第114話 3人の男神

「なーなー、桜起きろよー。」

「がルルルルル。桜に触るな!」

「ヴゥゥゥゥ。部屋から出てけー!」

 目が覚めたら、何故かコタロウ・リュウと火の神イシュトスがまさに一触即発の状態だった。いつもみたいにもふもふに包まれながら、幸せな気持ちで起きたかったな・・・。


「おはよう。コタロウ、リュウ、守ってくれてありがとね。」

「当然だ!」

「撫で撫でしてー!」

 キリッと誇らしげに凛々しい顔をしたコタロウと、甘えん坊のリュウ。うちの子達は最強に可愛い!2匹を撫で撫でして、朝の癒しを補給する。はぁ~癒される。


「・・・で?イシュトスは何で私の部屋に居るのかな?」

「ん?頼みがあって来たんだが、中々桜が起きないから起こしに来たぞ!」

 そんなに胸を張って威張る様な内容じゃないからね!?今はまだ朝の5時だよ!?


「はぁ・・・。とりあえず支度するから、一旦部屋を出てくれる?」

「何故だ?」

「着替えるから、とっとと出てけぇぇぇ!」

 イシュトスの腕を引っ張り、投げ捨てるように部屋の外へと放り出す。久しぶりに会えたというのに、全くイシュトスには困ったものだね。


 支度を済ませ1階の食堂へ降りると、クレマンがイシュトスを紅茶でもてなしていた。

「クレマン朝早くからごめんね。起こしちゃった?」

「いえ、お気になさらず。いつもこの時間に起きておりますので、問題ございません。」

 毎朝こんなに早く起きてたんだ。知らなかった。


「それでこちらの方は、どなたなのでしょうか?」

「ん?俺か?俺は火の神イシュトス。桜の友だ!」

 イシュトスの名乗りを聞き、クレマンが固まってしまった。


「・・・・・桜様?」

 ギギギギと音がしそうな動きで私の方を向く。

「残念だけど本物だよ。」

「残念とはなんだ!残念とは!そんなに疑うなら、俺の魔法を見」

 バッシャァァァァァァーーーーーー!!!


 イシュトスの言葉を遮るように、大量の水がイシュトスの頭上へ降ってきた。いや落とされたが正しい。

「頭を冷やせ!この馬鹿!こんな森の中でお前が魔法を使ったらどうなるか、少しは考えろ!この脳筋!!」

 綺麗な顔を歪ませて怒っているティアニスが、いつの間にかイシュトスの横に立っていた。言葉遣いが前と違うような?


「ゴホンッ。桜さんご迷惑をおかけしてしまい、本当にすみませんでした。目を離した隙に逃げられてしまって。」

 逃げられたって所が気になるけど、とりあえずそこは敢えてスルーしとこう。


「ティアニス久しぶり!会えて嬉しいよ!」

「私もです。桜さんがいつも楽しそうにしている姿は見ていましたよ。」

 いつの間にか見守られていた。何だか照れるな。


「何しやがるティアニス!お前今日という今日は思い知らムグッ!ん"ん"ん"ん"ん"!!」

「黙れ。」

 今度はイシュトスの口や体に、暗い闇が巻き付いた。黒い芋虫みたいな惨状で、床に転がされている。


「ハレクトまで!久しぶりだね!」

「ああ・・・息災で何より。」

「ハレクト助かりました!そのまま拘束しておいて下さい!」

「了。」

 相変わらず口数が少ないけど、助けに入ってくれたりするあたり、やっぱりハレクトも優しい神様だね。


「朝から騒がせてごめんなさい。実は今日は桜にお願いがあって来ました。」

 ティアニスは紅茶を一口飲むと、フゥと息をついた。あれ?いつの間にか、ティアニスとハレクトの前に紅茶が置いてある。


 クレマンの姿を探すと、壁に同化しそうなくらい気配を消して佇んでいる。そっとしておこう。


「昨日女湯の改装を行ったとニーリルから聞きました。それで是非、男湯も改装して欲しいんです!出来れば美肌・美髪の湯や、シャンプー等も女湯同様に作って頂けたらと・・・。」

「頼む。」

 まさかのハレクトからも頼まれた。正直驚いたよ。


「桜さんは知らないのも当然なのですが、ハレクトは毎日温泉に浸かりに来ていましたよ。」

「えっ!?」

 思わずハレクトを見ると、少し照れたようにそっと視線を外される。意外な一面を知っちゃったよ。


「友達が温泉好きになってくれるって、凄く嬉しい!分かった!男湯も改装するよ!」

「ありがとうございます!」

「感謝する。」

「ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"!!!」

 ティアニスとハレクトからの感謝の言葉に被せるように、イシュトスが必死に何かを訴えている。何だろう?


「ああ、大丈夫です。桜さんは気にしないで良いですよ。」

「戯言だ。」

 2人がそう言うなら、まあいっか!

「ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"!!」




 それでは男湯の改装始めようかな!MAPで男湯の中に誰も居ない事は確認済み!決して覗いてはいません!


 あの後、工事をしても迷惑にならない時間になるまで時間を潰す為、私とクレマン、ティアニス、ハレクトの4人で朝食を取った。クレマンは必死に固辞してたけど、ティアニスの笑顔の圧に促され渋々席に着いていた。


 メニューはティアニスたっての希望でハンバーガー。ずっと気になっていたらしい。

 意外にもハレクトにも好評だったみたいで、2人してお代わり。作り手冥利に尽きるね!


 大きさは女湯ほど広くなくて良いとの事なので、女湯の3分の2程の大きさで良いかな?昨日女湯を作ったばりでイメージが残ってるからか、スムーズに作業が進む。


 まずは壁で囲む。もちろん脱衣所の壁も作る。それから温泉を4種類作り、シャンプー、ボディーソープ、ついでに美容液も作ったら完成( 仮 )!

 後は女湯同様に、ドワーフ達に仕上げを頼もう!


「こんな感じでどうかな?後は仕上げを頼むだけなんだけど。」

「うんうん!良いと思うよ!」

「素晴らしい。」

 2人からもOKが出たので、早速ドルムとボルグに頼みに行こう!



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