

「よし!誘致に賛成しよう!いつにする?場所は城の隣でどうだ?」


 相変わらずお酒好きなガンドール王のおかげで、無事ツヴェルク王国にも誘致が出来そう。

 あまりにもチョロ・・・安易に信じすぎなのではと少し心配になる。


 まあ、とりあえずアマリア聖王国にもツヴェルク王国にも、ローマン商会の誘致は出来るように話しはついた!

 これで交渉役の私の役目は終わり!あとはフェデリコとローマンさんに任せてしまおう!

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